おっさん

高校1年生の頃、クラスにはひとりの”おっさん”がいた。
背がとても高くて見た目もちょっと老けていてとても高校生には見えなかった。

ある日の総合的な学習の時間でたまたまおっさんと同じグループになった。
おっさんとはほとんど話したことがなかったが、なんとなく雑談をする中で私たちはスピッツが好きという共通点があることに気づいた。

同じバンドを好きな人が集まれば当たり前のように好きな曲を言い合う流れになる。
私は確か、「渚」か「青い車」か「君が思い出になる前に」か
その辺の曲をあげたような気がする。

そしておっさんは「運命の人」と自信ありげに答えた。
おっさんのような見た目からピュアで可愛らしい曲が飛んでくるとは思ってなかったので衝撃的だった。

おっさんはそのすぐ後から不登校になり、気づいた時には学校からいなくなってしまった。そのせいかおっさんの名字も名前も正直思い出せない。

でも、私は「運命の人」を聞くたびにおっさんのことを思い出す。

今どこで何をしているかわからないけど、あの時本当に好きなものについて話した時間は幸せだったな。

今日は日曜日、バスに乗ったところで人生の意味なんてわからない。
頑張っている周りの人たちを横目に、私はただぼーっとしている。

それでもなんとか、もがきながら生きてるよ、おっさん。


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