「パルスマーケティング」についての考察−2
オリジナルの三つ目の記事では,スマホをいじりながら衝動的に購買を行う行動を「パルス型消費」と位置づけ,旧来から一般的に考えられてきたある程度時間をかけて買いたい気持ちを醸成させる消費の方法を「ジャーニー型消費行動」と名付けつつ対比させている。
さらに,パルス型消費を促す要素としては以下の6つを挙げている。
1. セーフティ:「より安心安全なもの」に反応する直感センサー
2. フォーミー:「より自分にぴったりだと思うもの」に反応する直感センサー
3. コストセーブ:「お得なもの」に反応する直感センサー
4. フォロー:「売れているもの」や、「第三者が推奨するもの」に反応する直感センサー
5. アドベンチャー:「知らなかったもの」や「興味をそそるもの」に反応する直感センサー
6.パワーセーブ: 「買い物の労力を減らせること」に反応する直感センサー
これらの要素は,野村総研のリリースなどをみても,消費者像の変化としても同様の傾向があると思われる。同リリースでは,いわゆる利便性消費,やすさ納得消費,プレミアム消費,徹底検索消費という軸で消費者の傾向と見た場合,利便性(やすさより利便性)やプレミアム性(自分が気に入ったものに対しては付加価値を払う)を求める消費者が増えており,一方,安ければ良い,徹底的に検索して情報を集めるという傾向は減ってきている。
◾️4つの消費スタイル」分布の推移
(出所:野村総研リリースhttps://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2018/cc/1106_1)
両方の考察を合わせてみると,自分自身が納得いく価値を求めているものの深く検索をしながら情報を集めまくるわけではない,また,安ければ良いというわけでもはないが,便利に手軽に消費を行いたいという傾向は十分に見られると言っていいだろう。
したがって,上記で考察されている6つの情報センサーは「パルス型消費だから」というよりも,まずは現在の消費者を捉えていこうという場合に,キーワードとして意識をしておくべき要素であると言える。
◾️6つのセンサーと高反応要因
この表も改めて眺めてみると興味深い。
フォロー(「売れているもの」や、「第三者が推奨するもの」に反応)に対してのセンサーは,「情報接触による想定外の購入」「テレビCMしていない商品よりもしている商品を買いたい」という,いわば「事前の大量な情報接触」に大きく左右されるのである。さらには,アドベンチャー(「知らなかったもの」や「興味をそそるもの」に反応)も同様の傾向を示している。
このことは,現代の消費者が,安全なもの,自分にとって価値のあるもの,コスト的に見合うと感じるものを通常は求めていながらも,TVCMなどによる大量の情報接触に大きく左右されてしまうということが言える。つまり,移り気,わがまま,気まぐれな消費者像というのが改めて浮き上がってきていると言えるだろう。
それは,
目新しいものを探している、少しだけ冒険したい、といった「アドベンチャー」の直感センサーを刺激できれば、たとえ継続購入の多い商品カテゴリーであっても、ブランドスイッチを引き起こすことが容易になると考えられます。
という考察にも現れてきている。
ただし,それがパルス型,いわゆる購入時や暇つぶしのスマホいじりの時に特化してマーケティングアプローチをすべきかどうかについてはまだわからない。先に自身で考察をした記事においても,
・事前に知っているブランドの方が購入に至りやすい。
・何を買うのかを決めていなくても,常に探している状態にある場合,気に入ったものがあれば購入に至る。
・暇つぶし時の偶然では,まだまだ購入には至りにくい。
としたように,もう少し検討の余地があるだろう。
もしかしたら,消費行動において,モチベーションの発生から購入決済の時間は短くなってきてはいるが,対象とするマーケティング施策については旧来どおりのジャーニー型を考えておいたほうがきちんとしたアプローチができる,ということが言えるかもしれない。
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