キル・ビル Vol.1

 ……マンガだな。

 というと「マンガの何が悪い」と反論されたりするのだが、要するに荒唐無稽ということだ。例えば、日本の裏社会って、もっと伝統や格式や慣例や文化や形式を重んじると思う。だからまずオーレン・イシイがヤクザ界のトップになること自体がありえない。リアリティがない。

 っていうと、そもそもこの映画にリアリティを求めるのが間違いとか言われそうだけど、現実社会と比較してのリアリティという意味ではなくて、この『キル・ビル』という虚構の世界の中でのリアリティがないという意味だ。現実社会から見て荒唐無稽でも、その映画の世界観の中で筋が通っていれば、それはリアリティのある映画(脚本)といえる。だから『キル・ビル』の世界観の中で、オーレン・イシイという人物がヤクザのトップになった背景と理由を、観客がすっきりと納得できるように描かなきゃならない。そうでないと、何でもありになってしまう。

 脚本(映画)っていうのは、ある一定の制約(世界観)を決めて、その制約の中でいかに自由に発想するか、が重要なのだ。たとえば『ドラえもん』にだって、『ドラえもん』の世界観の中で、ちゃんとルールや制約がある。だから違和感なく見られるのだ。それが『キル・ビル』にはない。そのため荒唐無稽な映画、あるいはタランティーノの独りよがり、という評価しかできない。

 ま、タランティーノほどの映画監督がそのことを知らないとは思えないので、わざと荒唐無稽に描いているんだろうけど(と信じたい)。

 まぁ西洋化(というか米化)された現代ジャパンアートを見るには最適な映像素材なんじゃないかな。とフォローをしとこう。フォローになってるかどうか分かんないけど。

原題 Kill Bill Vol.1
製作年 2003年
製作国 アメリカ
配給 ギャガ=ヒューマックス
上映時間 113分

監督 クエンティン・タランティーノ
脚本 クエンティン・タランティーノ

主要キャスト
ザ・ブライド(ブラック・マンバ) ユマ・サーマン
オーレン・イシイ(コットンマウス) ルーシー・リュー
ヴァニータ・グリーン(コッパーヘッド) ヴィヴィカ・A・フォックス
バド(サイドワインダー) マイケル・マドセン
エル・ドライバー(カリフォルニア・マウンテン・スネーク) ダリル・ハンナ
ビル デイヴィッド・キャラダイン
服部半蔵 千葉真一
ソフィ・ファタール ジュリー・ドレフュス
ゴーゴー夕張 栗山千明
ジョニー・モー リュー・チャーフィー

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