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忘れようとしても忘れられない


ドモドモ。佐久間ディックです。

今回は、写真店の丁稚だった時のおはなし。


南森町という場所にお店はあったので、

会社員のお客さんも多いお店でした。

丁稚の仕事は受付と外回り。

外回りは文字通りなので受付を説明すると、アレですね。

フィルムを預かる。

袋にお名前と連絡先、フィルムの種類(何枚撮りか、とか)を聞いて書く。

袋にフィルムを入れ、半券をお客さんに渡す。

数がまとまったら、奥でやってる現像・プリント担当の人に袋を渡す。

のフィルムの預かりと、

お客さんが持ってきた半券を確認し、該当する袋を探す。

袋の中身の写真を一枚取り出し、お客さんに確認してもらう。

会計して袋をお客さんに渡す。

の写真の受け渡しの2つですね。

こういう経験、若い人はした事ないと思いますが、昔は普通の風景でした。

写真を確認してもらうのは、フィルムの取り違えを防ぐ為です。

また現像・プリントは別の人が担当なので、

受付は袋の中身の写真がどんな写真かは知りません。

知る必要もありませんし。

また、現像・プリント担当の人も、

写真を単に撮影順に袋に入れてるだけでした。

お客さんのプライバシーがありますので。


ある春の日の事でした。

真新しい制服を着たOLのお姉さんが、半券を持って来店しました。

どうやら新人さんで、上司に写真を受け取ってくるように頼まれた、

そんな感じのようでした。

初々しい笑顔が眩しいくらい。

店頭の空気が、一気に華やいだ感じになりました。

すぐに袋は見つかり、

「お写真はこちらで間違いありませんか?」

と声をかけて写真を取り出した時に悲劇が。


SMの女王様が鞭をもってポーズをキメた写真でした。

店内の空気は、アラスカも真っ青なほどに凍り付きました。


もちろん女王様は、お姉さんではありません。

どうやら上司は仕事のフィルムが余ったので、

遊びに行ったSMクラブで写真を撮ったようでした。

昔はフィルムやプリントが高価だったので、

仕事のフィルムが余ったら私用の写真を撮る人は結構いました。

お姉さんは顔を真っ赤にしながらうつむいて、

小声で「はい」と返事をするのがやっと。

逃げるように会計を済ませ、去って行きました。

あのあとお姉さんはどうやって上司に写真を渡したのか?

聞いてみたかったけど、

お姉さんはそれっきりだったので、聞けずじまいでした。


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