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今は不景気なのか

景気の悪いニュースが最近よく目に止まります。
長引く物価高で「生活防衛の意識高まっている」…23年度の消費支出、10項目すべて減少 (msn.com)
日本人の半数以上「生活が苦しい」…「日本人の所得・200万円台が最多」の〈キツい実態〉 (msn.com)

確かに、スーパーに行っても色々なモノの値段が上がっており、近年ではない光景が続いています。ただ個人的には、そこまで節制しないほど、生活が苦しくなっている印象はないので、冒頭のようなニュースが続いていることに違和感があります。

自分の実感と普段聞くニュースの悲壮感との間に差異を感じたため、今回は、現在は本当に不景気なのか、自分なりに調べてみようと思います。

1 今が不景気なのか考えてみる

今の日本は景気がいいかどうかを比べるのに、分かりやすいのは他国と比べて景気が良いか悪いかです。国ごとに色々な指標がありますが、IMF(国際通貨基金)が、各国の実質GDPの見通しを表にしてまとめてくれています。

実質GDPは、国内で生産されたモノやサービスの付加価値を表す国内総生産のうち物価の変動による影響を取り除いたものです。ある国のモノの値段が急に倍になっても経済規模が倍になるわけではないためです。
参考:実質GDP│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券 (smbcnikko.co.jp)

その実質GDPで見る、IMFの世界経済の見通しにおいて、2023年の日本はG7の中で、アメリカに次ぐ第2位であり、2024年においてもアメリカ、カナダに次ぐ第3位です。悪くない位置にいるように思います。

国内の指標で見ても、そんなに悪い数値はなさそうです。日本企業の業績や状況を示す日銀短観も記事の表題では悪化と出ていますが、数値は全産業でプラス12です。
短観(要旨)(2024年3月) : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)
日銀短観、景況感4期ぶり悪化 不正問題による車生産停止が響く (msn.com)

もともと短観は、「1.良い」と回答した社数構成比から、「3.悪い」の社数構成比を引いて算出することになっており、「良い」と回答した企業の割合が12%ポイント多いことになります。

記事中にも書いてある通り、景況感が悪化した大きな要因は自動車グループで相次いだ認証不正問題による生産停止であり、すでに生産は再開されていることから、次の統計にも期待が持てそうな内容です。
景気動向一致指数、3月は前月比2.4ポイント改善 自動車の生産再開で (msn.com)

よく見る経済の指標の上では、言われるほど景気は悪くなさそうに思えるのに、生活が良くならないという雰囲気が漂うのは、実質賃金のマイナスが続いているからでしょう。
実質賃金減少、過去最長に 24カ月連続、2.5%減―3月:時事ドットコム (jiji.com)

実質賃金は、実質GDPと同様に、サラリーマン等が受け取る賃金の上昇率から、物価の影響を取り除いたものです。実質賃金がマイナスということは、物価の上昇に給料の上昇が追い付いていないことになります。

今、日本の物価上昇率は2.7%です。ここ一年はずっと3%前半から2%後半が続いており、以前に目標としていた2%の物価安定目標を超えています。日銀の物価の展望でも「2024 年度に2% 台後半となったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移する」とされており、当分この流れは続きそうです。

2 賃金は物価に追いつけないのか

物価の2~3%の上昇が続くとすると、給料がそれ以上に上がらなければ、実質賃金がプラスになることはありません。もう2年以上もマイナスが続いていることから、悲観的になるのもその通りだと思います。

ただ、賃上げについて希望はありそうです。

人手不足によるものなのか、大企業だけでなく、中小企業にも賃上げの機運が高まっているようです。労働関係団体のナショナルセンターである連合の集計によれば、賃上げの平均は最新の集計で5.17%で、中小企業に限定しても4.66%です。歴史的な高水準という見方も出ています。
参考:2024 春季生活闘争の第 5 回回答集計press_no5.pdf (jtuc-rengo.or.jp)

①価格をあげたモノが売れる→②会社が儲かる→③従業員の賃金に反映される→④従業員が価格の上がったモノを買う→④また会社が儲かる→⑤賃金が更に上がる
雑な流れですが、これが賃金と物価の好循環なのでしょう。

見方によっては、今②から③に移行しようとしていると思えなくもありません。給料が順調に増えている人も大勢いるかもしれませんが、そういう人は声を大にしては言わないでしょう。

公務員は2%のインフレだと、影響を感じにくい状況にあります。良くも悪くも定期的に給料が緩やかに上昇するため、2%のインフレをそのまま受け止めて消化するような感じです。

自分で言うのもなんですが、景気がいい時は恩恵を受けにくく、景気が悪い時はうらやましがられる職業です。

そういう意味では、公務員以外の友人・知人から、「公務員は良いよな」という話は最近全くと言っていいほど聞かないので、今は少なくとも自分の周りでは不景気ではなさそうです。

そうはいっても、全体的なモノの値段は上がっていますし、円安の傾向も続いているので、輸入物価を中心に高騰し、家計にダメージがあるのもその通りだと思います。

こういった時に、倹約や節制といった流れに行きがちですが、あまりお勧めしません。保険の見直しや携帯プランなどのサブスクリプションの再考といったものは賛成ですが、食事のグレードを落とすことや、安売りしている店を探すことを徹底するとストレスもたまります。

今は新NISAもありますし、できる範囲で投資に目を向けて購買力を落とさないようにするのも一計です。外貨ヘッジのない、手数料の安い投資信託に積み立てておけば、この先、さらに円安が続いたとしても、日本における購買力は一定以上に保つことができます。

こうした個人のできる範囲で、物価高騰に負けない買う力を保ちつつ、場合によっては転職も視野に入れて給料アップを狙うなど、稼ぐ力をつけていくことも大事です。

いずれにしても、報道等にあるような不景気を自分に当てはめて不景気なのだと思い込みすぎないほうが良いでしょう。景気は「気」であるため、自分がどう思うかが大事なのかもしれません。

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