2019年2月20日、はてな匿名ダイアリーにて『強い女メーカー』の作者から訴えられた(内容を読む限りは従わない場合に法的措置を検討)という記事が公開された。
その後ブログ主は「はてな匿名ダイアリーの記事が削除された」として、オリジナルのブログで同じ内容の記事を公開した。
サービスの紹介記事に対して掲載中止要請もなくいきなり弁護士を通じて損害賠償を請求したという点から、金銭を得ることを目的に著作権侵害で訴訟を起こすコピーライト・トロールではないかと作者が批判され炎上した。
一方でブログ主にも「アフィリエイトブログが著作権を侵害しているのだから当然」と批判が集まった。
損害賠償の請求文書
ブログ主が公開した請求文書は以下のとおり。
ブログでサービスを紹介する記事は商用利用か?
炎上している原因は、ブログでサービスを紹介する記事が商用利用と判断され損害賠償を請求されている点だ。
はたして「ブログでサービスを紹介する」行為は商用利用なのだろうか?
商用利用とはその製品を利用してお金を儲けることを指す。ブログに広告を掲載している場合、その製品を紹介することでお金を儲けていると言えなくもない 。しかしこれが「その製品で直接お金を儲けていること」かとなると微妙だ。素人からは判断がつかない。
また、「ブログでサービスを紹介する」ということはその製品を宣伝するものでもあり、一般的には広く歓迎されている行為だろう。実際、サービスの紹介をしている商業サイトも多く、これを著作権侵害の対象とした場合、 多くのWebサービスに問題が波及するものと思われる。
損害賠償50万円の根拠はあるか?
今回の請求では、損害賠償の請求額を50万円としている。だが、この金額の根拠がないことも批判されている。
過去にTwitterに投稿したイラストをブログに無断で転載された判例では、30万円という判決が出ている。
この30万円という金額は原告が過去に出版社や広告会社から得たイラスト原稿料をもとに算出されており、これをもって『強い女メーカー』作者の損害が50万円であるという根拠にはならない。
『強い女メーカー』作者は、イラストコミッションプラットフォーム『Skeb(スケブ)』にて1万円でイラスト制作を受け付けている。
けれども現在引き受けている仕事は一件のみであり、それ以前の納入実績はないようだ。そのため算出される金額は上記の判例よりも低くなるのではないかと思われる。
アフィリエイト収入の少なさは関係がない
この50万円という金額に対して、ブログ主は自身のアフィリエイト収入の少なさ(毎月数百円程度)を理由に妥当ではないと主張している。しかし、ブログ主の収入の少なさと損害賠償の請求額には関係性がない。
例えば10万円の商品を盗んで1万円で販売したからといって、盗まれた方の被害が1万円ということにはならない。あくまでどれだけ損害を負わせたかによる。
なお、今回の炎上後、『強い女メーカー』の商用利用による請求額は100万円と書かれていることを確認できている。
『強い女メーカー』作者による著作権侵害事例
今回の炎上事件では著作権を侵害したことや、サービスの商用利用によって損害賠償が求められているものの、原告の『強い女メーカー』作者も自身のTwitterアカウントで著作権侵害を多数行っていることが確認された。
損害賠償を請求されているブログ主が、これを訴えている。このため外野から「作者も著作権を侵害しているじゃないか」との指摘が相次いだ。
しかし、泥棒から持ち物を盗むことが認められているわけではない。この指摘があるからと言って、損害賠償の請求が認められないわけではない。
とは言え他者の著作物を利用してユーザーを自身のTwitterアカウントに集め、そこから自分の仕事に誘導している人物が、同じことをしているブログ主に対して損害賠償を請求するという行為は外野からは不快に映ることだろう。
コピーライト・トロールではないか?
結局、問題とされているのは以下の2点だ
前者は多くのブロガーが被害者となる可能性があるため、これを理由に作者を批判する空気が広がっている。
コピーライト・トロールとの批判は損害賠償の金額の大きさと、数十サイトにのぼる損害賠償請求先の多さから挙げられている 。
『強い女メーカー』は話題にのぼらなくなるだろう
今回の炎上事件の行き着く先としては、『強い女メーカー』作者が制作したサービスについて、 触れるブログや人物が少なくなってくるだろうというものだ。
作者の機嫌を損ねて損害賠償を請求されてはたまらないと、賢い人間ほど離れていくことになるだろう。
実際にいくつかのニュースサイトから、紹介記事が消えていることを確認している*1*2。
「ブログでサービスを紹介する」ことが商用利用にあたるのかあたらないのかについては興味深いため、ぜひとも裁判所で争って欲しい。
U&T vessel 法律事務所が見解を発表*3
今回の件でブログ側の代理人弁護士であるU&T vessel 法律事務所が、その見解を2月21日に発表した。
「ブログでサービスを紹介する」ことを商用利用とみなしている理由については、以下のように判断しているという(代理人弁護士の判断であり、判例は示されていない)。
損害賠償50万円の根拠についての説明はなかった。
作者が「「スクショを載せた」事について弁護士に対応を依頼したわけではございません。「無断商用利用」についてです」とツイートしているものの、代理人弁護士は「著作権侵害を理由に、法的な請求を各所に対して行っております」と主張しており、食い違っている。
著作権侵害を理由とした損害賠償請求なのか、商用利用を理由とした損害賠償請求なのか判断できない。
関連するリンクやツイート
関連リンク集
作者による一連のツイート。
気になる点
ブログ主は自身のブログを公開していない。そのためただの個人ブログなのか、アフィリエイトにより誘導をかけているブログなのか判断ができない。
一部では作者のツイートから、出会い系アプリの宣伝ブログがこのブログ主ではないかと判断している人もいる。しかし断定できる材料は確認できなかった。
ブログ主はタイトルに作者のTwitter IDを入れるといった「煽り行為」ともとれる行為を行なっている。自分の収入の少なさを訴えたり作者の著作権侵害を取り上げたりするなど、ネット上の喧嘩がうまい。
作者擁護側の外野は「アフィブログ憎し」でコメントしている人が多いように感じた。
逆にブログ主側の外野は「個人ブログでサービスを紹介したら損害賠償請求とかたまらない」というスタンスのようだ。
*1:『強い女メーカー』だけじゃない。パーツを選んで似顔絵アイコンを作れる可愛いアバターメーカー4つご紹介
https://woman.infoseek.co.jp/news/neta/isuta_t_598341
*2:声優さんもハマっちゃうほど面白い!「強い女メーカー」で理想の女性像や好きなキャラを作ろう!
https://nijimen.net/topics/20874
*3:この段落は2月21日23時50分ごろに追記