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「個我と真我の相違はウパニシャッドに記されている」/シャンカラ註解『ブラフマ・スートラ』(1.1.17)


はじめに

『ブリハッド・アーラニャカ・ウパニシャッド』は、ヤージナヴァルキァ師とジャーナカ王との対話や妻のマイットリーともしくはバラモンたちとの対話つまりダルシャナにて教説しているウパニシャッドになります。

今回の『ブラフマ・スートラ』註解書のシャンカラ師の解説にも出てくる「ネイティ・ネイティ・ブラーフマン」という「これではない、これではない」とタマネギの皮をむくようにブラーフマンを見出せという教えがとても良く知られています。

シャンカラ註解『ブラフマ・スートラ』第一篇第一章十七節

17節 そして、(個々の魂と至高の自己との)差異を主張するからである。

このさらなる理由により、至福なるものは、輪廻する魂ではないのだ。至福なるものに関する文脈では、個々の魂と至福なるものが別々に言及されている。「彼は確かに至福(rasa)である。その至福を得ることによって、人(すなわち個我)は幸福になるのです」(Tai. II. vii. 1)獲得者が獲得されたものになれるわけではない。

反論:その場合、ヴェーダやスムルティの「自己は探し求められるべきものである」「自己の達成にまさるものはない」という文章が、どうしてあるでしょうか?なぜなら、そのような(自分自身の自己の)達成者は存在し得ないと言われているからです。

ヴェーダンティン:その通りです。それでも、普通の人々の場合、自己は常に自己であるという本質を保持しているにもかかわらず、非自己である肉体などに対する誤った自己同一化があることがわかります。したがって、肉体などになった自己に対しては、次のような主張が可能である。「自己は未発見のままであり、探し求めなければならない」「自己は到達しておらず、到達しなければならない」「自己は聞いたことがなく、聞かなければならない」「自己は考えたことがなく、考えなければならない」「自己は未知であり、知らなければならない」等々。しかし、最も高い観点から見れば、神以外の観察者や聞き手は、「神以外に観察者はいない」(Br.III.vii. 23)といった文章で否定されている。

神は、無智によって具現化されたと想像されるもの、つまり、知性によって条件づけられた自己と呼ばれる行為者、経験者、そして、自己と呼ばれるものとは確かに異なる、その違いは、地面に立っている魔術師が、剣と盾を手に持ち、ロープで天空に登っている魔術師とは違うと思い込んでいるのと同じ意味において生じるが、実際には前者は後者の本質そのものである。あるいは、どんな条件づけ要因によっても制限されない空間と、壺などの条件づけ要因によって制限される空間とが異なるという意味でもそうである。至高の自己と知性によって同一化される自己との間のこのような差異を当然視して、「他のもの(The other/もう一方)は至高の自己ではない、それは非論理的だからだ」、「また、差異を主張するからだ」と言われてきた。

最後に

ごく短くまとめると今回の十七節は

「ウパニシャッドに記されている個我と真我の相違に関する主張からもその如くに両者は相違しているのだ」

となります。

真我ではない他のもの、つまり、個我というものとは、その個人に関しての記憶とか、個人特有の考え方、個人特有の肉体の形、家族・財産・学歴・国・人種・肌の色・目の色・髪の色や年齢などなど、粗雑な外側に行けば行くほどに相違がはっきりとクッキリとしています。

これは、本質的な神様のものとは違うということでもあり、また、それらの対象となる違いを観ているものこそが、下記のように述べられています。

ヤージナヴァルキァ師が言った。

「内制者(アンタルヤーミン)とは、生殖器官(レータス)の中に住まいして尚かつ生殖器官自体の内奥に存在しており、生殖器官もその内制者を知ることがなく、しかも内制者が生殖器官自体であり、その内部より生殖器官を制御している存在なのであり、あなたの不死なる真我(アートマン)なのである。

この内制者は被観照者(観られる者)ではなく、観照者(観る者)である。聞かれる者ではなく、聞く者である。思われる者ではなく、思う者である。この内制者以外に観る者はなく、聞く者もなく、思う者もなく、知る者もいない。これが内制者であり、あなた自身の真我であり、不死なる存在なのである。この内制者以外はすべて限りある者なのである」

ここにおいてアルナ師の息子、ウッダーラカ師は沈黙したのである。

『ブリハッド・アーラニャカ・ウパニシャッド』Ⅲ.7.23

となれば、本文中に述べられているように、行為者や経験者をも観察するもの、つまり、真の観察者たる真我を見出そうということで、伝統的なヨーガの技法が現代に受け継がれていると言えます。

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