【6年ぶり】DHUの案内冊子=コンセプトブック、リニューアルの舞台裏。
2023年6月、デジタルハリウッド大学(DHU)は大学公式パンフレット『コンセプトブック』をリニューアルしました。
約6年ぶりとなる全面改訂を行うにあたり、クリエイティブカンパニーのロフトワーク(LW)さんと、デザインスタジオのThereThereさん。構想含め約1年の期間を費やして完成したコンセプトブックには、キャッチコピーから写真、インタビュー、表紙裏のデザインに至るまで、「いま」のDHUの魅力が詰まっています。
コンセプトブックのリニューアルを記念して、ロフトワーク×ThereThere×DHUの制作担当者による座談会を開催しました。【A面】ロフトワーク社主催のインタビューでは、コンセプトブック制作の目的や背景を中心に公開します。本記事は【B面】として、コンセプトブックリニューアルの裏側や制作のこだわりについて、ざっくばらんに話しました。
自分らしく、クリエイティブに生きる人を応援するDHUが、自校のクリエイティブをどのように考え、どのようにブランディングしようと考えているのか。みなさんも「作り手」の気持ちになって、ぜひ最後までご覧ください!
コンセプトブックリニューアルの理由
DHU小勝:ここからは【B面】「コンセプトブックリニューアルの裏側」ということで、まずは歴代のDHUのパンフレット(コンセプトブック)を並べてみました。
DHU小勝:過去のパンフレットは、結構派手なトンマナ(トーン&マナー。デザインのルール)なんですよね。年によって学生のCG作品やグラフィック作品を表紙に起用したりなど変化はありますが、基本的にはオレンジ基調で、専門的なことが学べます!というイメージが強い。
2013年までは秋葉原にビルを3棟借りてキャンパス展開していたので、学生は授業のたびに校舎を行き来しなければならず、学食もありませんでした。当時を知る卒業生から見れば、1ビル2フロアに集約しているいまの駿河台キャンパスがうらやましいそうです。
「みんなを生きるな。自分を生きよう。」のキャンペーンが始まった2017年を機に、別の制作会社にブランディングを依頼し、雰囲気をガラッと変えました。全体的にモノトーンで硬派な印象で、写真素材も和気あいあいとした楽しいキャンパスライフというよりは、作ることに真剣な人が集まっていることをアピールするものでした。
この時期からDHUの知名度も高まり、おかげさまで志願者数も増加しました。ただ、当時のコンセプトブックやブランディングにも課題感はあって。
——どのような課題を感じていたのでしょうか?
DHU小勝:DHUの雰囲気というか、在学生が自由かつ活発に活動している様子がもっと伝わるものにしたいと考えていました。写真などのクリエイティブの質は間違いなく上がったのですが、例えば被写体になっている学生が男・男・男・男・男ときて女性1名、みたいなカットがあったりして。
現在の社会情勢にマッチしたものにするというのはもちろんですが、国や地域、言語、ジェンダーなど、何にも縛られずに自分の「好き」を追求できる、そして自由に「つくる」ことを認め合える。そういうDHUの文化や校風のようなものをもっと伝えたいと感じていたんですよね。
そこで今回、デザインから構成までの抜本的なリニューアルをロフトワークさん、ThereThereさんに依頼することになったんです。
デザインコンペの裏側
——まず、ロフトワークさんとご一緒するまでの経緯をお聞きしたいです。
DHU小勝:今回のリニューアルの方針をまとめたRFP(提案依頼書)を作って、コンペ形式で募集をかけました。そこで、ロフトワークさんを含めた複数社から提案をもらいました。
ロフトワークさんに決めたのは、提案書や担当の方の熱量はもちろんですが、対応の細やかさが大きかったです。メールの返信から実際に制作に入ってからの進捗管理まで、見たことのないスピードと粒度でタスクが進められていく。すでに大学関連のWebリニューアル案件を多くこなされているとはいえ、「こりゃすごい」と、何度も膝を打った記憶があります。
LW飯島:ありがとうございます。僕個人の意見としても、弊社ロフトワークのプロジェクトマネジメントは一級品だと思っていて。プロジェクトを成功させる、素敵なアウトプットを完成させるために、プロジェクトマネジメントは必須だと考え、コアスキルとして注力しているんです。
私たちはクリエイティブカンパニーと銘打っていますが、内製はしておらず、社内にクリエイターがいないんですよね。プロジェクトにあわせて、外部のクリエイターをアサインしています。弊社は、クライアントとクリエイターの間に入り、良いクリエイティブを作り上げる環境を整える役割を担っています。
LW山田:このような体制にしているのも、すべてクリエイティブのためです。
例えば、個人のクリエイターがクライアントワークを行う際、本当はクリエイティブな作業に集中するべきなのに、スケジュール調整やミーティングなどに時間がかかってしまい、結果クリエイティブの質が低下するケースもあります。そこで、弊社が間に入ってクリエイティブ以外の作業を担うことで、クライアントを安心させつつ、クリエイターが本質的な作業に集中できる環境を整える。その環境を作る手段として、プロジェクトマネジメントを徹底的に行っています。
ThereThere渡辺:今回デザインを担当させてもらった私たちとしても、本当にやりやすかったですね。ロフトワークさん、DHUさんともにコミュニケーションがスムーズで、クリエイティブに取り組みやすかった印象があります。
——DHUのコンセプトブックのリニューアルにて、ThereThereさんをパートナーに選ばれた理由はなんですか?
LW山田:DHUさんのコンセプトブックのリニューアル方針を聞いて、その世界観を表現できる人って誰だろうと、デザイン年鑑やいろんなサイトで探したんです。それでThereThereさんを見つけて、小勝さんに提案したところ「ぜひ!」と。
DHU小勝:ThereThereさんが過去に担当されていたクリエイティブをたまたま拝見したことがあって、ぜひお願いしたいとお伝えしました。
LW山田:DHUさんのプロジェクトが決まってから、世界的なデザインアワードである「German Design Award」や「A’ Design Award」でThereThereさんが次々と受賞されたので、滑り込みセーフでしたね(笑)。もしアワードの受賞後に依頼していたら、アサインできたかどうか。
——ThereThereさんはDHUをご存知でしたか?
ThereThere渡辺:もちろんです。CMや看板広告などを見たときの印象がとても強く残っていて。「今」を感じる学校だなと認識していました。
最初、ロフトワークさんから今回のプロジェクトをご相談された際、学校名が伏せられていて、どこの学校かは分からない状態だったんです。
でも、初回の打ち合わせ前に、パッと「DHUかも知れない」と思い当たりました。ThereThereが作る世界観と相性がいい、デジタル領域の学校ということだったので。予想が当たっていて嬉しかったです(笑)。
デザイン・コピーの作り方。こだわったのは、価値観・雰囲気の再現
——コンセプトブックにあるコピーは、どのように作り上げていったのでしょうか?
LW山田:まず、クリエイティブ制作の大元になる「Creative Compass」を提案しました。
学校側の思いや理念、在学生へのインタビューを通じて、「Entertainment」「Authentic」「Inclusive」の3つのキーワードを抽出し、最終的に「深さとダイナミズムを内包するモダン」というセンテンスでクリエイティブの考え方を表現しました。ちなみにこれはあくまでDHU、クリエイター、ロフトワークがアウトプットの共通意識を作るためのコンセプトで、実際の冊子にはこれらの文言は使っていませんが、コンセプトご提案の前日は徹夜だった記憶があります(苦笑)。
このコンセプトをもとに、実際に使用するコピー制作に入りました。冊子を開いて最初に目に飛び込んでくる"「迷う」は、前進だ。"のコピーも、コピーライティングを担当した外部クリエイターと試行錯誤して生み出されたものです。
——礒部さんはキャンパスPRプロジェクトの活動の一環として、コンセプトブックの制作にも携わられたと伺いました。完成した冊子を見ての感想はいかがですか?
DHU礒部:私は撮影現場のアシスタントを担当させていただきました。その一環でインタビューも受けたのですが、その時は大学生活についてだけでなく、私の人生遍歴までお話させていただいて。正直「私なんかの話が何の役に立つんだろう」と思っていました。
でも、完成したコンセプトブックを開いて、"「迷う」は、前進だ。"のコピーをひと目見た瞬間、泣けてきちゃって。入学した頃の初心を思い出したというか。自分がやりたいこと、大切にしたいことがこの言葉に詰まっているな、DHUでもっと頑張っていきたいな、と改めて思いました。
——デザインでこだわった点も教えてください。
DHU小勝:表紙見開きのQRコードを掲載しているページは、DHUらしい仕掛けかなと思います。最初ご提案いただいたときは50個以上のQRコードを載せるデザインだったのですが、さすがに多いかな?と思い、「ドキドキしたい」と「ワクワクしたい」の各10、計20個に落ち着きました。
DHU小勝:DHUをユニークな存在たらしめている「1学部1学科」というコンセプトをどのように表現するかについても、たくさん議論しました。
たとえば受験生からよくある質問(誤解)として、「私はゲーム学科に入りたいのです」「映像コースではどんな授業が受けられますか?」といったものがあります。
DHUは1学部1学科なので、それぞれの専門分野は「科目群」として存在するだけ。4年間で複数の分野を組み合わせて学ぶことで、新しいものを生み出していく。これがカリキュラムの特徴なのですが、分野名で縦に割ってしまうと上記のような誤解が生まれることも少なくないんです。
そこで今回は、「専門」「教養」「国際」の3つの教育をまず前面に掲げ、「専門教育」の中に8つの分野があることを図示。その上で各分野の説明ページの左端にナビゲーション要素を加えることで、それぞれの分野が有機的につながっていることを表現しました。
紙面のエディトリアルデザインに、Webっぽいあしらいを組み合わせることで、モダンな表現に磨きがかかったと思います。
ThereThere渡辺:今回のコンセプトブックは「写真」に重きをおいてデザインを組んでいきました。撮影された枚数も多かったので、写真選びはかなり大変でした(笑)。最終的にはDHU生の、自由で好きなものにまっすぐな雰囲気が伝わるものになったのではないかと思っています。16ページに渡る写真集もあるので、ぜひ手に取ってみてほしいですね。
リニューアルのその先へ
——2023年6月からこの新しいコンセプトブックが高校生・受験生やその保護者の手元に届き始めていますが、小勝さんはコンセプトブックにどのように期待していますか?
DHU小勝:パンフレットではなく「コンセプトブック」とあえて呼んでいるのは、単なる「大学の資料」ではないと考えているからです。
高校生のみなさんは、数多ある大学から資料請求をしてその中から志望校を決めていくと思います。その時は第一志望でなくてもいいんです。何気なく開いたコンセプトブックを通じて、「これ、普通の大学と違うかも」と感じてもらいたい。
同時期(2023年8月末)にリニューアルされる公式Webサイト含め、ここにいるプロフェッショナルなクリエイティブチームと、在学生およびスタッフがたくさんの時間と手間をかけて作り上げたものです。ぜひ勉強机の傍らに置いて、受験勉強に疲れたらパラパラめくって、モチベーションを上げる材料にしてもらえたら嬉しいです。
——礒部さんは、在学生としてどう感じますか?
DHU礒部:学生の私にこういう機会を与えてくれるのが、まさにDHUならではだなと思っていて。完成したコンセプトブックにもそのDHUの魅力が詰まっていると感じています。
私自身、クリエイターの道に進むのか、ディレクターの道に進むのか、将来に迷っているのですが、今回このようなプロジェクトに関わることができて、少し自分のやりたいことが分かったような気もしていて。学生のうちに大人の"本気"のクリエイティブを身近で見ることができたので、私もみなさんのような大人になるために頑張ろうと思いました。
以上、【B面】インタビューでした。
DHUの魅力がたくさん詰まった新コンセプトブック。大学の雰囲気が伝わるページや学生の声、年間のイベントスケジュールなどがわかるものとなっています。ぜひ、お手に取ってご覧ください。
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