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ディズニープラスは今すぐタイトルを原題に戻して!!「The Bear」(邦題:「一流シェフのファミリーレストラン」)は昨年観てたらベストだったかも!


年明けにこのドラマを観終わりました。

「The Bear」(邦題:「一流シェフのファミリーレストラン」)

あらすじ等はこちら

昨年からディズニープラスで配信されているドラマです。海外では6月に配信開始したみたいです。

このドラマ、昨年の12月過ぎあたりから海外の各エンタメメディアの年間ベストドラマシリーズ系の記事で軒並みピックアップされていたので、

私も気になってインスタで「気になるな~」みたいな事をストーリーズでアップしたら、フォローして頂いている方からも「面白いからオススメ!」とコメント頂きまして、年始に観てみることにしました。

で、これが私的にめちゃくちゃ良かったドラマでタイトルにも書きましたが、

もし昨年観ていたら昨年のベストだったかもと思います。で、もしかすると今年のベストかもしれません。

それくらい良いドラマでしたので、ぜひここで全力でレビューさせてください!!そして、この作品を観た人なら絶対感じると思うのですが邦題がひどすぎますので(笑)、ディズニープラスは直ちにさっくりと題名を原題の「The Bear」に戻すように訴えたいです。

というわけで、早速レビューしていきます!

※ここから先はちょっとネタバレ部分もありますので、あんまり話の筋を知りたくない方はご注意ください。

※このドラマにはパワハラのシーンがあります。鑑賞にはご注意ください。

( 作品内のシカゴサンドイッチの作り方動画あった。ファク〜(笑))

このドラマは1話30分で全8話。ドラマシリーズとしては結構短めです。一気に配信されていますし、とても観やすいと思います。なので、私も気になったら「年末年始に観ようっと」と気軽にチョイスすることができました。


この物語は

主人公シェフであるカーミーが、アメリカ・シカゴにあるサンドイッチ屋「the BEEF」で奮闘する話です。なので、メインの舞台はその店の厨房。店自体も決しておしゃれでも上品でもなく、昔からあるようなアメリカの下町感があるような造りで料理で集客するというよりも昔ながらの客が通う店。1話では店に置いてある古いゲーム機でオタク(とドラマ内で言い放つ)相手に「ゲーム大会をする」とSNSで宣伝して集客するような感じ。

その店はカーミーの父が始めた店で兄のマイケルが引き継いで親友のリッチーと経営していましたが、ある日マイケルが亡くなってしまいます。そこで弟のカーミーが今度は引き継ぐことに。カーミーは元は一流レストランで上位で働くような才能のあるシェフ。そんな彼がリッチーと対立したり、昔ながらの厨房のスタッフと対峙しながらもなんとか店を立て直そうとする中で、

一人の女性、シドニーがこの店で働きたいと入ってきます。彼女はCIA(「スパイの方じゃないよ」とドラマでもよく言われる笑)という一流料理大学で学んできたシェフ。カーミーは「この店にはふさわしくない経歴」と言いますが、シドニーは「あなたもでしょ。」と。一緒に働くことになったカーミーとシドニー。二人でこの店を立てなおせるか。そこが話の大きな流れです。

では、このドラマが私に刺さったポイントを書いていきますね。

映像のこだわりと厨房のリアルと躍動感の表現

このドラマ、まず映像の質感が抜群に好きで、少し陰影のあるような味のある感じが漂います。「結構こだわりがあるんじゃないかな」とちょっと感じました。クリアな映像というより、ちょっとベージュとか黄味がかったような温かみがあるようにも見えるのが「面白いな」と。「綺麗」とはまた違う効果を狙ってるような。

どの町にもあるような昔ながらの小さな飲食店の厨房で起きる出来事をリアルに表現するところがこのドラマの大きな魅力の一つです。
そういう店の忙しい厨房の様子は必見。厨房は汚いわ、店内ではFワード連発だわ、なんか常に店の何かが壊れてるわ、全員がバッタバタだわで混沌とした雰囲気。
そのバタバタや忙しさがうまく回ると快感だし、うまくいかないととてつもない重圧になる。そのある種の興奮と過酷さ、職業ならではの仕事ぶりを見ることの面白さ。そこをこだわって映していて、映像と演出共にとてもキレがいいところが良かったです。
カメラワークなどが小気味よくて、厨房の忙しさと同じくらいせわしないですが、ズームや切り替えを上手く使って見せています。ここを気に入るかどうかは結構この作品が好きになるかどうかの分かれ目かもしれません。

あんまり料理はじっくりそこまで映さずに食べてる人の顔もほぼない。料理自体よりも、その人間模様やその仕事場でしか味わえない緊張感やプレッシャー、喜びがあって、少なくともこのシーズンではメインは料理よりも厨房にある感じでした。

30分1話物なので、どの人物のどのシーンを見せることで、効果的にキャラクターやその状況を伝えるかが凄く重要だと思うんですけど、このドラマでは「十分魅力が伝わる映し方だな」と思います。特に7話は大胆にもほぼ1話まるまる厨房での1カメ長回し!こういう作品が好きな人にはたまらないですよね。

この作品を観ながら、厨房を舞台にした映画「ディナーラッシュ」や「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」を思い出しました。下敷きにしている部分もあるかもしれません。

職場の人間ドラマとしての面白さ

厨房のリアルな様子に直結して面白いのが、職場ドラマとしての働いている人たちの人間模様やキャラクターの面白さ。さっきも書いたんですけど、短い作品の時間の中でその職場に勤めている人間模様を描くのが「本当に上手いな」と。
主人公のカーミーやシドニーはもちろん、

なーんにもできないのにF●ckワード連発で偉そうなマネージャーのリッチーや、

パン担当からデザート担当になったマーカスは向上心もあって真面目だけど自分のこだわりが強いゆえに仕事の波に乗れない性格、

ベテランおばちゃんできちんと勉強してきたシドニーが入ることが気に入らないティナ(シドニーとのとあるシーンは必見!)、

私が結構好きなのがおとぼけ修理屋のファク。ファクみたいな人、こういうドラマに必要なキャラなんです。

キャラクターの配置や、そのキャラたちが動くことでドラマが回っていくあたりも厨房の様子との相乗効果で面白くて。こういうところは

医療系ですが大好きだったドラマ「ER」を思い出す感じでした。職場の人間ドラマってやっぱり面白いし、世界に入れると感情移入しやすくて。

どの職場にも共通するような人間関係の流れや、仕事をこなしていく上でのチームワークや、付き合い方。忙しい時の厨房はカオスもいいところなので、その中でどうやってやりくりしていくか。少なくともシーズン1ではほとんどやりくりできないんですけど(笑)。そこをカーミーを中心にどうやってこれからこの仲間たちと仕事をしていくのかもとても面白い見どころです。

カーミーはアルコール依存症を抱えていますが、実は亡くなった兄もドラッグの依存症を抱えていたことを知ります。こういう過酷な職業で主人公が依存症を抱えているドラマで

私はこの「ナース・ジャッキー」を思い出しました。これは病院の救急医療のナースが主人公なんですけど、イーディー・ファルコが演じてて、優秀なナースだけどやっぱりドラッグ中毒。コメディとして描かれてましたけど、職業上のストレスがいかに人にダメージを与えるか。この「the Bear」でも一緒だと思いました。

主人公カーミーの描き方とジェレミー・アレン・ホワイトの素晴らしい演技

本当は真っ先に触れるべきなのかもしれないですが、あえて溜めてここで書くのが、主人公カーミーの描き方と、演じるジェレミー・アレン・ホワイトの演技。これがもうめちゃくちゃいいんですよね!

カーミーは頑張ってはいるんだけどとにかく厨房で空回りしていて、性格もどこか影があって陰鬱な雰囲気の役。このドラマの始まりは熊と向き合って襲われる悪夢を見てるカーミーの姿から始まるんですけど、そんな彼の背景や想いが分かってくるところ、そしてそのカーミーを演じるジェレミー・アレン・ホワイトの演技がこのドラマの成功の大きなカギです。

凄く才能があるけど一流シェフで働いていた職場の重圧から挫折して店を辞め、アルコール依存症に。愛していたが疎遠にしていた兄に先立たれ、姉とも少しすれ違っている。どん底の彼が兄の遺した店で奮闘していく。
自分自身の内面に問題を抱えながらも、職場では清掃を怠らずに、店の仲間にはお互いを敬意をもって「シェフ」と呼び合うことを提案したり、彼なりにいい職場にしようと努力していきます。けど忙しすぎる時はブチ切れて人に最悪な態度も。
そんな彼に少しずつ感情移入していくところもこのドラマの大きな主題です。

ジェレミー・アレン・ホワイトってあんまり観た記憶が無かったんですけど、後で気づいたら「シェイムレス」に出てたあのカッコいい優等生の子でした。「シェイムレス」ちょっとしか観てなかったのですっかり忘れてた(笑)。「それでシカゴか」と。でも全然忘れてたおかげで、カーミーとして集中して観れたんですけど、彼がめちゃくちゃ当たり役というか凄くいい演技です。

1話を観た時から「あ、当たり役」と思いました。ドラマ自体が面白いのは1話からもう分かるんですけど、やっぱりこの主人公のカーミーの苦悩とそこを何とか踏ん張るところが大事なので。この役は苦しみにもがく役でもあるので大変だと思うのですが、ジェレミーの演技は絶妙で、演出ともとても合っていると思いました。(8話の演技、めっちゃ泣けるのよ)

インスタでミーム動画を見かけて私も「あー!同じこと思ってる人がいた!」と嬉しかったんですけど、この当たり役感って

個人的には「ブレイキング・バッド」のジェシーやってたアーロン・ポールにとても近くて。ジェシーも最初から「あ、ほんとピンクマンて顔してるな」って思ったんです(笑)。ほんと何年かに1回、こういう「この役やるために生まれてきたみたいな」みたいな事って長年ドラマ観てるとあって。

その後の役者キャリア的に良いことかは、必ずしもそうとは言えないかもですし(当たり役過ぎてなかなかそこからイメージ抜け出せないなど)、ジェレミーはまだドラマが始まったばかりなので分かりませんけど。少なくともシーズン1は「彼無くしてこのドラマの成功はないな」って感じでした。

ここのところ始まった賞レースでも、作品賞と共にノミネートされているのは主演のジェレミー。そして、すでに主演賞はいくつかとっています。ただ一つだけ言いたいことがあるので、それはまた後ほどに。

あと、シドニー役のAyo Edebiriも押しと引きの演技がとても上手くて役にあってると思いました。彼女も今後の展開でもっと演技面で前に出てくると思います。楽しみです。

リッチー役のエボン・モス・バクラックはちょこちょこ映画や海外ドラマで見かけてましたけど、最近では「ドロップアウト」でセラノスのエリザベスの暴露記事を担当するWSJの記者役で見たばかりだったので「人気なんだな~」と。彼の演じるリッチーも観ててイラつくギリギリの一歩手前で人間味があるところが見れたりといい味出してます。

また厨房の外のキャラクターでは、カーミーの叔父で兄マイケルに多額の金を貸していたジミーをオリバー・プラットが演じています。オリバーって先に書いた映画「シェフ〜」に辛口の料理レビュアーで確か出てて。こういう作品に縁があるんですかね(笑)。

そして、亡くなってしまう兄マイケル役を演じるのは、、、。ネタバレしちゃうとあんまりよくないと思うので、ぜひ観てみてください。ドラマ・映画ファンなら「あ!」って感じだと思います。この兄がどんな人だったかを見せる回想シーンはそれだけで胸がグッときました。

シカゴにちなんだアーティストをはじめとした音楽の使い方

このドラマで私が気にっている大きな特徴の一つが音楽です。

ここにYouTubeのプレイリストを挙げておきますけど、まず厨房での奮闘のシーンでは

このRefusedというハードコアバンドの音楽を使ったり、


The Budos Bandというインストバンドの音楽だったりを使っての演出が音楽好きには結構刺さってしまい。緊張感と勢いが厨房の雰囲気と相まってほんといいんですよね~!

そこにSerengetiというヒップホップアーティストのクールなジャズ寄りのヒップホップが入ってきて、またこれが凄くカッコいい!私は知らなかったアーティストなのですが。

Pearl Jam、R.EM、LCD Soundsystemといった90s系のロックの使い方も小気味よくて、好きな者からしたらたまんないですね(笑)。個人的に音楽の使い方でこのドラマがかなり好きになったところが大きいです。

7話はこのドラマでも特筆すべき1エピソードカメラ長回しという大事な回ですが、そこに

「シカゴと言えば」のインディーアーティスト、Sufjan Stevensのズバリ「Cicago」が地元ラジオ局からかかる朝から始まって

紆余曲折あってめちゃくちゃになった厨房でWilcoの「SPIDERS (KIDSMOKE)」が流れて終わるという。この2曲だけ。音楽の使い方でもシカゴ愛がビシビシ伝わって。結構このあたりはもうグッときちゃいました。

そして8話のラストの奇跡のシーンに使われるあのバンドのあの曲。もう私号泣しながら観てました(笑)。ロック好きの方は良かったら観てみてくださいね。

このドラマ、制作にはクリストファー・ストーラーという名前が。プロデューサー、原案、監督も務めています。こんなにこのドラマが面白いので名前をすぐさま検索したら

ボー・バーナムの過去作品のプロデュースをしてるみたいで。「INSIDE」は違うみたいですが。またJosh Seniorというボーの作品のプロデューサーが「The Bear」でも同じく制作に名を連ねています。

またクレジットを見るとエグゼクティブ・プロデューサーにヒロ・ムライの名前もありました。監督はしてないみたいですが、彼の制作会社が参加してるみたいです。映像の質感やキレがいいのは関連がありそうです。ヒロ・ムライと言えばドナルド・グローヴァ―ってイメージですけど。「アトランタ」も地元ドラマと言えば地元ドラマだったし。そういうのが好きなのかな?

原題に戻して欲しい問題

で、このnoteのタイトルにも書いたし、他のこのドラマのレビュー書いてる人も一緒だし、映画評論家の町山さんも怒ってたけど(笑)。

邦題が超テキトー

だってこの「the bear」ってタイトル、今シーズンのラストまで観てたら凄い大切なタイトルだって分かるのに!なので次シーズンが始まるまでにサクっとタイトル戻してもらいたいです。1シーズンならまだ無かったことにできるかもしれないから大丈夫です!(笑)「サクセッション」も「メディア王」とかよく分かんない邦題がついちゃって二足のわらじみたいになってたけど。(観てないけど笑)。

リッチーがとある副業に手を出してて、カーミーにそれがバレての言い訳が「コロナ中にどうやってこの店が生き残ったと思ってんだ」と。何気ないセリフですけど、コロナ禍で私の住む街や職場の周りですら、たくさんの飲食店が閉店しました。しかも大体が地元系の個人や家族でやっているような店が多め。そういう意味でも思い入れを持ってみることができるドラマでした。

また家族の喪失、仕事への挫折、依存症、、、。困難を抱える主人公が、亡き兄の遺した店の仕事を通して再生していくような物語はどこか懐かしくて、私が昔親しんできた海外ドラマを思い出しながら、どっぷり浸ることができました。演出面や映像は今っぽくて新しい感覚ですが、描きたいことは重い事もあるけどしっかりしています。

このドラマは賞レースでは「コメディ」扱いなのですが、クスッとできるエピソードは確かにありますし大げさなドラマがあるシリアスな内容でないですが、私にとってはコメディではなくて。ジェレミーの演技も笑わせるという要素は感じないのでコメディ部門での受賞はちょっと解せない感じもしますけど、受賞できるならま、いっか(笑)

市井の懸命に生きている人間を描いたドラマとしても、厨房をリアルかつ丁寧にそして魅力的に描く職業ドラマとしても、カーミーを演じるジェレミーをはじめとした演技面でも、「次はどんな音楽使ってくるのかな」という音楽ドラマとしてもとても楽しみなドラマです♪

気になった方はぜひ観てみてください!オススメです!!


おまけ

このシーンね、私も観ててこうなったな(笑)

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