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「今この瞬間」を充実させる、ベッポの言葉:ミヒャエル・エンデ『モモ』

さて、今回「灰色の男たち」について紹介しようと思っていたのですが、その前に。

『モモ』の中に、ベッポという登場人物がいます。

ベッポは街の清掃員として働いていて、毎日道路や公共の場所を掃除して、仕事を真面目にこなしています。

ベッポは時間を大切にしていて「今この瞬間」を充実させることに重きを置いています。

ベッポはとても長い道路の掃除を割り当てられて終わりが見えないとき、こう考えます。

「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?次の一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
またひと休みして、考えこみ、それから、
「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」

『モモ』(4章 無口なおじいさんとおしゃべりな若もの)

彼は一歩一歩の作業に集中し、その中に満足感や喜びを見出しています。

まさに「今ここ」に集中しています。

冒頭にご紹介した動画でも鬼丸さんが話していますが、エンデ自身が「禅」に興味があったことの影響がここに現れているようにも感じます。

で、このベッポの姿勢は、時間の捉え方、使い方もそうかもしれませんが、仕事への向き合い方、さらにいうと、人間の在り方についても考えさせられます。

・・・・・

ちょうど桜が満開になっています。先日、コーヒーを淹れて近所の公園へ出かけました。

幸せなことに、田舎なので一面の満開の桜を独り占めです。

鳥の声と風の音をただ聞きながら、1時間ほどぼーっと桜を眺めていると、いろんな考えや、アイデアが湧いてきます。

ひとりで何もせずにぼんやりとレジャーシートに座っているといつもふわふわと動き回っている地面をしっかり感じられたり、

あぁ今年もこの景色を見られてありがたいなぁという気持ちに自然となります。

いろいろ溢れ出てくるだろうと、モレスキンの、ちょっと良いノートを持って行ったのですが、たくさんメモをしたというよりも、大事だと思うことを、ひとつふたつ書き記しただけでした。

帰ってきたときは、あぁもっと書き記したらよかった、と思っていたのですが、

でも、今ベッポの生き方、考え方を教えてもらうと、たくさん書くことを目的と勘違いしていることや詰め込むことがよいことだと思いこんでいることに気付かされました。

大事なことを大事だと気づけた。それで十分じゃないか、それ以上に何があるんだ?

と、ベッポの声が聞こえてきそうです。

あなたは、ベッポの言葉を受け取って、どんなことを思いますか?


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