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ミャンマー移民学校の記事を読んで考えたこと、言語・差別・お金・国力・将来性‥‥

ganasが現在開講中のオンラインプログラム「途上国ニュースの深読みゼミ」では先日、日経新聞の7月12日付記事「タイのミャンマー移民校に脚光 『米高卒認定』全員合格」を取り上げ、みんなで“深読み”しました。

 ganasが言う深読みとは、1本の記事をベースに、思考をいろんな方面に広げていこうよ、ということ。意外なことがわかって、これがまあ楽しいわけです。これぞ、世界のつながりを感じる「途上国ウォッチ」(世界のおよそ8割は途上国)。
 
日経の記事によると、タイ北西部にはおよそ70のミャンマー人移民学校があるそうです。その多さに驚きました。ちなみに世界各地にある日本人学校は94校。
 
この記事を深読みする際の前提としてまず、下の流れを抑えておきたいと思います。
 
国が弱くなる/何らかの問題(戦争、迫害、経済危機など)が起きると、国を出る人(移民・難民)が増える

親は子どもを一緒に連れていく

新たな国では親だけではなく「子ども」も闘う
(学校や社会では差別に直面するだろうし、お金の問題ももちろんある。また子どもだからといって外国語を簡単に覚えると考えるのは幻想)

どう助けるか?
(国が弱いと、子どもも大変。まさに“国ガチャ”です)
 
シンプルに言うと、こうした問題を読者に突き付けている、のが今回の記事でした。
 
では深読みゼミでは、どんな方向に思考が広がっていったのか。興味深かったので、その一部を箇条書きでご紹介します。たったの2時間で、こんなふうに掘れました。
 
・呼び方はいろいろだが、移民学校は世界各地にある。日本国内には朝鮮学校(100校近く)や中華学校(中国系と台湾系あわせて5校程度)、最近ではインド式のインターナショナルスクールも増えてきた。朝鮮学校が断トツに多かった。
 
・海外には日本人学校もある。子どもにとっては安心だろう。文科省が認定したのは94校(49カ国・地域)。もともとは戦前に、日本人移民のために設立されたもの。バンコク日本人学校、マニラ日本人学校、サンパウロ日本人学校などが古い。

・現在の94校の4割以上(41校)がアジアに集中。アフリカにはエジプト、ケニア、南アフリカの3カ所しかない。日本人学校がない国(たとえば西アフリカ)ではかねてから、フレンチスクールに通う日本人の子どもも。学費が高いといわれるアメリカンスクールに比べて学費が安くすむためだ。
 
・全日制の日本人学校のなかでとりわけ有名なのは日本メキシコ学院。ここは「日本コース」に加えて、メキシコ人が通う「メキシココース」も併設する。メキシコシティ内の私立校ランキングで1位を獲得したこともある名門。かつてはメキシコ大統領も自分の子どもを通わせた。
 
・余談だが、上智大学の国際教養学部の源流は、第2次大戦の後にGHQの兵士とその子どもが通う高等教育機関として指定されたこと。日本メキシコ学院と少し似ている。
 
・全日制の日本人学校のほか、土曜日のみ通う「補習校」もある。補習校に通う子どもは月~金は現地校で教育を受ける。補習校の目的は、駐在員の子どもが日本に帰国したとき、授業についていけるようにしておくこと。全日制と同じだが、アメリカでは「現地校+補習校」が一般的。
 
・日本人学校も、補習校も、朝鮮人学校も、中華学校も、教授言語は祖国の言葉。日経が取り上げたミャンマーの移民学校のように英語ではない。
 
・日本の得意技である「官民協力」のもと、世界各地に日本人学校が現在たくさんあるのは、日本企業の海外進出を後押しする意味もある。駐在員の父について行く家族、とりわけ子どもの教育問題を解消するためだ。この延長線上にあるのが、日本に帰国した子どもが大学・高校入試で優遇される「帰国子女」枠(現地校出身者はこれがないと日本の学校に戻れなくなる。この枠の中で競争がある)。日本経済が弱くなると、日本人学校はどうなるのだろう?
 
・バンコク日本人学校では1980年代、父が日本人・母がタイ人の子どもが学校に持っていく弁当がくさい(タイ料理のため、香辛料のにおいがする)と、いじめられるケースもあったと聞く。アメリカの現地校に通う日本人が「Nip」などと差別されることもあった。子どもも闘う。
 
・ユニークなのは、日本人学校を海外にバンバン作る日本とは対照的に、一部の東南アジアでは、英語を教授言語とするローカル資本のインターナショナルスクール(私立)が花盛りであること。グーグルマップで調べても、カンボジアのシェムリアップやラオスのビエンチャンには10数校はありそうだ。途上国は自国の産業が弱いため、外国人とかかわる仕事をしたほうが得との親心が見て取れる。

カンボジア・シェムリアップにあるインターナショナルスクール
ラオス・ビエンチャンにあるインターナショナルスクール

・日本国内でも近年、インド式のインターナショナルスクールに子どもを通わせる日本人が現れ始めた。日本経済の弱体化を感じてしまう。
 
・そうは言っても、英語で授業を受けるのは簡単ではない。ミャンマー人移民学校のケースを考えると、ミャンマーの現状と子どもの将来のためには良いことだと思う半面、生活環境も大変な中、相当な苦労であると想像する。ただ逆境を乗り越えた子どもは強くなる(と信じたい)。そういった意味で移民(逆境の経験者)が多い米国が大国でいられ続けるのはわかるような気がする。翻って日本はどうか?
 
・少子化で悩むタイの大学が、学生数を穴埋めするためにミャンマー人学生の受け入れに積極的ということもわかった。労働者の取り合いはすでに世界中で起きているが、少子化が進行する国では今後、留学生の争奪戦もますます厳しさを増していきそうだ。どうなる日本?
 
・ミャンマー以外の難民の子どもたちはどんな教育を受けているのだろうか。ウクライナ、シリア、ベネズエラ、アフガニスタン、南スーダン、スーダンなど。
 
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難民について直接取材してみたい方はこんなプログラムもあります。締め切り間近。


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