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タンパク質から作られた3Dプリント可能なガラス。

イギリスの科学誌ネイチャー(Nature)は2023年03月30日に、ジュド・コールマン(Jude Coleman)は、中国の研究者が、タンパク質(proteins)の構成要素であるアミノ酸(amino acids)とペプチド(peptides)をガラスに変化させたと報告した。

この技術では、アミノ酸とペプチド分子の末端を修飾し、材料を溶融して過冷却する。

その結果、無色透明で、3Dプリント可能な、有機廃棄物と一緒に分解できる生分解性の高いガラスが完成した。

この研究結果は、Science Advances誌に発表された。

Biomolecular glass with amino acid and peptide nanoarchitectonics
RUIRUI XING HTTPS://ORCID.ORG/0000-0003-0603-2284,
CHENGQIAN YUAN HTTPS://ORCID.ORG/0000-0002-6239-5445,
WEI FAN HTTPS://ORCID.ORG/0000-0001-7591-8308,
XIAOKANG REN, AND
XUEHAI YAN HTTPS://ORCID.ORG/0000-0002-0890-0340 Authors Info & Affiliations
SCIENCE ADVANCES
17 Mar 2023
Vol 9, Issue 11
DOI: 10.1126/sciadv.add8105
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この生体分子ガラスは透明であるだけでなく、3Dプリントや鋳型への鋳造が可能である。
この論文によると、このガラスはかなり早く生分解するが、液体によって分解されるため、飲料用ボトルなどの用途には適さないと書いている。

研究には参加していないシアトルにあるワシントン大学の材料科学者であるジュン・リュー(Jun Liu, a materials scientist at the University of Washington in Seattle)は、「これまで生体材料でこのようなことを試みた人はいませんでした。『良い発見です』」と言っている。

標準的なガラスは、二酸化ケイ素を中心とした無機分子を用いて作られている。原料は高温で溶かされ、その後急速に冷やされる。ガラスはリサイクルしやすいのですが、それにもかかわらず、かなりの量が埋め立てられ、分解に数千年かかることもある。

しかし、アミノ酸は微生物によって容易に分解されるため、生体分子ガラスに含まれる栄養素は、ゴミ捨て場に何年も放置されるのではなく、原理的には再び生態系に戻ることができる。

この研究の共著者で、北京にある中国科学院の化学者であるイェン・シュエハイ(Xuehai Yan, a co-author of the study and a chemist at the Chinese Academy of Sciences in Beijing)は、「再生可能で良質の分解性材料の開発は、持続可能な未来にとって非常に魅力的です.」と述べています。

通常、ペプチドと呼ばれるアミノ酸鎖を加熱すると、分子は溶ける前に分裂を始める。
イェン・シュエハイ教授らは、アミノ酸の末端を修飾することで、アミノ酸の組み立て方を変え、分断を防いだ。
この修飾アミノ酸を溶かした後、研究チームは急速に過冷却した。過冷却とは、分子を凝固点以下まで下げ、液体の状態を維持させるプロセスである。その後、さらに冷却してガラス状に固めた。室温に戻しても固体のままであった。

この方法により、アミノ酸やペプチドが固化する際に結晶構造を形成し、ガラスが濁ってしまうのを防ぐことができたが、著者らは、ガラスが完全に無色でない場合もあることを指摘している。

生体分子ガラスを消化液や堆肥にさらすと、化学修飾や使用したアミノ酸やペプチドによって、分解に数週間から数カ月を要したそうでaru。

カリフォルニア大学バークレー校の材料科学者であるティン・シュー(Ting Xu, a materials scientist at the University of California, Berkeley)は、「これは非常に基礎的な研究です」と言う。しかし、材料研究者にとっては、新たな道を開くものだという。

生分解性があるため、このガラスは湿度の高い環境での使用には適さないだろう、とティン・シューは言う。また、有機化学結合は無機化学結合よりも弱い傾向があるため、ペプチドガラスは標準的なガラスよりも剛性が低くなるのではないかと推測している。しかし、この性質は、顕微鏡のレンズのような、柔軟で小型の装置には有効であると、彼女は言う。

何に適しているかを探すのは難しい。

これだけ色があれば、サングラスにいいかもしれない。

doi: https://doi.org/10.1038/d41586-023-00826-3

https://www.nature.com/articles/d41586-023-00826-3
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.add8105

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