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【連載小説】新説 桃太郎物語〜第二十三章 (毎週月曜日更新)
【第二十三章 “秘めたる力”の巻】青鬼は桃太郎をじっと見つめていました。
「…桃太郎。お前また覚醒しよったな…。何せお前はあの“赤鬼の力を受け継ぎし者”なのだからな…。」
『…。』
「…だが残念なことに…。今のお前からは力が感じ取れん…。」
『…。』
「…先ほどまでの方が骨がありそうだが…。」
『…。』
「…果たしてそれで私が倒せる……。」
青鬼がそう言っている途中で桃太郎が静かに
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第二十二章 (毎週月曜日更新)
【第二十二章 “真相”の巻】青鬼の攻撃に吹き飛ばされた桃太郎がゆっくりと起き上がると、青鬼は言いました。
「…ほう。やはりお前は他の三人とは訳が違う様だな…。」
立ち上がった桃太郎ですが、足に力が入りません。赤鬼との激闘で力を使ってしまったこともありますが、青鬼の力はそれを差し引いたとしても、今の桃太郎では太刀打ちできない程の強さだと心の中で感じていました。
「…立っているのがやっとの様だな
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第二十一章 (毎週月曜日更新)
【第二十一章 “瞋恚”の巻】桃太郎一行は崩れゆく奇岩城の中を必死で駆け抜け、間一髪脱出に成功し外に出ました。
四人が振り返ると、轟音と共に無残にも崩れゆく漆黒の鬼の巣窟がそこにはありました。
『…やっと…、…やっと終わったな…。』
『…本当に長かったわね…。』
『…そうだな…。』
猿、雉、犬はそれぞれ呟きました。
それぞれが感傷に浸っていたその時、背後から大きな声が聞こえてきました。
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第二十章 (毎週月曜日更新)
【第二十章 “解放”の巻】赤鬼との激闘を終えた桃太郎一行は、ひとしきり喜んだ後、赤鬼の元に向かいました。そして桃太郎は、倒れ虫の息の赤鬼に語りかけました。
『…赤鬼。これで鬼の野望は砕かれた。…僕らの勝ちだっ。』
それを聞いた赤鬼は、答えました。
「…まさか…。ワシを凌駕する者が現れるとは思ってもみなかった…。…ワシも含め、四将軍も打ち果てられた今、…持ち直す事は難しいだろう…。ワシ等の負け
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十九章 (毎週月曜日更新)
【第十九章 “決着”の巻】桃太郎は薄れゆく意識の中で、赤鬼の変化に気が付きました。
そして、先ほどから桃太郎に焦点が合っておらず、なにやら肩越しの奥の方に気を取られていることに気がつきます。
桃太郎はここは好機と見て、自分の喉元の赤鬼の手を両手でしっかりと押さえました。そして、一気に反動をつけると、背中側から大きく一回転しました。
手を押さえられた赤鬼は思わず桃太郎の喉元から手を離してしまい
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第零章 (毎週月曜日更新)
【第零章 “見えざる怪物”の巻】むかしむかしあるところに、人間だけではなく、オニや、半人半動が暮らしている世界がありました。
皆が平和に暮らすために、それぞれの領域を犯さないよう、人間は人間の、オニはオニの、半人半動は半人半動の村を作って生活していました。
そんなある時、心優しきオニの青年が狩に出かけている時に、足を滑らせて崖から落ちてしまいます。
一命は取り留めましたが、気がつくとそこは遥か
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十八章 (毎週月曜日更新)
【第十八章 “死闘”の巻】赤鬼はゆっくりと戦闘態勢を取りました。
それを見た桃太郎も刀を抜くと、静かに構えました。
究極の緊張感が支配するこの状況に、その場にいる誰一人として、声はおろか物音ひとつたてません…。
…、
……、
………、
…………、
……………ぴちゃっ
『…っ?!?!』「…っ?!?!」
岩場の露が落ちた音をきっかけに、桃太郎と赤鬼はお互いに踏み込みましたっ!?!
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十七章 (毎週月曜日更新)
【第十七章 “覚醒”の巻】桃太郎は抱えていた手負いの猿、犬、雉をそっと地面に寝かせました。
『…おっ…、…お前…?』
『…えっ…?』
『…っ……?』
猿、犬、雉は桃太郎の姿を見て驚きました。
「…体から放つ“気”が明らかに変わったな…。」
赤鬼は言いました。
「“気”だけでなく容姿や雰囲気も、先ほどとは異なる…。いったいどういうことだ…。」
それを聞いた桃太郎は、自分の手や腕を見な
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十六章 (毎週月曜日更新)
【第十六章 “赤鬼との決戦”の巻】
紅蓮の洞穴を抜けた先には、真ん中に開けた場所がありました。
桃太郎一行が今入ってきた入り口のちょうど真正面の奥には、数段の階段があり、その先に、それはそれは大きく立派な椅子があり、その周りの壁沿い全てが、下が見えないほどの崖になっていました。また、その椅子の後ろには、それはそれは綺麗な“藤の花”が咲き誇っておりその中央に、古びた“着物”が飾られています。
そ
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十五章 (毎週月曜日更新)
【第十五章 “合流”の巻】
桃太郎が洞穴の奥に進むと、青鬼との戦いの場の半分ほどの大きさの開けた場所に出ました。
そして、またその奥には紅蓮の炎の様に真っ赤な洞穴がぽっかりと口を開けています。
桃太郎があたりを観察していると
『…桃太郎っ!!』
突然後ろから声をかけられました。
『…犬っ?!?!?!無事だったのかっ?!?…っ??…その腕は…。』
桃太郎は犬の左腕を見て言いました。
『…
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十四章 (毎週月曜日更新)
【第十四章 “桃太郎 対 青鬼”の巻】桃太郎と青鬼は激しく戦いました。
青鬼はその指から放たれる“糸”を鞭の様にしならせて、自由自在に操ることにより、桃太郎に襲いかかります。その早さと切れ味は尋常ではなく、大きな岩も一刀両断するほどの鋭さでした。
しかし桃太郎も宮本武蔵との修行によってかなり腕を上げています。
「…ほう…。」
峠の村では青鬼の攻撃すら見えなかった桃太郎ですが、今はしっかりと
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十三章 (毎週月曜日更新)
【第十三章 “犬 対 黒鬼”の巻】犬と黒鬼は激しく戦いました。
黒鬼はその手に持つ“琵琶”をかき鳴らすことにより、空気中に真空波を巻き起こし、その空気の刃で攻撃を繰り出してきます。その鋭さは尋常ではなく、少し触れただけでも真っ二つになるほどの切れ味でした。
『…これで…。この刃で子イヌは…。』
犬は黒鬼の攻撃を見て全てに合点がいきました。この黒鬼こそが“子イヌの仇”なのだと。
『…お前…、
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十二章 (毎週月曜日更新)
雉と緑鬼は激しく戦いました。
緑鬼は両の手にある“目”の術により、数多く置かれた鏡の中を行き来しながら、腕に付けた鉤爪で攻撃を繰り出して来ます。鏡はざっと数えても百はあり、緑鬼がどこから出て来て、どこに消えていくのか見当をつけるのも難しい状況でした。
しかし、雉は半人半鳥の国で学んだ鳥の能力の一つでもある、視野の広さを遺憾なく発揮し、次々に緑鬼の攻撃を避け続けるのでした。
「…ほほう…。王女
【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十一章 (毎週月曜日更新)
猿と黄鬼は激しく戦いました。
黄鬼は両の手に持つ、五寸(10cm)程の大きさの、特殊な手毬を投げて攻撃を繰り出して来ました。そうです、ボスザルは猿村で、北の山から放たれた黄鬼のこの手毬の攻撃によって命を落としたのです。
その速さは尋常ではなく、常人の目では到底追えるものではありません。
しかし、猿は忍者の郷での厳しい修行によって相当な身軽さを得ています。その攻撃を軽々と避け続けるのでした。