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ジュエリーの価値

「ある人が財産を終活で手放すことを考えているので宝石鑑定士としてご意見をお聞きしたい」

「金は買っておいた方が良いですか?」

「このダイヤモンドって価値が上がりますか」

私が宝石鑑定士だというとそう質問される方がいらっしゃいます。アンティークの鑑定をする番組の影響なのか、中古品買取屋さんにいる宝石鑑定士が査定をしているから同じことを求めていらっしゃるのかなと思いますが、

私はこの手の質問を頂戴した場合、いつもとは違い、オブラートに包まずお断りしています。また、この手の質問をされる方とは正直あまり親交を深めたくないです。。。(不思議なことに大抵この質問はサロンの会員さまや近しい関係の方からは問われたことはありません)

理由は二つあります。

一点は宝石鑑定士は価格査定士ではないということ、もう一点は、財産であると仰る宝石を売ろうとされる方のトラブルに巻き込まれたくないからです。売りたい理由は様々だと思いますが、ご親戚や大切なご友人などに引き継ぎたいということではなく、お金にしたいので売りたいわけですから「宝石鑑定士」という肩書きで査定をするなんてとんでもないことだからです。

「金相場あがりますか?」と聞く方に私が苦いハーブを🌿噛んだ顔を見せると、「個人的な意見で構いません」と必ず追加質問をなさいます。苦いハーブの顔は効き目無しのようなので、曖昧な風を吹かせず、「宝石鑑定士は相場師ではありませんので、そういったご相談はどなた様であってもお断りしています。予知能力もありません。笑」とお伝えしています。

以前、宝石の展示会で宝石鑑定士の資格を取ったばかりで資格は名ばかりだろうと予測できるキャリアの持ち主が、マダムに同じような質問を頂き、「そうですねー大体の査定額で良ければ…(計算機を叩く→なにを計算しているのでしょう、本当にその計算あってます…?)○○○万円です」と答えていたとある方からお聞きして腰を抜かしそうになりました。

…ひたすら怪しいです。そして悲しいです。

そもそも宝石鑑定士は、今目の前にある鉱物のように見える物質がなんの鉱物であるのか、鉱物ではない人工物なのか、それを見極める勉強をした人達をいいます。
宝石鑑定士の資格をとっていても、その後どの道に進むかにより専門性に違いが出ます。沢山の鉱物を見る機会に身を置く人と、そうではない人、学びをつづける人と学ばない人では雲泥の差がでます。私のようにダイヤモンドの専門性が必要とされる環境にいる鑑定士は色石を専門とする環境にいる鑑定士の知識には敵いませんし、逆も然りです。

また綺麗で高品質なダイヤモンドを見る環境にある鑑定士と、アクセサリークラスのダイヤモンドを扱う環境にいる鑑定士では審美眼にも差が出るのは致し方ないことであり、それが真実です。

また、宝石鑑定士の資格をなんらかの事情で取得できなかった方でも、業界で実キャリアをしっかり積んでいれば、資格がなくてもしっかりとした目が備わっているということすらあるということになります。

話を戻しますと…
実キャリアが浅いのに「査定できる」と思っている、沢山の鉱物をこれまでに見てきたと思い込んでいる、そういう方は信用ならぬ存在ですし、キャリアがあればあるほど、そして自分の立ち位置をしっかり見極めている人ほど冒頭の質問には答えられないはずなんです。

因みに、中古品買取や質屋さんの査定額は、中古品会社さんがその場で買い取る金額を言います。それに利益を乗じて新たな買い手を探します。新たな買い手が買ってくれることにより、会社が運営できるための正しい利益がとれるような買取金額をお客様に提示するわけです。
需要があれば(売り先が沢山あるなど)、高く買い取ってくれるかもしれませんし、ぞんざいな扱いを日頃からしていてジュエリーが傷だらけであれば査定の金額も落ちるでしょう。

ジュエリーの価値。
価値ってなんでしょうか。

価格のことでしょうか…。使われている鉱物の希少性でしょうか。ジュエリーとの思い出でしょうか…。
有能な職人への工賃の差でしょうか…。
こだわりのデザインでしょうか…。身につけた時に感じる安心感でしょうか。それとも纏うことに得られるようなエネルギーでしょうか。

売ることを考えること、売ることを考えてジュエリーを購入することが決して悪いとは言いませんが、売らなくてはならないほど無計画に購入していないか、お付き合いで買いたくないものを無理に購入していないのか、
財産として引き継ぐ方法はないものか、

何の想いも感じないままジュエリーを選んでいないか、
この子を身につけて大切にしたい、人生を照らして欲しい、そう思うものに出会えているか…。考えてみるきっかけになれば幸せです。

ちょっと辛辣な内容に感じた方がいらしたらすみません。

素敵なジュエリーライフを送っていただければ嬉しいです。この度も読んでくださりありがとうございました♡







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