ルックバックが描いたものを考える - 『ルックバック』
僕は藤野のキャラが好きだ。
最初は、いいカッコしいなところを苦々しく見ていた。まるで若い時の自分を見ているようだ…
だから、藤野は自分のことが大好きで、ちょっと人よりも多才で、負けず嫌いな自分中心な人という印象だった。
そういうわけで、中盤までは、そんな藤野が人生で初めて(かは分からないけど)敗北を経験して(この時の表情がいい)、成功するための努力を描く青春物語かなあと思っていた。よく見る自己実現系の話。
だけど、見終わって気づいた。
これは、彼女の成功の物語ではない。愛の物語だった。
藤野は自分のことが大好きな自分中心の人間じゃない。藤野はずっと、京本のために絵を描いていたのだと。
尊敬する京本が自分のことを「先生」と呼んでくれるのが嬉しくて、漫画を読んだ時に楽しんでくれるのが嬉しくて、ずっと漫画を描いていたんだ。
だって、藤野は言ってるじゃないか。大変だから漫画なんて描くものじゃない、読むだけで十分だって。
だから、京本が亡くなった時に、描けなくなった。
それは、親友を亡くしたショックからではない。描く理由をなくしたから。
葬式の後京本の家で、藤野歩のサインが書かれたはんてんを見つけた時、藤野ははっきりと自覚した。京本のために書いていた事を。
物語の最後は、藤野が再び漫画を描き始めることで終わる。
彼女は決めたのだ。京本が愛してくれた絵を、描き続けることを。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?