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「経済評論家の父から息子への手紙」を読んで

本年1月1日に経済評論家の山崎元さんがお亡くなりになられました。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

山崎元さんは、私のお金に対する考え方を変えてくれた方です。実際にお会いしたことはありませんが、今の自分が、将来のお金に関することについて、それほど不安になることなく日々を過ごしていられるのは、山崎さんの著書のおかげによるところが大きいと思います。

そのため、正月早々の訃報を目にしたときは、にわかに信じられず、もうあの快活な文章やスパッとしたお金や仕事に対する考え方に触れることはできないのかと大変ショックでした。

今回、読み終えた「経済評論家の父から息子への手紙」は、山崎さん最後の書き下ろしであり、大学生に最近なられた自分の息子さんあてに記したお金と人生と仕事に関するメッセージです。

今までの山崎さんの数々の著書の大事な要素をまとめたような、そして、人生における幸福とは?という問いに対する山崎さんの結論をまとめたような本でした。

この本を読み終えたら、今までの山崎さんの本の感想を織り交ぜつつ、必ずnoteに読書感想文としてあげようと、勝手ながら思いましたので、以下に記したいと思います。

1 昭和的な働き方は割に合わない

昭和的な働き方は、学歴を高めて大企業に就職し、順調に出世して労働力を長く高く売るというものです。この本では、こうした働き方を否定し、起業をするなど新たな働き方をすべきだと説いています。

正直なところ、私にもこの感覚はしみついていると思います。自分自身の職業が公務員ですし、まさに、長く勤めて出世し定年まで安定した給料を得ることを目的とする、ザ・昭和な働き方でしょう。

就職をしたときがリーマンショックの真っただ中であったことから、クビになるということが、とんでもないリスクのように思えて、入庁して数年は会社を辞めるということが想像もできませんでした。

ただ、この本で述べられている通り、クビというのは、そこまで大きなリスクではもはやありません。有効求人倍率を見るまでもなく、様々な業種で人手不足が続いていますし、求職側は選ぶ側へと回ることができる環境です。

また、サラリーマンとしてただ雇われるよりも、自分がやりたいことをやるならば起業という選択肢もあります。起業をして、株式公開までたどり着くことができれば、20代にしてサラリーマンの生涯年収を大きく超える金額を手にすることもできます。

大企業に勤めることが必ず正しいというのは、もはや古い価値観なのでしょう。この本では株式制の報酬の魅力を考慮すると、今や1円でも会社を立ち上げることができる時代なのだから、ただぼんやりとサラリーマンをやっていることは割に合わないと説きます。

昔とはリスクに対する考え方が変わっている。これは、自分が就職相談などでアドバイスをすることになった時にも、役に立つ考え方です。

「自分の時代とは違うのだ」と常に頭に入れておかなければいけないことだと思いました。

2 お金の運用はインデックスファンドに

山崎さんの本はお金や投資に関することが中心ですが、昔から言っていることは変わりません。最低限の生活費は残したうえで、全世界対象のインデックスファンドにひたすら積み立てておけばよい。本当にシンプルです。

ただ、この10年間だけでもコロナが流行り、戦争も続いています。世界情勢や経済も様変わりする中で、言っていることが変わらないというのは凄いことだと思うのです。

2016年に山崎さんの本を読み始めてから、言っていることはほとんど変わっていません。手数料の安いインデックスファンドに積み立てればよい、これでお金の運用に関することは説明が済んでしまうようです。

個人的な実績としても、10年近くインデックスファンドに積み立てていますが、運用実績において、他のアクティブファンドを買っていたとしても、これだけの結果を残せるものはほぼないのではないかと思います。

なぜ、インデックスファンドが優位なのかも、この本に、いくつかの理由がしっかりと書いてあります。その中で、私が印象に残ったのは「経済は適度なリスクを取る者にとって有利にできている」というものです。

投資は、「働かないでお金を得る行為」としてネガティブに捉えられることが往々にしてあります。最近でも、株価が史上最高値を更新したにもかかわらず、報道も好感していないように思えます。
またも史上最高値を更新した株価 働く者に恩恵が薄いのは「企業の利益分配のゆがみ」 (msn.com)

リスクを極端に恐れる場合、お金の置き所は預金か債券になります。元本割れをしない商品です。しかし、これはリターンを取ることを諦めることと同義です。

世界は少しずつですが成長しています。株式投資で得られるプレミアムは、この本の想定だと5%です。誰かが無リスク資産に突っ込んで諦めた5%を多少のリスクを負いながら、投資を行うことで自分が得ることができます。

ただデメリットはあります。すぐにお金持ちになることはできません。山崎さんも「チキンな選択肢」であると述べています。オーナー社長に比べて退屈であるし、経済力を作るのに時間がかかります。

ただ自分にとっては、それで良いのだと思えました。自分にとっての適度なリスクは、失敗して全資産の1/3を失うくらいなのでしょう。それ以上を超えてしまえば、日常生活において精神のバランスを保つのが難しそうです。

インデックスファンドの長期投資は、凡人がプロのファンドマネージャーにも勝てるお金に働いてもらう術です。ほどほどのリスクを取って「お金の運用は手数料の安いインデックスファンドに」8年前から学んだことを今後も続けていきます。

3 最後に

私は結婚するまでは、どちらかというとお金には無頓着であったと思います。保険は友人の勧めで入り、お金は定期預金に入れて、学生時代に株で数万円の損をしたことから投資にも縁遠い、そんな、どこにでもいる公務員でした。

結婚を機に、「これからいくら必要になるのか学ばなければ!」と一念発起して、お金にまつわる本を買い始めて、本当の初期に手に取った書籍が「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」でした。

まるで自分の生き写しかのように、難しいことは全く分からない生徒に対して、時に厳しく大体はコミカルに、そこまで言っていいのかというくらいの本音満載で楽しく投資の扉を開けることができました。今でも、誰かに投資の本の入門でお勧めはと聞かれればこの本をあげています。

その後、水瀬ケンイチさんとの共著である「ほったらかし投資術」をはじめ、年に一度は山崎さんの本を買って読んでいました。自分にとっては、投資の新しい知識を得るというよりは、原点の確認作業の意味合いが大きかったと思います。

様々な著書を通じて、山崎さんは、ご自身が数多くの金融機関を渡り歩き、専門的な知見も非常に深い一方で、「投資に時間をかけるなんてもったいない。そんなことよりも人生を楽しみなさい。」というメッセージを強く発していたように思います。

お金のことで不安があると人生は楽しめない、なので不安は取り除く必要はある、そのための一番効率の良い方法はインデックスファンドへの積み立て投資というシンプルな解がある、だから、投資なんかにのめり込まないでいいんだ。8年間、多くの著書を拝見しましたが、言っていることはずっと変わっていません。

たとえ、山崎さんが、今後も本を出すことができたとしても、変わることはなかったでしょう。そして、私は変わらずに、「そうだよな」と思うために著書を読むのだと思います。

8年前に、山崎さんの本に出会って、自分のお金に関する考え方は変わり、そして、大きく興味を持つようになりました。将来のお金への不安が軽減されたのは、8年前に、あの本を読んだからですし、そういった意味で、恩人のような方です。

私はきっと今後も年に一度、自分の原点を確認するために、既刊の山崎さんの本を読み直すと思います。大きな暴落があった時ほど、頼りになる書籍になるでしょう。

書き貯めてあったとしても、もう、山崎さんの新刊を見ることができる機会は、あっても数回でしょう。金融機関に所属しているにもかかわらず、忖度のない、そして容赦のない、あの言い回しを再び読むことができないというのは大変悲しいことです。

一度もお会いしたことのない、ただの一読者ですが、山崎さんには大変感謝しています。これまで、本当にありがとうございました。改めて、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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