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広告は,人の選択肢を増やすのか?

久しぶりの就活シリーズ。

「消費者の選択肢を増やしたい」

広告会社で採用面接をしていると「私は就活の軸として“人の選択肢を増やしたい”と考えています。そこで,必要な情報を必要な人に届けることができるデジタルマーケティングやインターネット広告に興味を持ちました」と話をしてくれる人も多い。

一見,なかなか社会的意義のあるような答え方で,きちんと広告というビジネスの本質を捉えているかのように思える考え方ではある。

そこで,以下のように問いかけたところ,こんな回答をしてくれた時があった。

「なるほど。でも、企業からみたら消費者にはあまり他社製品と比較せずに常に自社商品を気に入って買ってもらいたいと思いませんか?
要は選択肢を広げるのではなく,自社一択にしたいのではないかなと」

「はい。そうかもしれませんが,私は消費者の立場に常に立ちたいんです」

広告の役割の一つは他社との差別化

候補者の気持ちはとてもわかるのだが,それは実は広告会社の役割ではない。広告会社がどの立ち位置に立って仕事をしているのかいえば,現在は広告主のパートナーとしての役割を担うことがほとんどである。一方,広告主は,様々な自社の情報を消費者に提供をしているが,その目的の一つは広告主の商品サービスを競合他社と差別化することである。なんのために差別化をするのかといえば,それは消費者に他社の商品やサービスよりも自社のサービスを選んでもらうためであり,それゆえ自社商品の特徴や優位性をしめしているのだ。つまり,広告主にとってのゴールは,消費者に選んでもらうことであって,選択の俎上に乗ることではない。もちろん,市場に対して新規参入する場合には,まずは選択の俎上に乗る必要はあるが,究極的には競合他社を全て蹴落として,自社商品だけが選ばれるマーケットを作り上げていくことができればそれに越したことはない。

「消費者の立場」という言葉がうむ誤解

この候補者の場合,「消費者にとっての選択肢を増やし,増やした後は,消費者の好きにすれば良いのである。そうやって選択肢が増えることが,消費者にとっての豊かな生活なのである」と考えているのであれば,それは広告会社ではなく,公的機関や「DIME」「暮らしの手帖」などの媒体社の方をお勧めしたい。

しかし,広告業界を目指すのであれば,もう一歩踏み込まなくてはならず,そのたくさんの選択肢の中から,自分がパートナーを務める広告主の商品を選んでもらうためにはどうすれば良いのかを考える必要があるのだ。

広告は,たくさんある選択肢からどう選んでもらうかを考えるのが役割

「消費者のためになる」「消費者の立場に立つ」といった社会的意義から広告業界に興味を持つことは,きっかけとしてはとても素晴らしいことではあるが,ビジネスとして携わる事を考えた場合,その業界の仕組みとか企業の役割とかを考えてほしい。



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