夢だった野球チームのトレーナーをやっていたら気がつけば裁判していた話
「スポーツトレーナーになりたい」
小さい頃から野球をやっており、スポーツがいつも身近にあったことから、いつしか「スポーツトレーナー」になりたい。
漠然とした小さな想いだったが、その想いは消えることなく、西日本で唯一の「理学療法士+アスレティックトレーナー」のカリキュラムを学べる学校に進学した。
在学中も「スポーツトレーナー」への想いは消えることはなく、スポーツ選手を数多く見れるクリニックに就職した。
そこでは、毎週70〜80名ほどのスポーツ選手のリハビリとトレーニングを担当させていただき、無我夢中で研鑽した。
同時に、憧れであった「スポーツトレーナー」の活動を本格化させることになる。
最初の5年間は、ほぼ無償で高校のバスケットボールチームに帯同させていただいた。
この業界にいる人なら分かると思うが、若手の頃は「スキルと経験」を買うために、無償で働くなんてのは当たり前だった。
スポーツトレーナーとしての経験を着実に積み重ねていく、そんな20歳代だった。
しかし、夢であったプロ野球球団のトレーナーの一般公募は5回応募して全て書類選考で落ちている。
現実はなかなか厳しかった。
「夢だったスポーツトレーナーへ」
知り合いのトレーナーから社会人野球チームの専属トレーナーの募集について、運良く紹介していただいた。
いよいよ、学生時代からの夢であった「スポーツトレーナー」として“専業でやっていける!“と、胸を躍らせた。
いざ、契約の話になると、チーム帯同のタイミング、単身で行くのか?家族で引越しするのか?自宅はチームが用意する?自分が用意する?など、細々した決め事がいくつもあった。
さらに、このタイミングで個人事業主になったため、お金の知識が乏しく苦労したことを覚えている。
そして、無事に契約がまとまり、2021年2月からチームに帯同することとなる。
当時のチームは新人選手が10名以上いた。
チーム実績が乏しいため、スカウトできる選手が限られいた。
大学で実績があるものの怪我などで良いチームから声がかからなかった選手を集めていたため、チーム合流時は怪我を抱えている選手が多かった。
なんと、投手11人中6人が怪我で投げられない状況、他の2人も問題を抱えておりベストな状況ではなかった。
そんなボロボロのチーム状況の中、合流して間も無く2月下旬から練習試合を毎週4試合行う、そんな日々が3ヶ月続いた。
どうにかしてチームの状態を立て直さなければと思い、
①現在プレーできる選手が、いかに怪我をせずにプレーできるか
②怪我で投げられない投手6人を、いかに早期競技復帰させるか
この2つにだけ注力してリハビリとトレーニングを指導した。
結果、チームの怪我人が減っていくと同時にチーム力も上がっていった。
いつしか、パフォーマンスは最高の状態になり、全国大会に2年連続で出場できるところまでチームは成長した。
夢だったスポーツトレーナーの仕事を専業でさせていただき、怪我人の減少、パフォーマンスの向上、全国大会の出場など成果も出てきて、非常にやりがいを感じていた。
もっとチームに貢献していきたい。
そんな矢先だった。
「まさか・・ お金が」
始まりは、本当に小さな出来事だった。
2022年4月、給料日に給料が振り込まれていないことに気が付く。
最初は会社のミスかと思い、連絡すると、
「すみません。こちらのミスでお給料が振り込めていなかったです。」
「あぁ、そうですか。」
そんな簡単なやり取りだった。
無事、翌日には当月分の給料が振り込まれていた。
なんだ。
ただのミスだったのか。
本当にそう思っていた。
5月は予定通り、給料日に給料が支払われた。
しかし、6月は給料が振り込まれなかった。
少し嫌な予感がした。
再度、会社に連絡したが、給料が振り込まれたのは2〜3日後だった。
これは完全におかしい。
チームメンバーに確認すると、4月の時点では一部のチームスタッフの給料が振り込まれていなかっただけだったが、6月には多くの選手も給料が支払われていないことが判明した。
そして、最悪の事態が続く。
7月からは給料が一切支払われなくなった。
慌てて、会社の経理担当に電話をする。
「担当は病気で3週間くらい出社しないよ」
そう言われるだけだった。
ちょうどその頃、会社でコロナの集団感染が起きていたので、その影響なのかと考えていた。
経理担当は他にもいたが、この件に対して会社はまともに取り合ってくれなかった。
ほぼ毎日会社に電話していたが、経理担当に電話を引き継いでもらうことさえできなくなった。
そして、最終的には「経理は不在です」と、経理担当と連絡が取れなくなってしまう。
「戦いの舞台はグラウンドから法廷へ」
さすがに、1人では解決できなくなり、このタイミングで初めて弁護士に相談することにした。
そんな状況でも選手・チームは一切悪くないので、自分もトレーナー活動は継続していた。
結果、弁護士と相談して8月中に裁判所に訴訟を起こした。
そして、9月に初めての裁判。
ここでも会社の不義理は続く。
裁判に会社の代理人が欠席したのだ。
欠席裁判となり、1日で判決が下り、勝訴に。
それと同時に、トレーナー契約を解除。
こうして、僕の初めての専業スポーツトレーナーは思いもよらぬ形で終了することになる。
最後は、給料の未払い分と契約期間中の給料を支払うことで示談という形になった。
その後、チームは解散してバラバラになってしまう…。
「最後に」
トレーナーの契約・お金の問題は根深い。
企業スポーツであっても、お金の問題は起きやすい。
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