イエスマンだけで構成する集団
かつてのソニー社内での話。
ソニー創業者である盛田昭夫さんと、現場のある部長が議論になり、
部長:「話が合わないので辞めます」
盛田:「話が合わないからいいんだよ。俺と同じ意見ならそっちのほうがいらないよ」
というやりとりがあったそうだ。さすが、ソニーの創業者。新しい価値を創り、時代を切り開いて来た人は考え方も一流だ。
さて、自分はどうだろう? 「話が合わないからイイ」なんて、言えないだろう。
考え方が近い人のほうがいい
部下は、話が合うほうがいい。どうしても、自分の考え方に共感と納得をしてくれる人を近くに置きたくなる。
人は、物事を進めるときに、自分の考え方でしか進めたがらない。当たり前だ。
自分は自分だから。自分の価値観でしか物事は判断できない。
そして、足を引っ張るのは、自分と違う考え方をする人。上司でも部下でも、一緒に仕事する仲間に、そういうのが一人いるとやっかいだ。
だから、一緒に仕事する仲間は、自分と考え方が近い人がいい。
上には忖度力
上司とか上役に対しては、どうか?
自分と違う考え方の人に、なかなか「違います」といいづらい。「違うな」と思っても、立場に負けて、何度か「偽装頷き」を繰り返すと「忖度」するようになる。
自分は違うと思うけど、社長は●●と考えるから、そうしとこう。
サラリーマンの宿命。にしても、カッコ悪い。だが、サラリーマンは上と揉めると道が険しくなることが多い。よって、衝突案を回避する習性が染みつく。そして、社長や上級役員の周りには、イエスマンがずらりと並ぶ。NOが言える人が一人もいない取締役会。怖い怖い。日本の政治は?自民党内は?
違うけど、信じている
しかし、自分の仕事を振り返ると、違った側面がある。
大きな仕事/難しい仕事に直面したときに、右腕になってくれる仲間は、だいたい僕と違う考えや意見を持つ人だった。
しかも、お互いの第一印象があまりよくない。「第一印象がよくない」のは、僕の右腕の歴史上、不思議と共通している。
「堀川さん、最初ホント感じ悪かったですよね」と、酒の席で右腕はよく言う。で、「それはこっちのセリフだよ」と返す。お互い本音だ。
一緒に仕事をすると、僕と右腕の意見が割れることがある。7〜8割において、僕の意見が採用される。しかし、2〜3割においては違う。肝心カナメのプランのときなんか、結構そうだ。
カナメのプランは、仕事の仕上がりを左右する重要なパーツ。そういうものに限ってクライアント側も熟考したり、先方の役員が首を縦に振らなかったり、と、なかなか決まらないことが多い。
たいがいにおいては自分のプランで進めるが、ニッチもサッチもいかなくなって、右腕の案を採用する。相変わらず僕はいいとは思ってない。しかし、そのときは、
「俺は違うと思うけど、●●のことを信じてるから、やってみよう」
という心境になる。「違うと思うけど、信じてはいる」。これがポイントだ。
そんなとき、僕の右腕は
絶対に自信があります。任せてください。
と言う。頼もしい限りだが「責任を取るのは俺だよ」って、ちょっと不安に思いながら託すのである。
そういうときに限って、仕事はうまくいく。不思議なものだ。
僕がサジを投げ、諦めかけた仕事も、そのときの右腕のプランで大成功を収めたことがある。そんなときは、素直に脱帽する。「俺には、絶対に考えつかなかったし、実現もできなかった。あなたは凄い」と。
「違和感」のひと
僕の右腕論は、「考え方が全く相いれない」人/「印象として嫌い」な人ではなくて、「なんか違和感がある」人。
価値観は同じだが、考え方が違う。
大きく違うというより「違和感」のレベル。
価値観が同じところは重要だ。これが違っちゃうと、大事な場面で噛み合わない。よって、一緒にいい仕事をするのは難しい。
「最初から、すんごいフィーリングが合うと思ってたんだよね!」という人に限って、ホントに最初だけで、途中から「おや?」とか「あれ?」とか思うようになるから、これも不思議である。
長続きもする
結局「右腕な人」とは関係も長続きする。そして、ピンチのときに助けてくれる。僕にとってなくてはならない、ありがたい存在だ。
ちなみに、うちの妻も、右腕論とまったく同様の存在。
僕の彼女に対する第一印象も全く良くなかった。「この人の彼氏は大変だろうし、かわいそうだなあ・・・」と思っていた。しかし、かれこれ30年もの間、一緒に過ごし、結婚して24年になる。私の妻は彼女しかいない。無条件に愛することができ、私の人生を豊かにしてくれる。
ただ、趣味嗜好・興味の対象が、夫婦で劇的に違う。コンビニ弁当の選び方ひとつとっても、全く違う。笑っちゃうぐらい、いろんな好みが違うのだ。「これでよく一緒にいられるな」というほどに。
人づきあい、は、味わい深い。合わないという「違い」も、深く味わうことで、より豊かな人生がおくれる。そう思った次第。
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