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第5回 想定外の事が起きる可能性に備えておく

今回、キャリア論についての連載です。テーマは「時代とともに変化させる、2軸で考えるキャリア論」ですが、時系列に沿ってどんな軸を見つけて、そしてどんな軸を考えながら進めば良いのか進めて行きたいと思います。

前回は社内ジョブチェンジで気がついたことについてお話しました。今回は、軸の話からちょっとずれて、出来ることなら起きてほしくないインシデントにどう構えておくかについてお話します。

ある日、気がついたらベッドの上で目が覚める

2013年12月のある日、気がついたらベッドの上にいた。それは自宅でもなく誰かの家でもなく、病院のベッドだった。ベッドと言っても一般病棟のシンプルなベッドではなくて、上半身を起こし下半身を下げられる、椅子のようなベッド。目が覚めると目の前には数名の方がいて、すぐに「動かないで!」と言われて動きを静止させられる。目の前の風景は当然いつもの自宅や見慣れた風景ではなく、どこですかここは?と状況を飲み込めない。

そこから目の前の人が私に淡々と説明をし始める。数時間前の深夜に、自転車で事故を起こし、救急車で搬送されきて、今いるのはEICU(救急集中治療室;Emergency Intensive Care Unit)にいた。そう、目の前の人は数名の医者と看護師と妻でした。

說明を受けつつ身体のチェックが始まる。腕は上がるのか、手の指先は動くのか、足は動くのか。結果として、片方の腕は上がらず指も動かず、片方の腕はかろうじて動くが指先はかすかに動くくらいでした。

その状況について医者が淡々と説明してくれる。

「あなたは深夜1時過ぎに都内の◯◯で自転車事故を起こしました。自損事故で相手は誰もいません。自転車で壁に顔面から突っ込んで、首を損傷しています。レントゲン、CT、MRIの結果から、一時的に腕や手は動かないけど、リハビリで動くはずなので数日我慢して下さい。ただ、多少は後遺症残るかもしれません。起こしてしまったものは仕方ないので付き合っていくしかありません。」

そこで状況をすべて把握できました。今いるのは救急対応が出来る病院のEICUで、自損事故で首(頚椎)を損傷し動ける状態にないということを。

仕事を止めないために

その場にいた妻にお願いし、仕事場やその日の夜や数日後まで入ってたプライベートのアポ全部に朝イチで連絡を入れてもらいました。その日は意識が朦朧とする中、重要な連絡事のみ対応して、寝たり起きたりを繰り返した。EICUなので基本は面会NG、どうしても会わないといけない方のみ先生に説明してOKをもらい対応し、なんとか仕事への影響は最小限に食い止めた(はず)。
仕事は事故を起こしたことへのインパクトは多少あったものの、普段から権限移譲とマニュアル化は出来ていたので、チーム業務は滞りなくすすめることが出来ていました。チームメンバーには今でも感謝しています。

最悪の状況を受け入れる

病院に搬送されて2日目は意識もしっかりしているので、いろいろ考えがよぎった。医者はじきに動き出すと言うが、腕や指は事実として一向に動かない。そうなるとどうしても考えてしまう。

「このままだったら俺の人生これからどうなるんだ?」

腕や指は動かないが足の指は動くし、思考はしっかりしている。

「じゃあ、この状態で出来ることってなんだ?」

じきにそんな事を考え出しました。

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入院3日目の朝に、ようやく指がピクッと動き出し、先生が「これで大丈夫。あとはリハビリ頑張れば回復できるところまで回復できるよ」とおっしゃられ、これでなんとか現場に戻れるかも、とちょっとした希望の光が見えました。

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入院中にこれからのことを考える

入院は合計11日でした。EICUだとデジタル機器は持ち込めませんでしたが、一般病棟だと持ち込みOKなので、ラップトップとスマホは持ち込み、やれる範囲で仕事への復帰を図るべく仕事へのリハビリと自身の身体のリハビリを行いました。EICUは3日間でほぼ寝たきりなので、4日目からの一般病棟では身動きがほぼ取れませんでした。数日寝たきり状態だと立てなくなるとは聞いてましたが、ホントなんだとそこで体験しました。

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徐々に身体も動き出すものの、体中で事故前と違う箇所があり、本当に元の状態に戻るのかという恐怖感の中、少しでも戻せるようにとリハビリを続けました。

仕事自体はチームメンバーがこういうときくらいはしっかり休んでくれとのことで全部拾ってくれましたが、入院最終日にちょっとしたトラブル対応だけしました。トラブル対応と言ってもホント些細なことですが。簡単なことだったのですが仕組み化とマニュアル化の漏れが起因したことでした。

アクシデントは誰にでも起きる。普段から対応を。

11日の入院を経て退院しました。翌日から半日出勤とさせてもらい出勤しました。リハビリはそこから3ヶ月は通ったと思います。体力はかなり落ちているので、持久力がほぼない状態です。チームは滞りなく動いているものの、個人単位では動けない状態が数ヶ月に渡りありました。

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このときの学びは、いつでも誰かに業務を渡せるように、仕組み化とマニュアル化、一人完結の仕事もエビデンスとテキストだけは残しておくべきということです。チームだと仕組み化やマニュアル化はよく言われるのですが、個人完結だと忘れがちになるところです。

私は事故による怪我でしたが、病気やその他突発的なアクシデントは誰にでも起きる可能性があります。自分はそんな状態にならないと思っているでしょう、でも、実際はいつ起きてもおかしくないのです。その急なトラブルにも対応出来ているようにしていると、次のステップにも移りやすいかと思います。

普段、キャリアの話というといかにキャリアをあげて行くかというお話が大多数です。
自身が思い描くキャリアを歩むためには、あまり語られることがない健康の維持やアクシデントについて普段の備えも、キャリアを上げるためのスキルや成果以上に大切ですし、私はその起きてほしくないことを経験したので、今回はあえて触れてみました。

ぜひそんなことが起きないように、普段から気をつけた生活を心がけましょう!
※こんなことがあると大抵のことは開き直れるというのはありますが、それは割愛で笑。

★この著者の記事
 第1回 時代とともに変化させる、2軸で考えるキャリア論
 第2回 自分の中で大切な価値観は早めに気づこう
 第3回 基礎力から出来ることをまず1つ作って強みに昇華する
 第4回 一旦はキャリアを捨てて新しいことにチャレンジすべき
 第6回 名刺となる事例を作る
 第7回 領域を広げて畳んでを繰り返し、希少価値ある人材へ
 デジタルシフトの時代に必要な「編集力」をつけるために

北野 博俊(Hirotoshi Kitano)
建築構造設計から教育系人材、不動産ベンチャーを経て株式会社ベーシックにてマーケティング部立ち上げを経験。現在、株式会社RRデジタルメディア執行役員、また、傘下の株式会社fluxusにて執行役員、株式会社sotokoto onlineにて取締役及びオンラインディレクター、グループ全体のデジタルシフト、新規事業推進を担当。
◆twitter: https://twitter.com/hirotoshikitano
◆note: https://note.com/kitano_h

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