コンサルタントがおすすめする、業務変革の本【応用編】
こんにちは。株式会社digglue でコンサルティング部門を担当する池田です。
弊社は「持続可能な社会をテクノロジーで実装する」というパーパスのもと、静脈産業のDXに取り組んでいるスタートアップです。
「DX時代に求められる現場変革力を身につけるには?」ということで、
【 基礎編 】に続く今回の【 応用編 】では、実践的な内容を中心に書籍を選ばせていただきました。
▼ 経緯と【 基礎編 】はこちら
これらの記事が皆様にとって有益なものとなれば私としても幸いです。
はじめに
「業務変革を実現するうえで役立った本」というお題ですが、影響を受けた書籍は多々ありまして、絞るのになかなか苦労しました。
本屋さんにいくと、「マッキンゼー/BCG流~」「外資コンサルの〇〇術」などのコンサルティングに関する理論・フレームワーク・資料作成術などの書籍が、入口に平積みにされているのをよく見かけます。
似たような書籍がたくさんあって、どれを読むか迷うかと思いますが、以下のようなバイブル的な名著を押さえておけば、業務改革コンサルに必要な基本的素養は得られます。
書評は記載しませんが、どれも業務変革に携わる者としては読んでいて当たり前、といえる間違いのない名著4冊だけを厳選しました。
ただ、改革を実現するためには、上記のような理論・スキル習得だけでは太刀打ちできません。
抵抗勢力、社内政治、保身、利害の不一致・・現場には様々な障壁が存在します。どんなに素晴らしい分析や実行計画を描いて、優れたシステムを導入しても、現場を動かせなければ、変革は起きず、戴いたコンサルフィーに値するバリューを提供することはできない。
今回ご紹介するのは、私がクライアントの現場に身を置いていた際、人・組織を動かすことに苦労をして壁にぶち当たったときに窮地を救ってくれた、ブレイクスルーのきっかけとなった4冊です。
①『キャズム』:マーケティング理論のアナロジーで、限られたリソースでも戦いを略し、組織を動かす
※現在は、改訂版(『キャズム2』)も出ているようです。
もし、業務変革コンサルタントに1冊だけ薦めてくださいと言われたら、これを選びます。実を言うと、原著はほとんど読んでいません(笑)。
有名な「キャズム理論」を解説した本書は、ハイテク製品のマーケット投入時におけるユーザー特性を5段階で捉え、とくに「アーリーアダプター層(新しもの好き)」と「アーリーマジョリティ層(便利なら買う)」の間にある「Chasm(溝)」を超えることが、市場普及のポイントと説いています(下図参照)。
約10年前の当時、某自動車メーカーで、製品設計のナレッジマネジメントシステムの導入を推進していた私は、1人で約80名の設計者を相手に、ユーザーサポートを均等に行っていました。
全く関心のないユーザーの対応まで含め、時間と手間ばかりかかる割に、利用率が一向に上がらず疲弊していたときに、ふとキャズム理論をこの状況に当てはめてはどうか、という仮説が浮かびました。
システムの利用に前向きな、全体の1割の「アーリーアダプター」だけにフォローを注力した結果、そのユーザーの満足度が短期間で上がり、口コミで周囲に良さを伝えてくれるようになり、「アーリーマジョリティ(便利なら使う)」→「レイトマジョリティ(焦って使い始める)」と、みるみる利用率が上がっていきました。
戦略とは「戦いを略す」。業務変革においても、まずはアーリーアダプターを発見すること。孫子の兵法にも「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。 戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」とあるように、戦って勝つよりも、戦わずして勝ちを得ることの重要性をこのとき身を持って学びました。
※マーケティング・事業開発と業務変革は似ているかもしれません。麻生要一さんの『新規事業開発の実践論』で、「プライマリーカスタマー」に注力するという話が出てきますが、まさにこのことですね。
②『不格好経営』:スタートアップ立ち上げ時の困難を超えた実話から、変革の現場を突破するマインドを学ぶ
出版された2013年当時は、クライアントの全社を巻き込む3次元図面改革のプロジェクト責任者を務めていた時期で、失敗したら億単位の損失、日々大きな重圧で、孤独でした。毎朝、魔裟斗のPVをYouTubeで眺めながら、自らを何とか奮い立たせて客先の門をくぐっていました。
そんな時にこの本に出会って、救われたことを覚えています。こういう書籍に何冊出会えるかが、コンサルタントのレジリエンスをいかに高めるかを決めますね。
マッキンゼー時代の挫折と開き直り、DeNA創業後の「なにもそこまでフルコースで全部やらかさなくても、と思うような失敗の連続」のなかで、なりふり構わず「不格好」な日々。美談ではなくほんとうのことが綴ってある。この人が書いていることは信じられると思えました。
なかでも、
これらの言葉は、いまでも窮地に立たされたときの拠りどころになっています。
ただ、「コトに向かう」のくだりだけが、いくら読み返しても見つからず。調べると、どうやら「グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット 2013」の南場さんの講演内容だったようです。こちらも素晴らしいメッセージです。
③『交渉プロフェッショナル』:国際調停の最前線で活躍した超一流ネゴシエーターの交渉術を活かす
著者のキャリアは常に難易度の高い局面ばかり。いったいどんな交渉術で切り抜けるのか、期待して読み始めたが、意外にも「交渉の極意は「戦わない」こと」が本質だという。
このくだりが、自身の体験とも重なって腑に落ちました。
完璧すぎる理詰めで、論破して追い詰めても良いことはない。
具体的な交渉術についても多くのエピソードが記載されており、合意形成の場面でとても役に立ちました。とくに感銘を受けた箇所を記します。
経営層から現場層まで、設計部門〜製造部門、メーカー〜サプライヤ間、また抵抗勢力との合意形成の際に、頼れる武器となるはずです。
④『折れる力』:持論を通そうと意固地になるより、何でも折れてしまったほうが不思議と事がうまく進む
理想・こだわりを持った顧客と改革をうまく進めるにはどうしたらよいか?
「サラリーマン NEO」ほか、異色の番組を多数手掛けるNHKの敏腕プロデューサーが推奨する、「折れる力」という名の対人メソッド。
著者自身、かつてはこだわりが強く、理想を持っていたほうが仕事の完成度が高くなると思っていた。実は真逆だった。
意見が対立したらあっさり折れる、トラブルが起きたら台本通りを貫くのをやめる。とにかく流れに委ねてみる。
すると、不思議なほどに物事がうまく進み出し、新しいアイデアに辿り着き、結果として想定を超えたアウトプットが生まれる。
本当なの?試してみたらその通りでした。そこまで捨てたら主体性がなさすぎるのでは、と思うくらいに折れても大丈夫。逆にクライアントがこちらの意見に耳を傾けて採用してくれることも。
しょせん1人の人間のアイデアには限界がある。自身の仮説は惜しげもなく捨て、周りの意見をどんどん取り入れてみる。それが、プロジェクトを成功に導く確率を高める気がしています。
以上、これらのような「役に立つ書籍」は、得てして他の業界のプロフェッショナルや理論からインスピレーション・アナロジーを得ることが多いと感じます。
コンサル業界に特化した書籍も非常に有益ですが、どんなメソッド・テクノロジーを駆使した改革も、結局、最後に変革が必要なのは人。
人を知り、組織をより再現性のあるやり方で動かせるかどうか。そして、変革を完遂し、ホンモノを作りきる胆力を自分たちも保ち続けられるかどうかが、業務変革リーダーに求められる素養ではないかと思っています。
それを支えてくれる、心の拠り所となる1冊を見つけられるとよいですね。(それは本でなくてもよくて、音楽・映画・Youtubeでも何でもOKかなと)
さいごに
以上が、私からのオススメ4冊でした。
最後に弊社の宣伝で締めさせていただきます。
digglue は「 資源循環 × テクノロジー なら任せてください!」という会社ですが、テクノロジーの導入自体を目的化せず、「 資源循環を見える化し、実装に落とし込む 」ところに強みがあります。いわば、「 テクノロジー実装 」と「 循環社会の形成 」を両輪とする会社です。
私たちに興味をもってくれた方、いつでも気軽にお話しましょう!
最期までお読みいただきありがとうございました。
▼【基礎編】はこちら