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La solitude(Léo Ferréに捧ぐ)

偉大な魂はなおも 惑星を包括し続ける
その瞬間の彼の孤独を 想像し得た誰かがいるだろうか…

なおも彼は世界に問う
自らの人生が本当にこれで良かったのか否かと

だが誰も 彼のささやきに触れることが出来ない
勿論 私も

歌は 詞は そして彼の音楽も
無防備にこの星を横断し続ける
今では小さな電子機器の片隅に 彼は静かに立ち
歌声と悲しみを放つ
そして世界を見回しながら
これで良かったのか と 自問自答を繰り返す

だが 誰も彼の思いに触れることなど出来ない


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私はパリの
奇跡のような午後を妄想する

彼といた椅子に座り 五線紙にインクを落とし
太陽が描く気紛れな音符に未来を託すように
ペンを降る
だが 五線の外側に小さなインクが三滴 散っただけで
音楽はそこへは ついに姿を現さなかった

代わりに 言葉にならない詩の渦が私を飲み込んで行く
おそらくそれこそが 彼の魂であり
心の叫びではないかと ふと思う

目の前で太陽が煙を立てて燃え上がり
私の意識もろとも 遠く遠く押し流し
そして私は魂の消失する寸前まで追いつめられる

おそらくこれこそが彼の意識であり
私は消失しかけた自身の中の
彼の断片を空(から)の五線紙に乗せて行く


彼は五線紙を舞台に 小さな体で宇宙を描く
ともに私も ハミングを重ねて行く
太陽が辛うじて残して行った 焦げた五線紙の切れ端の黒い線の上で
おそらく百年後も千年後も
このまま彼は一人で歌い続けるに違いない


偉大な魂はなおも 惑星を包括し続け
なおも彼は世界に問いかける
自らの人生が本当にこれで良かったのか否かと

だが誰も 彼のささやきに触れることが出来ない
勿論 私も
誰も…


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