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ロンドン取引所CEOシュワイマー、「証券のトークン化検討」

ヨーロッパ経済ニュースEUROPE NNAは2022年12月06日に、LSEG(London Stock Exchange Group/ロンドン証券取引所グループ)のデビッド・シュワイマー(David Schwimmer)最高経営責任者(CEO)はデジタル資産の取引を拡大するため「証券のトークン化などを検討している」と明らかにした。

取引所の再編については一線を画す意向も示した。

いよいよ、次の時代が来た。

シュワイマーCEOはインタビューで、デジタル資産の取引を拡大するため、総合金融情報サービスとしての機能を高めていく戦略を語った。

ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用したデジタル資産については「どのようなビジネス機会があるか評価している」とした。証券のトークン化のほか「クリアリング(清算)などを検討している」と述べた。

トークンはデジタル資産の一種として、株式をトークンにしてデジタル証券として取引できるようになれば、決済や権利移転が瞬時にできるようになる。

株式などは現状、決済完了までに数日かかるケースもある。

暗号資産(仮想通貨)交換業者が仮想通貨をトークンにする例もあるが、流動性の問題を抱えている。

世界的な取引所がデジタル資産をやり取りする基盤を整備すれば、ビジネス拡大につながるとみている。

つまり、株式を暗号資産並みに扱うことになれば、多くの障壁が消え、暗号資産(仮想通貨)交換業者が同時に株式も扱うことも考えられる。

日本では、証券会社が、暗号資産(仮想通貨)交換業者を買収した例も多い。

その障壁が取り払うことができれば、ビジネスは大きく拡大する。

シュワイマーCEOは「デジタル経済に移行するなかでデータの管理や分析の重要性が高まっている」と指摘した。

それは、将来のビジネスでAIを使った最も期待される分野になることだろう。

LSEGは2021年01月29日に金融情報を手掛けるリフィニティブ(Refinitiv)の買収を完了した。ネットワークやデータセンターの統合を目指している。

LSEGとリフィニティブのサービスを切れ目なく組み合わせて提供できるようになり「顧客は各市場に一段とアクセスしやすくなる」という。

LSEGはさらに、デジタル個人データ認証サービスの米国のグローバル・データ・コンソーシアム(Global Data Consortium)や、市場データサービスの米国のメイストリート(MayStreet)などもM&A(合併・買収)で傘下に収めた。「金融市場取引のライフサイクルをサポートする領域で事業は分散して強固になり、世界中にデータを提供する体制を整えた」と話す。取引約定後のポストトレードの分野でもM&Aを実施した。

日本では金融機関を中心に約1000の取引先を持つ。

シュワイマーCEOは「当社にとって日本市場は大きく、顧客に有用なサービスを提供していく姿勢に変わりはない。」と述べた。日本取引所グループ(JPX)とは提携関係にあり、データやインデックス関連で協業してきた。「サステナブル分野などを含めて提携を深めていきたい。」とした。

国をまたぐ証券取引所の再編について「クロスボーダーの再編の成功例は少ない。今後の再編もチャレンジングだ」と述べ、慎重な見方を示した。

世界的に取引所ビジネスの比重はデータ関連に移っている。


ロンドン証券取引所が2007年にイタリア取引所を買収し、両取引所を傘下に持つLSEGが発足した。

2000年にはパリ、アムステルダム、ブリュッセルの3証券取引所が統合してユーロネクスト(Euronext)が誕生した。近年ではこうした大型の取引所同士の再編は影を潜めている。

背景にあるのが「保護主義の高まり」という。証券取引所は国のシンボルとしての意味合いが強く、他国の取引所に買収されることへの抵抗感が強まっているとみる。

LSEGは2017年にドイツ取引所との経営統合が破談となり、2019年には香港取引所がLSEGにしかけていた買収も不発に終わった。


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