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選ばれる都道府県(東日本)

総務省が1月30日に2022年の住民基本台帳人口移動報告を発表しました。このことについて、西日本で、人口の転入が転出を上回る転入超過となった3府県を、選ばれる都道府県(西日本)で取り上げました。

今回は、その東日本版です。東日本で、人口減少が進む中でも転入増となっている都道府県が7都県あります。

このうち、一極集中が進む東京都と、東京都に接している4県(千葉県、神奈川県、埼玉県、山梨県)は、別の機会にnoteを書こうと思いますので、東京都に接していないのもかかわらず、転入超過となった残りの3県について、今回は掘り下げていきたいと思います。

1 選ばれる自治体①(宮城県)

宮城県は637人の転入超過です。2021年は728人の減少となっていたので、大体、転入と転出が逆転した形となっています。宮城県が転入超過となったのは7年ぶりのことらしく、北海道・東北地方で唯一の転入超過となりました。

この理由について、宮城県は以下の点が要因と分析しています。
・テレワークの浸透などによって、他県から仙台圏に移住する人が増えたこと
・大学卒業後に県内で就職する人が増えていること
参考:宮城県の人口は7年ぶりに「転入超過」|NHK 宮城のニュース

他県から仙台圏へ移住をしている人が増えたのは確かなようです。県庁所在地である仙台市の約3千人を中心に人口が伸びています。仙台市とその周辺市町は、継続する人口減少に対応しようと、仙塩広域都市計画を策定し、人口の受け皿を整えようとしています。

「仙塩広域都市計画」:AIチャットより
「仙塩広域都市計画」とは、宮城県内の11市町村が協力して、地域全体の発展を図るために策定した都市計画です。この計画により、地域の交通網や公共施設などが整備され、地域全体の発展が促進されることが期待されています。

この計画に基づいて、410ヘクタールの土地の市街化を進めており、移住してきた方々が住む場所の確保に取り組んでいます。

また、もともと仙台市と名取市をはじめとした周辺地域は、交通の便の良い土地です。東京駅から仙台駅までは、車だと4時間以上かかりますが、新幹線であれば1時間半ほどと、距離のわりに、移動にかかる所要時間長くありません。

また、名取市にある仙台空港は、3年ぶりにチャーター便を運航したソウルを始め、宮城県と国内外の多くの都市を結ぶ国際空港です。

交通の利便性とテレワークの浸透を活用して、東京勤務となったけれども宮城に居を構えたまま、勤務するといったすたいるのひともいたのではないでしょうか。(私も、首都圏勤務になったにもかかわらず、宮城から引っ越しをせずに、そのまま通勤している友人がいます。)

加えて、宮城県内には旧帝大の一つである東北大学もあり、文学部、教育学部、医学部、薬学部まであり、東北地方の学生のみならず関東圏でも志願している学生が多くいます。

また、県内に東北電力やアイリスオーヤマなど、時価総額の大きい企業が本社を置いていたり、大学病院があることもあって、卒業後も県内にとどまる学生が多くいるようです。
参考:主要国立大「就職先企業・団体」ランキング2021!【全20位・完全版】 | 親と子のための大学研究2023 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

この項目の初めに、宮城県が分析していたように、テレワークの浸透もあって、行政も率先して移住者を積極的に受け入れようとしていること、東京圏に行ってしまいそうな学生や若い世代が著名な企業や大学があるために県内に卒業後もとどまることが、転入超過の要因であるように思います。

2 選ばれる自治体②(長野県)

長野県は、7年ぶり宮城県を超える平成12年以来の22年ぶりの転入超過となったそうです。テレワークの浸透に加えて、子育て世帯の移住が増えていると、長野県は分析しています。
移住者増などで22年ぶり「転入超過」 県の人口異動調査|NHK 長野県のニュース

長野県は、長野新幹線や北陸新幹線の停車駅もあり、関東地方からのアクセスが良好なことに加え、「特急しなの」や「特急あずさ」によって、新幹線を使わずとも大都市圏に数時間で行ける交通の利便性が魅力です。

個人的な感覚かもしれませんが、行こうと思えば、2時間程度で東京に出られるちょうどいい距離感なのではないかと思います。

そうした自然豊かで大都市が近いという点が評価されてか、宝島社が発行している月刊誌「田舎暮らしの本」で、長野県は「移住したい都道府県」ランキング1位を17年連続でキープしています。

また、長野県も長年支持されていることに胡坐をかかず、移住にあたって懸念となる仕事や住まい、そして様々な支援制度が網羅的にわかるポータルサイトを開設し、積極的に人を呼び込んでいます。
参考:ふるさとに逢える 楽園信州 心が澄む・信州に住む | 長野県の移住ポータルサイト - ふるさとに逢える 楽園信州 心が澄む・信州に住む | 長野県の移住ポータルサイト (rakuen-shinsyu.jp)

上記のポータルサイトでは、特に、どの市町村でどのような支援が受けられるのか、就職なのか住宅購入なのか、市町村ごとやカテゴリーごとで簡便に検索できるため、非常に調べやすいつくりとなっています。

また教育面での特色も見逃せません。軽井沢町に2020年に設立した全国でも珍しい幼少中一貫校の軽井沢風越学園は、子育て世帯を呼び込んでいます。
参考:23区民が引越した「非」大都市トップ10ランキング | 街・住まい | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

大切にしたいこととして、「私たちは、講義中心の一斉授業・画一的なカリキュラム・固定的な学級編成等に代表されるような従来型の学校教育に限界を感じている一方で、子ども自身と公教育の可能性を信じています。」とあるように、学年などの垣根を越えた環境で、一人ひとりに合わせたカリキュラムによって子どもたちが学ぶことができます。大切にしたいこと | 学園のこと | 軽井沢風越学園 (kazakoshi.ed.jp)

軽井沢町への移住の内訳をみてみると、0-9歳の割合が多いことから、新設された特色ある幼少中一貫校がきっかけとなったという声もあるようです。

こうした都市圏へのアクセスの良さ、自然豊かな環境、移住支援の充実、教育環境の進展などから、長野県に魅力を感じたことで、転入超過となったのかもしれません。

3 選ばれる自治体③(茨城県)

以前に、選ばれる自治体でも、つくば市について、つくばエクスプレスなどの交通の利便性などから、人口流入が進んでいるということをnoteにしましたが、茨城県自体が、今勢いがある県だと思います。

つくば市は、0歳から4歳の流入数が、昨年は766人で、全国第3位となっています。4歳以下の子が一人で移住するとは考えづらいので、ほとんどは、子どもが生まれてすぐに、家族でつくば市へと移住していると想像できます。

比較的若い年代のファミリー層が、つくば市を選択している理由は、東京の会社勤めであるが、住宅購入を考えたとき、都心から少し離れた子育てしやすい環境でと考えたのではないかと思われます。
参考:0~14歳の転入超過が多い街、1位はさいたま市! 子育てファミリーは都心から郊外へ - ライブドアニュース (livedoor.com)

つくばエクスプレスの開業は、つくば市のみならず、近隣の市町にも大きな好影響をもたらしています。その中でも、この時世で、人口増加によって町から市への移行を目指している阿見町は特筆に値すると思います。

●●町や○○市などの使い分けがありますが、町よりも市の方が規模が大きいとされています。その中で市制移行(町から市へ)の要件の一つに、人口が5万人以上いることが必要とされています。

阿見町は、平成の初期までは住宅団地の開発や土地区画整理事業で人口が急増していましたが、平成7年以降は微増か横ばい傾向にありました。
阿見町の人口・世帯等の推移 | 茨城県阿見町ホームページ (ami.lg.jp)

しかし、18歳以下の所得制限なしの医療費助成、保護者の子育てと就労の両立を大いに助ける病児保育事業の充実、オンライン教育の普及など、子育て施策に重点的に取り組んだこともあってか、数年は人口が増加に転じて、3月1日現在で、人口は4万9743人と市制移行を望める数値まで来ています。

人口の減少により、市の存続が危ぶまれているといったことはあっても、人口が増加し続けて、町から市へと移行するといったニュースは、聞き覚えがありません。

やはり近年では、なかなか珍しいことであるらしく、地元で、いつ5万人を超えるのか、達成日を当てるクイズを町が出題しているらしく、多数の応募もあるようです。
【茨城新聞】人口5万人いつ? 茨城・阿見町がクイズ 市制施行見据え (ibarakinews.jp)

交通網の利便性を生かし、子育て施策を充実させて若い人を呼び込んでいることに加えて、人口のみならず、企業の本社も茨城へと移動する動きもあるようです。

帝国データバンク(TDB)がまとめた2022年の「首都圏・本社移転動向調査」によると、首都圏からの移転先として最多だったのは茨城県の34社と、首都圏から本社を移転させた335社のおよそ1割を占めており、企業にも選ばれる県になっています。
過去20年で最大規模の転出超過、企業の「脱首都圏」が広がり始めた|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 (newswitch.jp)

働く人、子育て世帯に選ばれる傾向の強い茨城県は、人口超過となるのも自然と言ってよいのかもしれません。

4 まとめ

転入超過となった宮城県、長野県、茨城県は、総じて都市圏からのアクセスを強みにしつつも、子育て施策の充実や自然の魅力など、自治体独自施策を行いながら人を呼び込もうと努力しています。

国や東京都に頼りすぎず、これからの時代をどう生きていくか、模索している姿は、同じ行政職員として感銘を受けました。転入超過となっている県の良いところをしっかりと学んで、自治体に反映できるところがないか考えていきたいです。

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