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第3回 基礎力から出来ることをまず1つ作って強みに昇華する

今回、キャリア論についての連載です。テーマは「時代とともに変化させる、2軸で考えるキャリア論」ですが、時系列に沿ってどんな軸を見つけて、そしてどんな軸を考えながら進めば良いのか進めて行きたいと思います。
前回は価値観の軸を作る話をしました。今回は2社目で気がついた「幅を広げるための軸のずらし方」についてです。

2社目の始まりは事件が起きそうな雑居ビルから

3年間の建築生活の後は、生活環境も一新しました。住まいも大阪から東京に移して、東京のベンチャー企業に務めました。

それまで専用のデスクも設計図を広げるために広々と使い、そこそこの規模の建築設計事務所だったのでセキュリティーもしっかりしたビルに入居してましたが、今度は渋谷の雑居ビルの1フロアです。
セコムなどのセキュリティーが入ってるわけでもなく、ただ普通の鍵。お手洗いも男女共用で1つという環境になりました。地下にはclubが入っていて、夕方以降のサウンドチェックの時間帯になるとエレベーターシャフトからは音が漏れてきて、お客さんが入ってくるとその振動からか少ーしビルが揺れ、入り口に若者がたむろするとアルバイトの女の子たちが怖がってビルから出れなくなる、そんな環境でした。
他のテナントで起きた過去の事件なのか、一回は警察の方がお見えになって警察手帳を見せてから経緯を話しだすという、ドラマの中でしか見たことがなかったのも経験しました(汗)。

ほんと小さい会社ならではのところから始まりました。

未経験に飛び込んでもどうにかなる、ただし基礎力だけはつけとこう

教育系ベンチャーに入社しましたが、ちょうどメインの事業から拡張させて、多角化を図るフェーズでした。
教育業界的には学習コンテンツを紙や対面指導、教室での指導から、映像授業やデジタル環境で学習できるようにしようという動きが始まったくらいの、まさに学習領域のデジタルシフト黎明期です。そこでの最初の業務は、当時有名だった勉強をテーマにしたマンガコンテンツのガラケー向けサイトの企画運営でした。当時はi-mode全盛期で、当時のモバイルサービス=ガラケーサイトと言っても過言ではない時代です。その中でもごく少数だった、docomo、au、vodafone(現softbank)の3キャリア公式サイトです。

某有名出版社よりマンガコンテンツの権利をお借りして学習の内容を我々で考えて、保守管理も別の会社に依頼して、3社(実際は4社)共同運営のサービスの責任者が2社目のキャリアのスタートです。

そのサービスでは、複数間企業での業務推進の難しさだけでなく、コンテンツ作成の方法やサブスクリプションサービスならではの事など、今につながることに携われました。

建築設計と共通項は?と言われると、業務カテゴリーにはほぼ無いと言えるでしょう。ただ、共通項はあります。
それは業務推進の基礎的な部分です。
例えば、マーケターと言われる人(自称含む)で、自分でKPI管理のためのシートやツールを組める人ってどれだけいるでしょう?
案外聞いてみると作れない(設計できない)人も多かったりします。エクセル(今だとgoogle spreadsheetも)がある程度詳しければ、ここもどうにかなります。そもそも大学時代の研究で備わってる方もいらっしゃると思います。
また、建築設計は長期間に渡るプロジェクトマネジメントが必須です。この要素も業務をすすめる上では必須要素です。
なので、業界や経験ベースでの転職は、転職先での成果を出すには確かに成功確率は高まりますが、決してそんなことはなく、基礎的な部分が押さえられてればどうにかなります。
言い換えると、社会人としての基礎力だけきっちりつけておけば、どうにかなります。それくらい基礎力は重要だと思います。

1つ強みが出来たら、横転できる近い領域を探してさらに実績のレイヤーを厚くする

そのガラケーサイトも順調に成長し、瞬間でしたがキャリアのカテゴリーランキング1位をとったりしたものの、マンガが終わってしまうとどんどんと衰退していきます。そうなると、事業継続が難しくなります。その事業が終わる前に新しい事業を作らないといけません。そこで一旦やれることと強みを整理して、それまでのデジタルでの学習コンテンツ作成のノウハウやコンテンツ自体のデバッグのノウハウを横転できるマーケットを探しました。
すると、学習の領域がゲーム領域に広がってるところに気が付きます。そこで目をつけたのが当時全盛期のNintendo DSです。

Nintendo DSのサードパーティーでしたが1社ご紹介いただきソフトのコンテンツ作成を受注して、1万問くらいの問題と回答を作成し納品します。この際にいろいろトラブルもありましたが無事納品することができると、一旦強み弱み、マーケットが求めているものを整理して、サービスを再度ブラッシュアップして営業です。一人で営業のアポ取りから営業、クロージングまで行い、そこからチラホラと案件が舞い込んできました。今度はデバッグの受託です。
この時に、ノウハウや強みをそのまま違うサービスに転用することを覚えます。とはいえ全く畑違いの領域だとなかなか受け入れられづらいので、半身くらいずらした領域や、同じ領域だけど強みとプレイヤーが少なそうなところを狙うとサービスを展開できるのです。

デジタルとアナログを、デジタルサイドからアプローチする

そしてその後は、書籍にチャレンジすることになります。書籍というと、一人の著者が書くというのを皆さん想起すると思いますが、その書籍はそうではありませんでした。大量の方に寄稿いただき、それをまとめ上げるという内容です。これまでのサービスと全然違うとお思いでしょうが、実はそうではありません。「大量の方に寄稿していただく」のも「大量のコンテンツを作成する」のも工程的には同じなのです。
結果、今で言うキュレーションサイトのような、一人の方の意見ではなく、こんな意見もあればあんな意見もある、どれかは自分に当てはまるかも知れない、そう読者に思ってもらえるような書籍が出来上がりました。

その時期は勝間和代さんに代表される勉強本ブームの時期でタイミングもよく、シリーズ累計30万部近く売れ今でもまだ売られています。

ここでの気付きは、1つ強みが出来たら、それを横転できるところを探していくと、やれることの幅が少しずつ増えていくことです。
ガラケーのノウハウがNintendo DSにも転用出来て、そこから書籍作成にも広がったのです。強みの芯が太くなりつつ、守備範囲が少しずつ広げることができるのです。
個人的にはwebのやり方だけではなく、紙メディアのやり方も覚え、webか紙かではなく、「メディア」を両方押さえていいところ悪いところ両方押さえられました。

強みと成果を整理して、再現性を持てるようにする

なぜその本が売れたのか?ですが、上でも書いた勉強本ブームにのり、社会人向けではなかったもののビジネスカテゴリーで作りました。出版社の方々の努力と各書店のバイヤーさんのご厚意により、ブーム真っ只中だったので勉強本が各書店の店頭の平積みになっていて、そこに多くの書店で置いて頂けました。勢いが良いときは毎週、そうでなくても毎月のように重版の連絡が届きます。
その後、シリーズで出した書籍で平積みにならなかった本は鳴かず飛ばずで、結果ABテストを実施したような形にはなりましたが、PESTから4Pまでの一連の流れを売れた本売れなかった本で比べてみると、はっきりとした違いがありました。
結果からの逆算ではありますが、きちんと世の中の状況を読みつつ差別化を図り、売る場所まできっちり考えて展開すると売れるというのをここで理解しました。

やれることの軸を作って、少しずつ太くしよう

前回は、自己価値観の軸のお話をしましたが、今回はやれることの軸のお話でした。社会人基礎力をつけた後、1つでいいので成功事例を作った際に、そこから突拍子もなく違うことをするのではなく、同じ領域でちょっと違うこと、近い領域で似たようなことをやっていくと、いつの間にかやれることの軸が太くできるのです。
私の場合は狙ってやったわけではなく、結果としてそのような形になりました。
また、やったことやうまくいったことをトレースし直して整理してみることもおすすめします。なぜうまく行ったのかがわかると思います。

次回は社内でのジョブチェンジに近いことから学んだことをお話しますね。

★この著者の記事
 第1回 時代とともに変化させる、2軸で考えるキャリア論
 第2回 自分の中で大切な価値観は早めに気づこう
 第4回 一旦はキャリアを捨てて新しいことにチャレンジすべき
 第5回 想定外の事が起きる可能性に備えておく
 第6回 名刺となる事例を作る。
 第7回 領域を広げて畳んでを繰り返し、希少価値ある人材へ
 デジタルシフトの時代に必要な「編集力」をつけるために

北野 博俊(Hirotoshi Kitano)
建築構造設計から教育系人材、不動産ベンチャーを経て株式会社ベーシックにてマーケティング部立ち上げを経験。現在、株式会社RRデジタルメディア執行役員、また、傘下の株式会社fluxusにて執行役員、株式会社sotokoto onlineにて取締役及びオンラインディレクター、グループ全体のデジタルシフト、新規事業推進を担当。
◆twitter: https://twitter.com/hirotoshikitano
◆note: https://note.com/kitano_h

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