地方公務員で出世する人
この10年弱、地方議会関係の仕事をしていたこともあり、自分の上司だけでなく、多くの幹部級の職員と接する機会に恵まれました。
議会関係の仕事は、議員に自治体の施策を責任もって説明することから、本庁の課長級職員(大体全職員の5%ほど)が自ら議員のもとに足を運びます。
すぐそばで説明を聞いたり、説明の場をセッティングする調整を一緒に行う中で感じたのは、当自治体の誰を上に引き上げるのかを決定する仕組みは上手く機能しているのだということでした。つまりは、出世する人は出世する理由があるということです。
今回は、自分が見た中で感じた地方公務員で出世する人に共通する要素をまとめてみたいと思います。
※超個人的な所感ですので、人によって見解が異なる記載が多々あることはお含みおきください。
1 フットワークが軽い
現場主義の面が強く、トラブルや上司や議員との折衝でも、その場に行きたがる傾向にあると感じます。決して人に任せないという訳ではないのですが、ともかくまずは自分の目で見たい、耳で早く聞きたい、そんな思いが強い。
例えば、ある施策が上手くいかないのであれば、誰かを呼んで話を聞くというよりは、自ら当事者に声をかけて、状況を聞きだしたりします。
また、自分の責任を渡したりせず、さらに上の幹部へトラブルがあったことを説明するときも自ら行う傾向にあると感じます。
ある課長に議会の関係で相談をしようと、近くの職員に電話をして、在席していることを確認して向かったけども、数分の間に、どこかへ行ってしまったということも良くありました。
机上で仕事をすることももちろん大切なことです。様々な書類が回ってきますし、電話が来ることだって多いでしょう。ただ、目を色々なところに配って、自ら足を運んで現場にいることが多いと、様々な機会に恵まれることが多いのではないかと思います。
現地に行くことで、関係者と新たにつながって施策が上手くいった、その人とつながれたなど、いるべきときにその場にいたことが自分のキャリアの転換点となるのではないかと感じます。
そこまで運命的なものでなくても、職場の飲み会でもそうです。たまたま、上司の前になって、「次の配属どこ行きたい」などと、さらっと聞かれ、「ここに行きたい」と即座に答えて、道が開けたという事例も聞きました。
うちの自治体でも幹部クラスほど、飲み会が多く、参加率も高いです。出世と飲み会の参加率との相関関係は分かりませんが、人に名前を覚えてもらい関係性が深まる、キャリアの転換点となる機会が稀にありうるということを考えると、あながち無関係ではないように思えます。
フットワーク軽く、現場に行ったとしても実を得られるのは10回に1回あるかないかだと思います。ただそれでも、回数を増やし母数を上げることで、巡り合う機会は増えます。
意図はしていないでしょうが、出世をした人は、何回も機会をつくって、いるべきときにいるようにしたのではないかと思います。
2 仕事を巻き取る
仕事を引き受けるのに消極的ではないことも共通点だと思います。
調整業務をやっていて、一番げんなりするのが所管争いです。仕事をもっていって「これはうちの仕事ではない」と言われて板挟みにあうたびに、自分は何をやっているのだろうという気持ちになります。
議会業務をやっているときに思ったのは、大変な所属ほど、そうしたときに「うちで引き取る」と言ってくれる確率が高いように思います。調整担当としては大変助かりますし、より上の部長クラスからしても引き取り手がいることは大変助かるのではないでしょうか。
また、より細かな照会物でも、仕事を巻き取る人は、やればやるほど経験が増えて、処理スピードも上がります。えーと言いつつも、引き受けてあっさりと回答案を出してきます。
こなしていくうちに「頼りになる人」という評判を得て、相談されることが増えていくように思えます。
もちろん、その頼りになる人も全ての業務を受けてくれるわけではないので、断ることもあります。
ただ、その場合も、しっかりと理由を提示する、他の打開策を示してくれるなど、スマートな対応が多い印象です。頼む側としても「本当にダメなのだ。」とあきらめもつきます。
何でも引き受けたらパンクするとも思うのですが、上に行く人は、断る際も立ち回りが上手いのか、断る割合なのか、そもそもの生来の物腰なのか、嫌な気分にならず調整が済むといった印象があります。
ただ、積極的とは言わないまでも、ネガティブにならずに仕事を引き取る姿は、大変頼りになるなと思いますし、だからこそ仕事を遂行する能力自体も上がっていたのだろうなと思わせます。
3 前に進めようとする
やるべきことをやることに躊躇がないこともポイントであると感じます。
公務員は前例踏襲を好むと言われます。同じことをやっていれば、ミスする確率は減るし、減点主義的なところがあるので、前と同じという立ち回りがベターである、それはある意味正しいのです。
しかし、自治体で力を発揮している人は、推進力があるというか、物事をとにかく前に進めようとします。新しいことをやる際に、妨害したり消極的な意見を言うのではなく、どうしたらできるのかが先に来ています。
先日も、計画の改定を検討している中で、改定の時期をやろうと思えば理由をつけて来年度にあと倒しにすることもできたのですが、担当の課長は「どうせいつかはやることなのだから、無理のない範囲でやってみよう」と課員を鼓舞しました。
自治体における計画改定は、パブリックコメントや議会との調整もあり、多くの工数が必要な大変な業務です。1年先送りにすれば、十分な時間ができて、自分も異動した後に実施することになるかもしれません。
責任者の課長にとっては自分の負荷が減ることだけを考えれば、先送りが良い選択肢です。ただ、目立つ幹部は、現状を少しでも良い方向に変えようと、前に進めることを選びます。
誰も考えつかなかった新しいことをやるというよりは、現状維持のままにせず、何かを動かしてみるに近い感じかと思います。前例踏襲でも赤点はつけられませんが、評価が良くなるわけではありません。
4 まとめ
本庁の課長級の方は、かなりの狭き門ですし、居る人たちは本当に誰しもが(私が言うのもなんですが)優秀です。そこにいる人はいるべき理由があって、出世しています。
個人的な感覚で、そういった方々の共通点のようなものを列挙してみました。課長から更に上である部長級や理事級に行くには、巡りあわせのようなものが必要なのではないかと思います。
大体周りの部長級以上の方は、管理職や係長級の時に、今回のコロナの中心部署で右往左往するといった何かしら修羅場をくぐってきている人たちです。
そういった場面に出くわして、上手く乗り越えられるかどうかにもかかってくるので、一概に自分の能力次第だけではないように思います。
15年ほど役所で働いていますが、役所の人事は思った以上にしっかりと目を配っていて、あげるべき人が上がっているのだなと強く感じさせます。
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