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キッチンで殺気立つのをやめたい

恥ずかしながら、私は料理が大の苦手だ。
すぐパニックになるし、失敗しては意気消沈して料理をお皿ごと捨てたくなることがある。
(実際には思いとどまって、食器は食洗機にインする)

Twitterを見ると、豊富な食材で彩り豊かな手料理を投稿している方々がいる。複数の料理を同時に手際よく作ってらっしゃるのだろう。

神…!
画面越しに熱い羨望の眼差しを注いでいる。


✳︎
普段、怒りの沸点は低くない(と思っている)私だが、キッチンに立つと、瞬間湯沸かし器と化す。

「ハンドルを握ると人格が変わる」という言葉があるけれど、私の場合は、
「包丁を持つと人格が変わる」なのかなぁ。
いや、さすがにそんな物騒な。

そう、「キッチンに立つと人格が変わる」という言葉がしっくりくる。

さて、ごはん作るぞー!と気合いを入れて料理をしている間、夫が世間話をしてきたり、宅配便がきたりなんかすると、すこぶる機嫌が悪くなる。
(宅配便の人すみません。表向きは笑顔で接してるので許してください)

事情をよく知っている夫は、触らぬ鬼に祟りなしとばかりに、おとなしくゲームでぽちぽち遊んでいてくれるので助かっている。


✳︎
なんで、私は般若のような顔でキッチンに立っているのだろう。

ひとつ思ったのは、想定外の出来事に弱いせい。
料理というのはいつも同じように作ろうとしても、そのときの食材の具合や火加減、手順によって出来が変わってしまうものだ。上級者は途中で修正して、いい感じにまとめるんだろうけど、私にその技量はなく…

もうひとつは、きっちりぴったりにこだわるせい。
料理はお夕飯の時間ぴったりに完成させ、食卓に並べるのを目標にしている。
味付けもジャストを目指し、慎重に味見を繰り返す。その結果、濃いんだか薄いんだかわからなくなる。
特に苦手なのは盛り付けだ。
夫にはお肉多めで〜、私はお肉の端っこと玉ねぎ多めで〜など、細部にこだわっていると、盛り付けだけで10分かかることもある。

そんなこんなで食卓につくころには戦場帰りの兵士のようにやつれ果て、茫然自失の状態だ。
せっかく作ったのに、食欲はどこかへ飛んでしまい、早く部屋にこもって休みたくなる。


そう、自分でも原因はわかっているのだ。
食べられさえすれば、時間ぴったりじゃなかったり、味が多少濃かったり、具が偏ったりしていても、まあいいやっていう心持ちでいたい。
結果的には、そっちの方がうまくいくはずだし、精神衛生的にも良い。


✳︎
過去を振り返ると私が学生の頃、事件があった。
実家のキッチンで母の悲鳴が聞こえたのだ。
慌てて近づいてみると、
「ええい、もう捨ててやるー!」
とフライパンを持ち上げ、中身を流しに放り込もうとする母の姿が。
私は体を張って全力で止めた。

中身は肉じゃがだった。
味付けはいつも通りできたものの、じゃがいもが溶けやすいものだったらしく、豚肉と玉ねぎ入りのじゃがいもペーストになっていた。

「食べられるから!食べるから!捨てないで!」と必死に懇願し、しぶしぶ母は夜ごはんにそれを出してくれた。
見た目は綺麗とは言い難いが、豚肉のエキスがよく染みた甘辛いマッシュポテトといった感じで、おいしかったのを覚えている。


思い描いていたものと違うものができると、やけっぱちになる性格は、母譲りかもしれない。

母は料理で本人いわく「大失敗」をたまにするが、私からしたら些細なものだ。
そして基本、母の料理は丁寧につくられていて、なんでもおいしい。

失敗するとパニックになって大騒ぎするところが似ているなら、料理上手もきっと遺伝しているはず!と自分を励ましているこの頃だ。
時々失敗しても自分を許し、めげずに料理を続けていきたい。

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