マガジンのカバー画像

短編

73
思いついたこと。見た夢の書き起こし。あるいは習作。
運営しているクリエイター

#ファンタジー小説

疾駆天救 雷鳥騎士団

疾駆天救 雷鳥騎士団

 トナカイが陽光を蹴って降りていく。光は頭上に広がる大地のひび割れから無数に差し込んでくるが、広大な地下世界を照らすにはまるで足りない。虚無と黒雲と、遠くから聞こえてくる波音が全ての生き物の心を苛む。
 
 乗騎の背で男は目を凝らした。その目にはそびえ立つ世界亀の足が映っている。どんな大木も比較にならない巨大な足。そのにび色の岩肌に生気は無い。だがその色を背景にひらひらと舞う白い花びらがあった。

もっとみる
流れ転がる果てに因り-環紡術士道中記-

流れ転がる果てに因り-環紡術士道中記-

 丘陵地が星空に照らされて、稜線が闇の中から浮かび出ている。一方、空を回る巨大な光の環は地上を照らしはしない。ただ私の目に眩しいだけだった。空をゆっくりと回転する幾重もの光環。それは徐々にすぼんでいき、先端は深い森の中に沈んでいた。

 そこを目指して暗い林の中を駆ける。土を蹴るたび、早駆けの指輪が淡く灯る。

 先を行く師匠が、直棒で右手方向を指した。

「御同輩が集まってきたよ!」

 夜の林

もっとみる