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最近読んだ物理書籍の感想

 物理書籍って冷静に考えると一般的用語ではないですよね。
でも電子書籍の対義語としては正しいはず。
なのに一般会話で物理書籍という言葉を使ってしまい、先方の頭の上へ?マークを出現させてしまいました。

どうも。
最近読んだ物理書籍の感想をまとめていきたいと思います。
ネタバレはしておりません。

書籍は以下の通り

・ナイトフライヤー
・AI崩壊
・夢みる葦笛

ナイトフライヤー

購入動機
ゲームオブスローンズ原作者でおなじみ、J.R.R.マーティン短編集『ナイトフライヤー』。短中編全6作。
しかしぼくにとっては2020年中に発売されるクッソ面白いことで有名なフロムソフトウェア最新作『エルデンリング』の骨子にあたる神話部分の設定、制作に携われた方!これはもう予習するっきゃ、ナイト!

以下、各話あらすじと感想

ナイトフライヤー
宇宙船ナイトフライヤー号の冒険。
ややセックスしすぎな気がするものの船という閉鎖空間の持つ不気味さと航海のリアル。たどり着く先でのワクワク感満載。
船長、愛してるぜ。

オーバーライド
自然豊かな地球型異星で希少鉱石を発掘する最中の事件の話。
情景描写と暴力描写が高精細画像のごとく迫ってくる。とても美しい映画だった(幻覚)
作中出てくるガジェットはマッポー感と現実感を併せ持っていて結構好き。

ウィークエンドは戦場で
表題通り週末毎に戦場へ送り込まれるしがない男たちの話。
これまた肌に刺さるような冷たい現実感の連続。まるでノンフィクションのように続いていく地獄が魅力的。戦争にゃ行きたくねえなぁ。

七たび戒めん、人を殺(あや)めるなかれと
異星の文化と、地球文明との”交流”のお話。
本作がエルデンリングの前日譚でもおかしくなさそう。前章と併せて、作者は軍記モノがかなり得意な分野なのだと強く感じるほど軍隊的組織の描写が重厚感ある。

スター・リングの彩炎(さいえん)をもってしても
ある宇宙科学現象を観察する男の心を追う物語。
作者の宇宙観を垣間見れたような気がする作品。ワープドライブを主軸に、しかし科学技術方面へは行かずその現象を詩人に扱わせるというのは自分では絶対思いつかない。
 ピザ食べたい。

この歌を、ライアに
男女二人の超能力者が異星に降り立ち、現地の奇妙な宗教に触れていく。
表題1作目でセックスしすぎと苦言を呈したがこっちではそうは言いますまい。官能描写がメインではない。念のため。
タイトルの重要性を改めて教えてくれる作品だった。

感想
叙述の腕がさえわたり、無窮の宇宙や未知の惑星の情景がありありと脳裏に浮かぶ読みやすい物語の数々でした。

これらの物語から察するにエルデンリングとは「星々の運行すらつかさどる」とされるところからかの世界は一隻の宇宙船でありリングはその航行装置とも考えられるのでは?

AI崩壊

購入動機
邦画の小説化作品。ツイッターで刺激的なレビューを見たので思わず購入。

購入の動機としてはそのレビュー中にあった、本作におけるAIに対する描写に対するツッコミでした。
SFを考えて書いているものとして、これらのレビューを読み進めるうちに血の気が引いたのです。

「もしかして俺、同じことやっちゃいました?」

読了後、この懸念はまったく杞憂であると思っています。

感想
 ある意味で真面目な作品。別の意味で不真面目な作品だと思います。
古今東西のアクション、感動的なシーン。それらをいつどこで見せるかを組み立てていく手腕はプロの技。序盤が終わり事件が動き出して以降は粗探しする間もなくスルスルと読み進んでいきました。面白い。
 一方で真新しい要素は、うん。無いと言っていいのではないでしょうか。本作の目玉として導入しているAI技術にしても、既に過去の名作が多くありますがそのさわりだけをなぞっている印象です。実際にそれが現実に導入されたらどうなるか。どんな社会になるか。それを真面目に考え詰めた、というよりは『劇中展開のために必要な要素を持ってきた』というところでしょうか。

 あと、ネタバレになってしまいますが本作、エピローグにAI出ません。

夢みる葦笛

購入動機
 同作者短編集『魚船、獣船』を誕生日に貰って読み、続刊にも興味がありました。あと小説写経練習法なるものがあると聞き、その種本にと。

以下、各話あらすじと感想

夢みる葦笛
開幕1ページで歌うイソギンチャクと出会う。歌と行き違いとロックの物語。イソギンチャクが登場し、最後までイソギンチャクでしめる。この手腕、超真似したい。
できるわけがない!

眼神(マナガミ)
幼馴染の少女と少年と。
田舎暮らしハードモード。都会にも仙人がいる。しっとりとした田舎の情景描写が物語の湿度を絶やさない。

完全なる脳髄
世界に危機が訪れ、人類が技術でそれを乗り越えた時代。技術の申し子が自分探しの旅に出る。
大きな設定からこの主人公が生まれたのか、主人公から世界の危機を逆算して考えたのか。

石繭
日々の労働に疲れた主人公はあるものを見つける。
やはり労働はクソだなという認識を作者と共有した。気がする。

氷波
惑星探査AIのもとに、地球から別のAIが送られてきて……
二人のAIの対話で淡々と進んでいくがその温度差とテンポが楽しい。

滑車の地
『皆勤の徒』に出てきそうな海の上でほそぼそと暮らす人々のお話。
ネタバレ:屈指のカワイイヒロインが登場する。
舞台、人物、展開全てが好み。

プテロス
異星の生物、その秘められた真実に迫る!
異形を異形として書きながら人間的価値観も損なわずに並走させるというワザマエ。

楽園
AR、VRに続く技術と二人の人間のお話。
意識と相互理解について作者の思いが込められている気がした。

上海フランス租界祁斉路三二〇号
時は満州事変直前。実在したという日中共同研究施設のお話。
ブラムストーカーのように想像力で全てを書くこともできるが、綿密な取材で作り出す物語も実に面白い。

アステロイド・ツリーの彼方へ
会社からネコ型ロボットの相手を命じられた男の話。
技術で実現できる、できない。あるいはしてはいけない。その概念の境界はどこにあるんだろうか。

感想
面白すぎる…。これがプロかと改めて思いました。思い知らされました。
当面、この方の日本語をパクr倣って生きていこうと思います。

未来へ

次は昨年末にコミケで買った都市SF合同小説本です。
第1話が素晴らしいホラーだったので期待大。

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