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山口市民のガソリン代が高い件について データアナリストへの道#22

デジテック for YAMAGUCHI 運営事務局 兼 Y-BASEスタッフのハラマルです。

一昨日は、レノファ山口の監督が交代するというショッキングなニュースがありました。個人的には、「何で今?」みたいな思いがありましたが、地元の山口新聞に、しっかりとした取材記事がありました。

サッカーJ2リーグは、1シーズンで42試合を実施するのですが、その42試合実施後の「勝ち点」で順位が決定します。昨シーズンの、ギリギリJ3降格を逃れたチーム(20位)の勝ち点が42でした。つまり、実施試合数=勝ち点が、J2に残留できるかどうかの分かれ目になっていました。例年も、同程度の勝ち点が分かれ目になっています。

おそらく、これに着目しているんだと思いますが、山口新聞の記事では「試合消化数=勝ち点」を一つのボーダーラインにしていて、ちょうど全試合の1/3(=14試合)を経過した前回の試合後時点で、勝ち点が14。これは危険水域に達しているとして、監督交代の判断がなされたとのことです。

こうやってデータで示されると、いろいろな感情を持っているサポーターも、ある程度納得ができるのではないでしょうか。「なんとなく」とか、「そろそろ」みたいな適当な判断基準ではないということに、安心感もありますし、後任が決まっていないことから想像すると、予め準備していたものではなく想定外の事態でやむを得ないものだった、ということだったのでしょうか。

今週末の13日土曜日に開催される「みらスタ」でのホーム戦は、何と、「麺祭り」!
こんなシリアスな状況は置いといて、みんなでスタジアムに行って盛り上がろう!というクラブからのメッセージだと受け止めています。初心者の方も、監督交代のことは一旦忘れて、まずは会場の雰囲気を楽しんでいただければと思います。

山口市民のガソリン代が高い?

さて、先日、どこでだったか忘れてしまいましたが、「ガソリン代が多い都市の全国1位が山口市」という記事を目にしました。
え?そんなことになっているの?と気になっていろいろ調べてみたところ、そのデータ元はこちらにあることが分かりました。

確かに、山口市がトップのようです!?

上記サイトからダウンロードしたデータ

こちらのデータは、家計調査の1世帯当たり品目別年間支出金額及び購入数量(2020年~2022年の平均)でランキングにしたもののようです。調査の対象は、二人以上の世帯で、都道府県の県庁所在地と政令指定都市ということだそうです。(なので、正確には52市の中でトップ)

へえ~っと思ったものの、3年平均?というのも気になりますし、その隣にある「バス代」や「タクシー代」なんかとも密接に関連しているでしょうし、電車代はないの?というのも気になります。

よし、自分で調べてみるかと思い立ち、このランキングのさらに元となった「家計調査」からデータを紐解いてみることにしました。

こちらに、今回のランキングの元になったデータの他にも、電車代などのデータもありましたので、10年分ほどダウンロードし、セル結合の解除、行頭の整理などしながらくっつけてみました。

2021年 都市階級・地方・都道府県庁所在市別1世帯当たり年間の品目別支出金額,購入数量(二人以上の世帯)

データをTableauに突っ込んで、まずは、この10年間のガソリン代の推移を見てみました。

2012年~2021年の家計調査から ガソリン代支出額
赤色:山口県、オレンジ:2位・3位の山形市・鳥取市

げ!ずっとトップランナーやん!
2020年には全国一斉に落ち込んでいますが、これはコロナ禍による外出控えの影響でしょうか?
いや、ガソリン代で見ると、地域によって値段に差があるから、その影響かも?ということで、次はガソリンの量を見てみました。

2012年~2021年の家計調査から ガソリン数量
赤色:山口県、オレンジ:2位・3位の山形市・鳥取市

ガソリン量も全国1位ですね。2021年はトップが新潟市になっています。ガソリン代の地域差はあまり関係がなかったようです。

次に、ガソリン代のグラフをマップにしてみましょう。

2012年~2021年の家計調査から ガソリン代支出額の合計

すると、おそらく皆さんの御想像されているとおり、都市部はガソリン代の支出が少ない傾向にあるようです。地方部、特に日本海側で多い傾向が認められます。山口市もこのグループに入っています。

都市部=公共交通機関、地方部=自家用車利用という構図であれば、自家用車の利用が多い山口市は、公共交通の支出額が少ないという関係になっているのでは?ということが想定されます。

交通費も高い?

なので、次は、都市ごとに、ガソリン代と交通費をグラフにしてみました。

2012年~2021年の家計調査から ガソリン代支出額の合計と交通費の合計

ここで言う「交通費」とは、データの中にあった鉄道代、バス代、タクシー代、航空運賃、その他です。
グラフでは、ガソリン代(青色)が多い順に並べていますので、山口市が一番上にあります。
グラフの下の方に行くほど、ガソリン代としての支出が減って、交通費(オレンジ)が多くなっていく傾向にあります。
この辺りは予想通りですが、一番下の大阪市はガソリン代も交通費も少ないですし、山口市もガソリン代が多い割に交通費が多めでは?という気がします。

なので、このグラフを少し変形してみます。
ガソリン代を横軸に、交通費を縦軸にして、支出額も10年合計ではなく各年でプロットしてみました。
グラフの左下に行くほど、家計の支出の中でガソリン代や交通費などの移動にお金を費やしていないということになります。
イメージとしては、コンパクトな街になっているとか、通勤・通学が近距離で済むような便利さがあるとか、徒歩・自転車の活用が進む環境にあるといったところでしょうか。

2012年~2021年の家計調査から ガソリン代支出額と交通費(年ごと)

こうしてみると、山口市はガソリン代が高く、交通費はそんなに高くはありませんが、それでも、同じ横ライン(交通費)には大阪市や広島市、北九州市なんかもあったりして、やっぱり「移動」にお金がかかっているとみることができそうです。
山口市の場合、公共交通機関の代わりに全て自家用車で済ませている、というわけでもなさそうです。

交通費の何が高い?

それでは、山口市の交通費って、何に使われているのでしょうか?内訳をグラフにして他都市と比較してみました。

2012年~2021年の家計調査から 交通費合計の内訳

内訳の中では「鉄道代」が最も多いようですが、順位は中位程度ですね。
バス代は全国の中でもかなり少ない方だということが分かりましたが、全体のボリュームに対する影響は少なそうです。

続いて、「鉄道代」の内訳を、同じようにグラフにしてみました。

2012年~2021年の家計調査から 鉄道代合計の内訳

右のグラフが「通学定期代」です。これは全国でも大きな差はないようです。生徒・学生は移動手段が限られるので、地方では同程度になるのでしょうか。

真ん中のグラフは「通勤定期代」です。東京都区部や、その周辺部では大きくなっている傾向があります。電車の利用頻度が高かったり、周辺部では通勤距離が長いといったことが影響してそうです。山口市は、こうした市に比べはかなり少ない方ですが、地方の中で目立った順位ではなさそうです。

そして、グラフの左側は、それ以外での鉄道利用ということなので、生活や買い物利用ということでしょうか。こちらも全国中位で、目立った特徴はなさそうです。

ほとんど自家用車で済ます
→交通費(電車代)は少ないはず
→それでも電車代が全国中位になっている
→それには何か理由があるはず?
と考えているのですが、どうでしょうか。

電車に乗ってどこへ行く?

それでは、通勤・通学を除く日常利用で、山口市民が、自家用車で移動することに加えて、多く電車を利用する場面って、どこでしょう?

う~ん、そう考えると、あまり思いつかないですね。
試しに、いくつかデータを見てみましたが、特徴的なものはないようです。

例えば、もしかして、外食で飲酒をする機会が多いので公共交通機関を利用することが多いのでは?という、私自身のレノファ観戦を想定してみました。

2012年~2021年の家計調査から 一般外食費合計の内訳

はい。違いますね(笑)。
右のグラフが、外食費の中の「飲酒代」になりますが、目立つ数字でもありませんし、左のグラフの食事代計(いわゆる外食)に比べると額も小さいですし、全国順位でも下位です。

それから、もしかして洋服などの買い物に電車を利用している場面が多いのでは?という仮説も思いつきましたが、この調査では、支出額しか分からないため、電車で買い物に行ったのかネットショッピングだったのか、区別がつきません。
それに、だったら自家用車で行くよなぁ、電車代が増えるかな?とも。

最初の認識が違う?

いろいろ考えているうちに、一つ、思いついたことが。
今、「山口市は、移動に全国で自家用車を一番使っていて、なおかつ、電車もそこそこ使っている。なんで電車も?」と考えていましたが、これが違っているのかもしれません。

山口市の電車代は全国中位でした。こっちが普通なのでは?
つまり、「山口市の支出額のうち、電車代は普通だけど、それに加えてガソリン代が異様に高い、その理由は?」を考えるべきなんではないでしょうか。

山口市のガソリン代が高いことについては、結構毎日どの時間帯も渋滞しているし、そうなんだろうなと自然に受け入れて、これだけ自家用車が多いなら公共交通機関の利用が少ないんだろうなと、勝手に想像していました。これが間違いだったようです。

さて、「電車(公共交通)は、地方で中位くらい利用されているけれど、山口市にはガソリンを多く消費している理由がある」と考えると、いくつか仮説が考えられますね。

例えば、通勤の距離が長い?という仮説も考えられます。(残念ながら、電車代・バス代のように、ガソリン代には通勤・通学の内訳がないため、データからでは判明しません。)
けれど、今回扱っているデータは、山口市民の家計調査です。近隣市町から山口市に遠距離通勤している人が多いとなると可能性はあるかもしれませんが、山口市民が特に遠距離に通勤している人が多いというような印象はありませんね。ちょっと違うような気もします。

そして、もしかして、というデータを見つけました。
それが、こちらです!

2012年~2021年の家計調査から 自動車購入台数合計

今回のデータに含まれていた「自動車購入台数」です!
山口市が全国で2位ではないですか!?
そして、1位の新潟市は、ガソリン消費量の直近で全国1位になっていましたよね。

これをガソリン代(○印)と重ねてみると…

2012年~2021年の家計調査から 自動車購入台数合計とガソリン代合計

やはり、購入台数が多いとガソリン代が多くなっている傾向があるようです。
ただし、中には、自動車購入台数が多いけれどガソリン代は少ないという市もあるようですね。

この自動車購入台数、仮に、既存自動車の買い替えなら、一般的には車の燃費は良くなる傾向にあるので、ガソリンの消費量・支出額は減少傾向になるような気がします。

山口市の場合はガソリン代が多いので、考えられるのは、1世帯で複数の自家用車を購入しているという状況ではないでしょうか?

自動車購入して、ガソリン代が多い市と少ない市の違いは、購入後の走行距離や、買い替えor追加購入の違いがあるのかもしれません。

まとめ

都道府県庁所在地+政令指定都市の中で、山口市のガソリン代の高さが全国1位という情報は事実でした。
その理由として、「公共交通機関を利用していないから」ではないと思います。なぜなら、電車利用料は全国中位でした。

結論として、1世帯が所有している自動車の数が多いからでは?という仮説にたどり着きました。

が、なんで1世帯がたくさんの自家用車を所有しているのか?は、まだ多角的に分析してみる必要があるかと思います。
例えば、子供が成人した時に車を買ってあげる文化が強い?とか、共働きで夫婦が別々に車を所有するケースが多い?とか、家族で共通の車の乗り合わせでは都合が悪い場合(生活の時間帯や通勤・通学の方向が違う)が多い?とか、もしかしたら自動車メーカーの営業が頑張っている?とか、高齢者が元気で車を別に所有している?とか、ドライブに適した道路が多い?とか、いろいろ考えられますが、このデータだけでは限界があります。

また、今回は、ランキングデータの大元が、家計調査のうち「2人以上の世帯」を対象にしたデータでした。なので、この10年分を集めて分析してみたのですが、単身世帯を含めると、違う傾向が出てくるのかもしれません。

また機会を見て分析してみたいと思います。