【未来予測】10年後の広告業界はどう変わる?未来で生き残る広告運用者、3つのポイント
10年後「広告代理店」であるつもりはない
—— 今日は「10年後の広告業界」をテーマに、取締役の鹿熊さんと若手メンバー2名を招いて未来予測をすると聞いています。そもそも、この場を設けた理由は……?
鹿熊:DIGITALIFTが上場してから、早いもので、もう1年近くが経とうとしています。これまで以上に、広告業界の未来について真剣に考えていくべきタイミングだと思って、若手メンバーの声も聞きたくてこの場を設けました。
言い出しっぺの僕から議論を始めたいのですが、そもそも日本は人口減少に歯止めがかからず、経済規模が縮小していく未来が見えています。そうした予測のうえで、DIGITALIFTはどうなっていかなければいけないと思いますか?
田中:10年後に“致命的な市場崩壊”が起きているとは思いませんが、広告産業が急成長するということはなく、海外と比較して中途半端な市場になっているような気がします。そうなると、企業の吸収合併が活発になると思うんです。
鹿熊:たしかにね。個人事業主を含めれば、広告代理店は山のようにある。大が小を兼ねる形で組織編成が進むだろうし、DIGITALIFTは少なくとも、吸収していく側でいないといけないと。
田中:そのとき勝敗を分ける分水嶺は、コンサルティングになると思っています。
運用そのものを提供できる業者は多いので、それ以上の付加価値を出せるかどうかが大事で、その一つは間違いなく「コンサルティング」にあるなと。目先の広告効果だけでなく、中長期的な拡大戦略を考えられる広告代理店(プレイヤー)こそが、今後求められていくと僕は考えています。
寺地:言葉にするとありきたりですが、スピードも重要だと思います。組織が大きくなると、縦割りの業務になってスピードが鈍るものですが、そうなると差別化がしにくくなる。DIGITALIFTが成長している背景には、間違いなくスピードがあるので、その強みはなくしてはいけないと思います。
鹿熊:そういう意味で、企業を吸収して事業規模を拡大しても、組織の肥大化を遠ざけることは大切かもしれないですね。
僕のイメージだと、500人を超える組織は動きが重く、スピードで勝つことができなくなります。そうであれば、同じ屋号で複数の事業体が存在する組織を構成するのがいいような気がします。
技術力があるのは大前提で、それでいてスピードを失わない組織を構成できれば、群雄割拠の業界を勝ち抜くチャンスがあるなと。
—— コンサルティング、スピード、技術。これらの三位一体で戦えば、強豪との勝負に負けることはないと。
鹿熊:よく外部向け発信でも言っているのですが、僕らは「運用」という技術力が高いんです。そのうえで、スピードを維持しながら、コンサルティングを含めた質の高いソリューションを提供できるので、上場という一つの目標を達成することができています。
これをさらに強化していくと、広告代理店というよりは、昨今成長しているコンサルティングファームのようになっていくんですよね。戦略から運用までをトータルでサポートすることになるので、ソリューションばかりに目がいって、自分たちを「広告代理店」と認識しないことも重要だと思います。
メタバースの普及は広告の在り方を変えるのか
—— Webの世界では次々に技術革新が起こっています。暫時的な技術力強化ではなく、抜本的な改革が必要になる可能性も……。
鹿熊:よく言われる話でいえば、メタバースと広告の関係性は話題に上がるなと思います。
田中:僕はメタバースが普及すると思っている派です。YouTubeでゲーム実況をする人が増えているように、ネット上に生息する人口が増えています。そこに広告を貼り付ける文化が生まれたら、仮想空間で広告運用する未来も現実的です。
鹿熊:ただ、Metaが手掛けるようなメタバースが普及するには、まだデバイス側が十分に追いついていないなとも思います。さすがにギアが重すぎて、少なくとも直近の未来では、誰もが日常使いするほど普及しないだろうなと。
寺地:高齢化が進む日本では、時間の経過に合わせて平均年齢も上がっていきます。人口の半分以上が高齢者になっている未来で、メタバースが普及するかといわれたら結構微妙な気がするんですよね。
鹿熊:でも、スマートフォンを使いこなす高齢者が一定数いることを考えると、高齢化がメタバースの普及を妨げるとは思わないんだよね。ただ、スマートフォンが普及したのは持ち運べるからであって、メタバース関連のギアは、それほどまでの技術にはなっていないのが問題で。
あと、むしろ高齢者とメタバースは非常に相性がいいと思います。身体が不自由で外出が難しくても、家の中にいながらいろいろな活動ができるなら、問題なく利用率は上がるだろうなって。認知症対策や、介護、旅行領域など拡張の幅も広いと思います。
寺地:任天堂の『脳を鍛える大人のDSトレーニング』みたいに人気が出てきたり、家にいながらコミュニティを形成できたり、現在とは異なる文脈で需要が出てくる可能性もあるってことですね。
鹿熊:そうそう、高齢化社会を仮想空間が救ってくれる可能性は十分にあるなと。
田中:仮にそういった世界が来たら、広告の在り方は変わりますよね。例えば美容業界だったら化粧品や服が商材でしたけど、仮想空間ではアバターに対して商材を提供することになるじゃないですか。
鹿熊:でも、売るものが変わっているのであって、やることは今とあまり変わらなくない?
例えばメタバースが普及したとして、仮想世界に入り込むためには何らかのデバイスが必要になるじゃん。PlayStationに広告が入り込まないように、デバイスそれ自体に広告が付くことはないと思っていて、あくまでその中のゲームやSNSに広告が入り込むと思うんだよね。
それって、結局は現実世界やスマホと構造は同じ。だから、広告の在り方が変化するかといえば、そうはならないんじゃないかな。
変化する未来で生き残るには?
—— 結論として、10年後も広告の在り方はそれほど変わらない……?
鹿熊:10年後を正確に予測することができないのでなんともいえませんが、目に見えて起きている変化だと、それほど大きく変化しない可能性もあると思います。
ただ、Web3の世界では、少し変化が起きそうな予兆もあります。
Web3をどう定義するかですが、僕の解釈でいえば、分散型テクノロジーを活用して、再びコンテンツの非中央集権を目指す動きが「Web3」です。
この文脈の中で成長しているサービスに「Brave」という検索エンジンがあります。基本的に広告はブロックされていて、ユーザーに利益を還元できる場合であれば広告を掲載できるという、Web2.0とはモデルが180度異なるサービスです。
今までは「いかにクリックしてもらうか」が勝負でしたが、BraveがGoogleをリプレイスすれば、今度は「クリックしてもらうとインセンティブがある状態で、それをいかに魅力的に見せるか」が勝負になります。
簡単にいえば、広告が、街中で配っている「Red Bull」のサンプリング状態になるってことです。「タダでもらえる」という、たしかなメリットがある状態で、いかに確実にインセンティブを配れるか。広告運用者として使う筋肉が変わります。
寺地:これまでの広告は、興味喚起をしてクリックを誘い、その興味を維持したままコンバージョンまで届けることを目的としていました。
ただ、広告クリックのハードルが下がると、「どういう心理状態でクリックしてもらうか」「ページに遷移したときにポジティブなギャップをつくれるか」が重要になるはずです。広告そのものが重要なのはもちろん、遷移先のLPの重要度がより大きくなります。
YouTubeをイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。サムネイルが魅力的でクリックしたものの、動画本編の内容が微妙だったら、すぐに離脱してしまいますよね。
ただ、本編も魅力的だったら、チャンネル登録をしてもらえる可能性が高まります。広告で配信するというより「LPを先出しする」とでも言いましょうか。
鹿熊:まったくその通りで、「入り口」を頑張るのではなく、「入った後の工程」で頑張るという勝負になると思います。
田中:サンプリングの例がありましたけど、まずは商品を体験してもらう流れになると思っていて。そうなると、質の低い商品は、どれだけ広告を頑張ったところで、手に取ってもらえなくなります。本当に優れたサービスだけが残っていくはずです。
鹿熊:たしかに「無料トライアル」が当たり前になるかもね。
つまるところ、広告運用者の仕事は変わらないんだと思います。僕らの仕事は、広告を運用することではなく、「考えること」です。
ユーザーが買いたいものを考えて、それを確実に買ってもらう方法を考える。そういう意味では、変化していく未来の仕事も、現在の延長線上にあるといえます。
Web3が浸透するのか、メタバースで暮らす未来になるのか……といった議論は、極論どちらになってもよくて。仕事の本質は変わらないので、むしろ次に来る変化を確実に捉えることが重要だと思います。
FacebookやInstagramが成長する未来を確実に捉え、それらの広告に強くなっていた会社は、今では広告業界をリードする存在になっていますよね。未来を予測する精度が高ければ、ゲームチェンジに勝てるわけです。
広告業界に限った話ではありませんが、不確実な未来を予測しながら、変化に対してスピーディーに順応し、それでいて仕事の本質を見失わない。これができれば、プレイヤーとしても生き残っていけるはず。
もちろん、それを実践できる場所に身を置くことが重要なのはいうまでもありません。
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