食品の表示にまつわるお話~概要と栄養成分表示~

こんにちは。管理栄養士のTany.(タニィ)です。
食と健康に関する、小難しい国の基準や法令をわかりやすく伝えています。

今回からは、食品表示の話をしていきたいと思います。
2020年4月から「食品表示法」という法律に基づいて加工食品等が販売されています。
今は野菜や魚などの素材を調理して食べることに加えて、加工食品を利用する機会も多いので、その表示について知っておくことは個人の健康づくりに役立つと思っています。
幅広い内容のため、数回に分けて少しずつ書いていきます。

食品表示にかかわる、複雑で分かりにくかった法律

既に多くの加工食品が流通している中で、なぜこのタイミングで食品表示に関する法律が?と思う方もいらっしゃるかもしれません。その通りで、食品表示に関する法律は複数ありましたし、今もあります。
まず食品衛生法です。食中毒や異物混入、添加物など飲食による衛生上の危害発生を防止することを目的として定められています。
次にJAS法(品質表示基準)です。原産地や賞味期限など食品表示に関する適正な表示により消費者の選択に役立つことを目的として定められています。
その他、健康増進法(栄養表示など栄養の改善その他国民の健康増進を図る)等、目的によって複数の定めがあり、消費者がこれらの法律をすべて確認して商品を購入することは困難でした。

図1 食品衛生法、JAS法、健康増進法の関係

画像1

特に、図1の通り食品衛生法とJAS法とで重複する部分があったり、法律間で定義が違う用語があったりして、製造販売(表示)する側も戸惑うことが多かったのです。
例をひとつ挙げますと、生鮮食品と加工食品の定義が食品衛生法とJAS法で異なっていたものに乾燥果実があります。
大阪の南河内地域で栽培されている果物の一つにいちじくがありますが、それをドライいちじくにして販売したいと考えたとします。
そうすると食品衛生法では乾燥果実は生鮮食品扱い、JAS法では加工食品扱いとなるため、食品衛生法に基づく表示は不要であってもJAS法の加工食品のルールに沿った表示を行う必要があります。
このように販売するもの一つ一つ、どの部分を参照するかを調べていくのはとても大変な作業でした。
そこで食品表示に関して消費者、製造販売者の両者にとってわかりやすく、より消費者の食品選択に役立つようにと2015年に食品表示法という一つの法律に調整・統一され、5年の経過期間を経て2020年4月より完全移行となっています。

消費者庁/食品表示法
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200415_01.pdf

食品成分表示の中の栄養成分表示

次は表示についてみていきましょう。
加工食品には図2のような情報が記載されています。
それぞれどの法律に基づいて表示されているのか色分けされています。

図2 以前の法令に基づく表示(例)

画像2

この中でも今回は赤囲みで左上にある「栄養成分表示」の話をします。
2015年より前でもこの表示があったような記憶がある方も多いかと思いますが、もともとこの表示は任意で表示されていたものです。食品表示法ではこの栄養成分表示が義務化されました。
義務化されたといっても、表示義務の対象は一般用に販売されている加工食品と添加物です。
生鮮食品、酒類、小さい駄菓子等でパッケージに表示できないものや、日替わり弁当のように日によって内容が変わってくるもの等の表示は任意となっています。
それ以外のものは、エネルギー(熱量)、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量で表示)の5つの栄養成分を必ず表示することとなっています。
5つの栄養成分のうち、ナトリウムを除く4つに関しては過去のnoteに書いていますので、そちらも合わせてご覧ください。
(とりあえず一つだけ引用・・・)

栄養成分表示で確認しておきたいところ

どのような栄養素がどのように含まれているのかを確認するのはもちろんですが、そもそも栄養成分表示がどの分量で表示されているかはしっかり確認したいところです。
分量に関しては100g、100ml、1食分、1包装等での量が表示されています。
せっかく栄養成分表示を確認して選んだとしても、1食分あたりの栄養成分だと思って購入したものの実際書いてあったのは100gあたりの数字で当てが外れた、ということもあり得ます。
糸寒天、マ○ニー、干しシイタケ等の乾物は1袋、100gあたりの表示であることも多いので、ぱっと見て、「これってこんなにカロリー高かった?!」と思ってしまったりしますが、1食あたりの使用量は少ないことが多いので、落ち着いて確認しましょう。
ちなみに図2のスナック菓子は1袋の分量で表示されています。食べる人に応じて今回は1/3袋くらいにしておこうかな、など考える目安となります。

ナトリウムへの塩対応

これまでの栄養成分表示では食塩相当量はナトリウムと表記されていました。
学校では 食塩=塩化ナトリウム と習っているので、食塩量(NaCl)≠ナトリウム量(Na)であることはわかると思います。

例えば図2のスナック菓子の食塩相当量は、

食塩相当量(g)=ナトリウム量330(mg)×2.54(換算係数)/1000(gへ変換)≒0.8(g) です。

なぜこれまでナトリウム量で表示していたのかというと、血圧上昇の原因とされているのがナトリウムであること、食品添加物としてグルタミン酸ナトリウム(うまみ成分)や亜硝酸ナトリウム(ベーコン・ソーセージ・ハム等の発色剤)のように○○ナトリウムの形で食品に含まれていることがあり、食塩表記よりもナトリウム表記の方が正確にあらわされているとされていました。
しかし消費者にとっては食塩摂取量の目標量と比較しやすい食塩相当量の方がわかりやすい、ということで変更になり、ナトリウム表記は昔のものとなってしまいました。
なお、○○ナトリウムを添加していない食品に限り、任意でナトリウムの量も表示することができるとされています。

任意で表示できる栄養素、成分
上記5つ以外で表示できる栄養素もあります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)でも摂取量を控える、もしくは積極的に摂取することが示されている栄養素については推奨表示となっています。
【推奨表示】飽和脂肪酸・食物繊維
【任意表示】ビタミン(13種類)・ミネラル(12種類)・n-3系脂肪酸・n-6系脂肪酸・コレステロール・糖類(単糖類もしくは二糖類)・糖質

また科学的根拠に基づくものは、以下の成分も表示できます。
コラーゲン・ガラクトオリゴ糖・ポリフェノール等

任意の栄養素や成分を書きたい、という商品は何かしら消費者にアピールしたい意図があることが多いです。
健康の維持や増進に役立つという内容の表示ができる食品としてパッケージの工夫をしたり、キャッチフレーズを考えたりすると、その内容に関してまた別の決まりごとがあります。
選ぶ側としては製造販売業者に惑わされたり、イメージしていたものと違ったり、という買い物の失敗を防ぐためにも、その決まりごとも押さえておきたいところです。
次回はその辺りのお話をしたいと思います。

以上、参考になれば嬉しいです。

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≪参考資料≫
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200415_01.pdf
消費者庁/食品表示法

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_201009_4.pdf
消費者庁/食品表示基準

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/130621_gaiyo.pdf
消費者庁/食品表示法の概要

https://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/kyodo_no2_shiryo_2.pdf
農林水産省/第2回食品の表示に関する共同会議 資料

https://www.maff.go.jp/tohoku/6zi_koudou/attach/pdf/190718gaiyou-2.pdf
消費者庁/食品の栄養成分表示について

https://www.dietitian.or.jp/apps_web2/member/download?f=%2Fdata%2Fguide%2Fmember%2F2016-2.pdf
日本栄養士会/健康増進のしおり 2016-2(日本栄養士会員のみ閲覧可能)

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