エネルギーバランスのとれた食事とは?

こんにちは。管理栄養士のTany.(タニィ)です。
食と健康に関する、小難しい国の基準や法令をわかりやすく伝えていきます。

数回にわたり、日本人が摂るエネルギーや栄養素はどのくらいか?という話をしてきました。
参考にしているものは厚生労働省から出ている、「日本人の食事摂取基準」です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

今日のテーマはエネルギー産生栄養素バランスの話です。
栄養素にはエネルギーを生み出すものと生み出さないものがあります。
エネルギーを生み出す栄養素は、
これまでnoteに書いてきた、たんぱく質、脂質、炭水化物の3種です。
それらについて、どのくらいの割合で摂るとバランスが良くなるのか、について話していきます。

エネルギーとエネルギーになる栄養素の関係

3種類の栄養素1gあたりのエネルギーは、
たんぱく質:4kcal/g、脂質:9kcal/g、炭水化物:4kcal/g です。
摂取したエネルギーはそれぞれのエネルギーの合計です。

例えばある菓子パンのパッケージに、
エネルギー 296kcal
たんぱく質 9.0g
脂質 12.8g
炭水化物 36.2g

と表示されていたとします。

たんぱく質、脂質、炭水化物それぞれのエネルギー量(kcal)に重さ(g)をかけて足しあわせた数字は、エネルギーの数字とほぼ同じになります。

上記の菓子パンで計算すると、
たんぱく質 4kcal×9.0g=36.0kcal
脂質 9kcal×12.8g=115.2kcal
炭水化物 4kcal×36.2g=144.8kcal
合計:296kcal

パッケージの表示では同じように並んで書かれているので、エネルギーは栄養成分の一つのように思ってしまいそうですが、3つの栄養素とエネルギーは同系統ではありません。

ちなみにスーパーやコンビニなどで気軽に購入できる加工食品は、
2020年4月から適用となった食品表示法、それに基づく食品表示基準によって
栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム)量や熱量の表示が
義務づけられています。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200415_01.pdf
消費者庁/食品表示法

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_201009_4.pdf
消費者庁/食品表示基準

バランスのとれた食事とは?

日本人の食事摂取基準によると、男女ともに18~49歳ではエネルギー%で、
たんぱく質: 13~20%
脂質:20~30%(飽和脂肪酸は7%以下)
炭水化物:50~65%
となっています。

画像1

画像2

しかし幅があり、どのように足し算して100%にするのかも書いていません。
そこで5%刻みで基準に沿うように勝手に決めていくと、
たんぱく質:脂質:炭水化物=15:25:60となります。

現在の日本人の食事バランスはどんな状態か?

令和元年に行われた国民健康・栄養調査(平均値)では、
たんぱく質:15.1%
脂質:28.6%
炭水化物:56.3%
でした。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html
令和元年「国民健康・栄養調査」の結果

その10年前(平成21年)は
たんぱく質:14.7%
脂質:25.6%
炭水化物:59.7%
でした。

たんぱく質の割合には大きな変化が見られませんが、
脂質の比率が毎年徐々に上がり、逆に炭水化物が下がっています。
よく考えてみると、食事摂取基準において脂質は国民健康栄養調査の結果を参考にしており、
炭水化物は全エネルギーからたんぱく質と脂質の分を引いた残り、という考え方をしていることから、脂質の量が増えると炭水化物が減るのは当然のことでしたね。
今後日本人の脂質摂取量が変わると、食事摂取基準の基準も変更になる可能性があるということです。

エネルギー摂取量からみた、バランスのとれた食事を考えてみる

毎日の食事をバランスよくできたら理想ですが、日々の家事や育児、仕事のことを考えると常に計算しながら食べることは現実味がありません。
ここではエネルギーと3つの栄養素のバランスからみた食事、という観点で話をしていきます。
(全体の栄養のことを考えると、ビタミン、ミネラル等も含めた話が必要です。)

画像3

食事は主食、主菜、副菜を揃えるとバランスがよくなりやすく、飲食店で定食として販売されていることも多くあります。

農林水産省からは、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5つをコマに見立てた食事バランスガイドが出ています。

https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/index.html
農林水産省/「食事バランスガイド」について

そのうち、エネルギー担当の主食(白飯、パンなど)、主菜(肉、魚、卵、豆など)の2つを見ていきます。

一日の分量として、
主食は白飯を普通盛り(150g)を3回
主菜は【朝】納豆1パック50g
   【昼】卵1個
   【昼】青背の魚一切れ(70g)
   【夜】肉(100g)
を食べたとします。
(話を簡単にするために具体的な魚や肉の種類を表記していません)

栄養成分からエネルギーを計算すると合計1,277kcal、
たんぱく質:18.2%
脂質:27.4%(飽和脂肪酸8%)
炭水化物:54.4%
です。
ここには調理で使う油(脂質)や砂糖(炭水化物)などは含まれていません。
卵はゆでたまご、魚は塩焼き、肉は蒸したものを一旦想定しました。

一日の摂取エネルギーを2,000kcalとし、副菜や汁物にエネルギーが多少発生することも考慮して主食と主菜で1,850kcalになるように考えます。
加えて たんぱく質:脂質:炭水化物=15:25:60となるように調整すると、

上記に
たんぱく質:12g
脂質:13g
炭水化物:102g
これらを調味料の油や砂糖、その他の副菜や汁物の具などで補充していく、ということになります。
(油1g=脂質1g、砂糖1g≒炭水化物1g)

脂質は、卵を玉子焼きにしたり、肉を焼いたりして油を使うと、すぐに13gに達します。
たんぱく質も、汁物に入っている豆腐やうす揚げ、副菜に大豆やチーズ、ツナなどを使うと比較的簡単に摂取することができます。
炭水化物は糖類(砂糖)だけに偏ることなく摂取することが望ましい、と食事摂取基準にありますので、
いもやかぼちゃ、とうもろこしなどのでんぷん質の食材を使って副菜を作ったり、果物を取り入れたりして、嗜好飲料や菓子に頼りすぎないようにするのがおすすめです。
おにぎりをおやつにしてもよいでしょう。


【炭水化物の量】
じゃがいも1個(150g):24.0g、かぼちゃ1/16個(60g):12.4g、とうもろこし1/2本(80g):6.7g
バナナ1本(120g):16.2g、みかん1個(70g):6.7g
大福もち1個(50g):26.4g、コーラ1本(500ml):57.0g、ポテトチップス(うすしお味・60g):32.3g
おにぎり1個(80g):29.7g

これは一例ではありますが、家計簿で毎月決まって消費する固定費と月によって変わる変動費に分けて管理するように、毎日決まって食べるものの栄養素量を把握しておき、残りをどうやって摂っていくのかをざっくりとでも見積もっておくと、日々の献立が少しは立てやすくなるのではないかな、と思います。

以上、参考になれば嬉しいです。


************************

今回の内容をより詳しく知りたい方は、以下をご確認くださいませ。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

https://www.youtube.com/watch?v=8qJTJQz95LA&t=4s
厚生労働省/MHLWchannel 「日本人の食事摂取基準(2020年版)研修会(講義1 ①策定について ②活用について) 約47分

https://www.youtube.com/watch?v=WjPqTLfqxBY&t=1401s
厚生労働省/MHLWchannel 「日本人の食事摂取基準(2020年版)研修会(講義2 ①エネルギーについて ②エネルギー産生栄養素等について) 約56分

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h28-houkoku.html
平成28年 国民健康・栄養調査(日本人の食事摂取基準はこの年の調査結果を使用)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html
令和元年「国民健康・栄養調査」の結果

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200415_01.pdf
消費者庁/食品表示法

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_201009_4.pdf
消費者庁/食品表示基準

https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/index.html
農林水産省/「食事バランスガイド」について

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?