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もう広報PR下手、では済まされない!   菅首相の失敗に学ぶ「あなたの価値の伝え方」

今日お伝えしたいのは、いくら素晴らしい成果・実績を上げても、その実績が伝わらなければ、選挙では負け、仲間は去り、評価されず失脚するという悲運のリーダー、菅首相の教訓です。

菅総理が任期満了で退任されることとなりました。この感染症が蔓延する1年間、本当に良くやってくださったと思います。心よりお礼を申し上げ、感謝致したく存じます。

菅首相は、病気退任された安倍前首相の後を受けて、自民党総裁選挙では圧勝。就任直後から「モーレツな仕事師」を自認されるだけあって、休みも取らず、短期間に数々の貢献をなされました。

一般人の私がパッと思いつくだけでも、学術会議規制、携帯電話通信料金値下げ、電波利権の見直し、飲食店給付金制度、東京オリ・パラ開催、中小企業支援給付制度、重要地域の土地利用規制法、ワクチン確保、処理水放出決定、不妊治療保険適用、慰安婦は表現不適切、台湾や南太平洋諸国へのワクチン提供、米バイデン大統領との首脳会議、皇室改革、ベトナム訪問、日米豪印クワッド、そして、福島県農作物の米国輸出許可承認獲得など、10以上もあります。

特に、いまだ収まらない感染症対策としても、スピーディーに1億5000万本以上ワクチン調達にも成功。1日100万本接種と目標を掲げ、短期間でこれまでの遅れを取り戻すほどのスピードで全力を尽くし、任期の最後の最後まで対策を実行しておられます。

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これほどまで実績を短期間のうちに成し遂げたわけですが、その実績や成果は、なかなか収束しないコロナ陽性者人数報道や対策の不十分さにかき消され、政府へのマイナスイメージが広がり、支持を失っていきました。

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特に、高齢者からの移動自粛や「緊急事態宣言」要請や反政府報道ばかりが声高になされた続けたこともあり、他国に比べ、感染者数も死者数も著しく少ないにもかかわらず、自粛により旅行業・小売業・飲食サービス業等への就業人口1500万人を中心に、長く困難な期間が2年以上続いており、いまだ終わりが見えません。

緊急事態宣言で業績が悪化するサービス業、観光業、小売業、飲食業が増えるたび、政府への反発が増えていきます。菅首相と自民党への支持率は就任時をピークに右肩下りで低迷してゆきました。

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収束しない感染症拡大の責任は与党自民党にある、と選挙戦で喧伝されたのか、この1年間に実施された主な地方選挙、首長選挙で自民党は敗戦が続きました。

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致命的だったのは、菅首相の盟友、小此木八郎氏を擁し、絶対勝利で挑んだはずの8月22日地元・横浜市の市長選挙の敗北でした。

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 敗北後、自民党神奈川県連も候補者一本化できなかった菅首相を総裁戦では応援しないと発言(2日)、

これが影響したのか、党内全体の評価として「これでは次回の総選挙、大きく議席を減らしてしまう。選挙の顔にならない」「推薦人20名すら絶望的」とされ、9月の総裁選出馬断念を余儀なくされた、と聞いています。

1年という短期間にもかかわらず数々の成果を残した菅首相。なのに、なぜ失脚するほどの不人気になってしまったのか


もう一度繰り返しますが、菅首相は2020年9月16日に就任後、学術会議規制、携帯電話通信料金値下げ、電波利権の見直し、飲食店給付金制度、東京オリ・パラ開催、中小企業支援給付制度、重要地域の土地利用規制法、ワクチン確保、処理水放出決定、不妊治療保険適用、慰安婦は表現不適切、台湾や南太平洋諸国へのワクチン提供、米バイデン大統領との首脳会議、皇室改革、ベトナム訪問、日米豪印クワッドなど、わずか1年で15以上の成果を上げています。しかも、退任発表後の2021年9月24日から米国出張し、米バイデン大統領との会談、国連訪問と仕事を入れています。たった1年でここまでやるか、というくらいの仕事ぶりです。

それに、感染症だ、蔓延だ、と言っても、実際のところはどうなのか?

リアルな数値で比べてみましょう。以下一覧表やグラフを見ればわかる通り、わが国はコロナ感染数や死者数を主要各国と比べれば低いレベル、といっても良いでしょう。「さざ波」と言って炎上した人もいましたが、実際のデータをみれば確かに、わが国の感染者数は高くありません。(以下のグラフはJones Hopkins 大学&病院リサーチセンター https://coronavirus.jhu.edu/data/new-cases より)

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NHKが紹介している表でも感染者数26位以下のレベル(9月8日現在で、27位 https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/)

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死者数でもポルトガルやマレーシア以下に収まっており健闘していると思います。

五輪前に、IOCのバッハ会長が「これなら有観客で五輪を実施できるのでは?」と要望したのも納得です。


たとえば、感染者数が4000万人、死者数65万人を超えているアメリカですら、観客はほとんどがマスクせず多くのファンがスタジアムで野球観戦を楽しんでいるからです。(画像は https://www.mlb.com/cardinals/news/albert-pujols-homers-in-return-to-st-louis より)

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にもかかわらず、国民の政府自民党&菅首相への風当たりは強く、不人気で選挙に勝てない総理というレッテルを貼られ、1年で首相の座を去ることになってしまいました。なぜでしょうか。

足りなかった「広報力」

私の考えを一言で言えば、菅首相の美学が招いた「広報力不足」「PR不足」に尽きると思います。

菅首相は、秋田県の出身。もともと東北出身の人は方言にコンプレックスを持っている人が少なくありません。どちらかといえば、東北人は口下手が多い印象です。さらに菅さんは空手道を学び、大学では剛柔流空手道部副主将。空手家や武道家は、口より拳を信じる、を心情としています。口は災いの元、口動かすよりも手を動かせ、陰徳陽報、と実践を重んじる価値観を持っておられるようです。

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しかも、菅総理が秋田から上京し法政大学に入学したのは1969年です。翌1970年春から始まった三船敏郎「男は黙ってサッポロボール」のCMは大ヒット。影響されなかったはずがありません。

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卒業後、いくつかの職を経て小此木先生の秘書として活動するにあたり、秘密厳守こそ政治秘書としての重要な資質であったと想像されます。以降、首相となるまで、ますます、軽口叩くな、黙々と手を動かせ、仕事しろ、そういう人物こそ評価されるものだ、という信念が固まり、また実践されてこられたのだと思います。

「陰徳あれば必ず陽報あり」〜人に知られずひそかによいことを行っていると、いずれ、よくわかる形でよい報いを得られる、という諺があります。

東北人らしく、謙虚に、若くもなく、ご自身はイケメンでない、と自認されていたのか、人に知られなくとも、コツコツと実践を積み上げていくと、最後には陽報につながる、と信じておられたようにお見受けいたします。

参与として菅内閣で活動された高橋洋一氏によれば、菅首相は広報PRの重要性をご存知にもかかわらず、「僕はそういうのはいいよ」と断っておられたとか。( https://youtu.be/Rk1Kk1viGLc?t=451 の動画より)

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わが国では、伝統的に、己の成果や実績をひけらかしたり、自慢するのは品がない、本当に優秀な人はひけらかさずとも伝わっていくという価値観があります。

しかし、残念ながら、菅首相のこの価値観は、メディアや動画イメージ全盛のこの時代には、全く合っていませんでした。

現代は、テレビやユーチューバーの時代です。国民は、コツコツ地道な実践よりも、映像での演説、パフォーマンスによって、感情を動かされ、良し悪しを判断しています。

政策面で、事実をデータで理解し、適切な政策や施策で解決してきたのに、自分のパブリックイメージ・コントロールについては全く無頓着。

笑顔なく、疲れた姿ばかりをメディア上で拡散されてしまうと、たとえ着実な政策を決断されてきたとしても、菅首相個人のイメージは悪化するばかりでした。

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五輪の開会式で立つのが遅れた、平和式典で読み飛ばした、1分遅刻した、など正直誰でも間違え得ることを大きく報道され、イメージを毀損させられたことをやり過ごそうとした菅首相は、的確に着実に政策を実行してきた同じ人物とは思えない「パブリックイメージ戦略」でした。

パブリックイメージが悪化したまま、放置し、改善できなかったことが菅首相にとって不幸でした

決断が正しくなくとも支持の高いリーダーたち

一方で、これは不幸でもありますが、小池都知事や吉村大阪府知事のように、たとえ誤った対策でも、やっている姿をテレビで見せていれば、「頑張っている」「頼りになる」、そう国民は判断する時代です。

政策や実績は疑問なのに、紙芝居的?な記者会見は好評なため、

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さまざまなコロナ対策を都民から高く評価されている小池都知事(76.6%!)や、

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映像とフリップを使い、記者会見をプレゼンの場に変えて「イソジン飲め」といった吉村大阪府知事も府民から高い支持率(調査によれば75%のケースも! https://ameblo.jp/cctnews2020/entry-12681787741.html )を得ています。

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一方、菅首相は、平和式典などでの瑣末なミスを突かれ、政策の実績は伝えられず、繰り返される外出や営業の自粛要請、給付金支払いや融資遅れ、ポリ袋課金など国民に負担を強いた感ばかりが続きました。

ぶら下がりの記者会見では、疲れや苛立つ表情を見せ、自粛やGoTo延期など必要な措置とはいえネガティブで冴えない内容ばかり。

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グラフを見ると、忘年会・新年会、年末年始商戦を潰した2020年11月以降、大きく支持率は下がりました。商売に直結する負担を強いたことは致命傷でした。

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結局は、「これでは選挙を戦えない」という党執行部や党内派閥幹部からの判断につながったようです。

 テレビ、YouTubeなど映像でイメージを作る時代は、コツコツ積み重ねる日々の現場仕事、法律を作ったり、制度を準備するなど地道な政治活動は大事ですが、「絵にならない」ため、伝わりにくいのです。

所詮、政治家も人気商売。イメージ悪けりゃ選挙に負ける。負ければ、ただの失職者。

メディアに自由に報道させるに任せた結果、政府の対策はうまくいっていない、また延長だ、支援が不十分、医療もパンクだ、などといったマイナスイメージばかりが報道され、プラスの内容は無視されるか、報道されても僅かな時間とスペースのため、国民に菅内閣の実施した仕事ぶりが十分に周知されませんでした。

多くの国民は、菅首相が退任することが決定した今、「そういえば、菅首相ってなんか成果あるのか?」と調べ始めて、やっと、「なんだ、これもやってくれたんだ」「あの法案も菅総理がやってくれたんだ」「ふるさと納税制度も菅総理か!」など、その実績に驚いて、今更ながら、「菅首相辞めないで」と思い直す人が徐々に出始めているのが現状です。

9月9日、緊急事態宣言延長の菅首相会見がありましたが、そこでも、党利党略よりも感染症対策始め仕事を進めたい、それが使命であると強く信じて行動されていたことがわかりました。

また、文春でのインタビューで「弁舌よりも結果」で行動してきた、と語っておられます。

私自身、もともと能弁ではないし、そもそも政治家は『弁舌よりも結果だ』と。結果を残せばわかってもらえるという政治姿勢で今までずっと来たので、そういう考えが会見の姿勢に出てしまっているのかもしれません。」(文春インタビューより)

優秀だった菅首相が総理としての仕事をもう少し長く進められるよう、日頃からもっと広報やパブリックイメージ戦略にも力を注いでくれていたら、と残念に思えてなりません。

2005年郵政解散・小泉劇場

菅首相とは反対に、国民感情、議員感情を熟知してPR活用し、選挙で大勝、自民党に単独過半数をもたらしたのが、2005(平成17)年8月「郵政解散」「小泉劇場」を演出し、国民を熱狂させた小泉純一郎氏です。息子の進次郎氏も同じような紋切り型の応対により、国民や選挙区民から高い人気を保っています。

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衆議院解散をした同夜、小泉首相は首相官邸の記者会見で衆議院を解散した理由と総選挙に対する意気込みを表明した。その中で、「郵政民営化が、本当に必要ないのか。賛成か反対かはっきりと国民に問いたい」「郵政民営化に賛成する候補者しか公認しない」と主張した。そして、自らを地動説を主張した天文学者のガリレオ・ガリレイになぞらえ、この解散を郵政・ガリレオ解散と名付けた。このときの瞬間視聴率は21.8%に達したといわれ、選挙の流れを決定付けたとの評もある。自民党の選挙CMは当初はこの首相演説の映像を用いようとしたが内閣の職務で行われた性格から断念し、代わりに首相演説時と同じネクタイやカーテンを用いて小泉首相が立って国民に郵政民営化の必要を語りかけるCMを作成した。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E9%83%B5%E6%94%BF%E8%A7%A3%E6%95%A3 より)

この郵政解散の結果、第44回衆議院議員総選挙で自民党は、議席数を改選前の212から84の大幅躍進で全議席数480のうち、単独で300に迫る296議席(61%)を獲得。大勝利となりました。

イメージの重要性を理解し、メディア活用によるPRで選挙大勝利した小泉首相。重要性を知っていて、成果を上げていながら、活用しないで党内支持を失い、失脚した菅首相。

2人の差はこんなところに出たんだと思います。

菅首相は仕事ができるだけに、本当にもったいない。惜しまれます。

もちろん政治家にとって、選挙は戦いです。そして、政党党首は、党員にどれだけの議席数を獲得できるかだけが評価基準です。「選挙に勝てる党首」こそ議員が求めるものです。感染症対策に必死に奮闘してこられた菅首相ですが、「菅では勝てない」と議員はじめ党員に判断されてしまったことは、大きな誤算であり、悔いが残ったのではないかと思います。

商売もブランドを築くため広報PRが非常に重要。

多くの経営者の皆様も同じと思います。

政治家がより多くの有権者の心を掴まなくては議席が得られないのと同様、顧客の心を掴まなければ売れません。既に消費者中心社会が到来。効果効能を語るだけでは売れません。もちろん「うちの製品の方が良い」では届きません。知らない企業や商品は存在しないのと同じ。会社のビジョン、方針、戦略も、適切に、タイムリーに広報しなければ、わかってもらえません。もはや「広報PRは経営力」です。以下、ご紹介しているのは、規模が大きな大都市にある会社ではありません。小さくても、都会ではなくても、頑張っている方々が広報の発信力を持つことで、大企業よりも、スマートに増客や知名度を広げる経営ができます。

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(2021年7月11日付 日経MJ記事 掲載)

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(NHK名古屋 2021年2月19日放送)

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(西日本TV「ももち浜ストア」2020年9月28日放送)

今や、変化に順応できる、小さな企業や個人、非営利団体の時代。彼らも広報力を活かして、業況にかかわらず、その地位を確保すべく経営しています。いい会社、いい製品、という実績も大事。ですが、それだけでは不十分ということです。特に、美容師さんや税理士さんなど無形のサービスを扱っているところは、広報プレゼン力が欠けています。

菅首相の失敗から学べることは、「いい実績、いい成果、いいサービスを提供していても、顧客に伝え、理解してもらう努力を怠れば、首相といえども、支持されず、選挙で負けて、失脚する」という現実。

せっかく良い実績をあげていても伝わらなければ、いくら人材募集しても社員は集まりませんし、販売・営業も苦戦します。そのための戦略的な広報・PRの活用がますます必要な時代であると思います。

私たちは、先が見えないこの経営環境でも、経営者のあなた様が明るい明日に変わるお手伝いをしています。改めて自社の広報戦略、ブランド戦略を考え直してみたい、広報やマーケティングを戦略的に実践したい、という方を私どもは支援しています。あなたが商品・サービスは良い、だけど、今ひとつ、と伸び悩みを感じておられたら、ご相談ください

お問い合わせ: https://thebase.in/inquiry/dialogjapan




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