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7時間ワークショップのレポート『役の人物の目で世界を見る・役の人物として感じる』

小林でびです。
先日、都内某所で2日間にわたる7時間の演技ワークショップ『役の人物の目で世界を見る・役の人物として感じる』を開催しました。
総勢20名の俳優さんが参加してくれて、2時間の座学と1時間のエクササイズ、4時間の演技、さらに3時間の打ち上げで、約10時間!(笑)延々と芝居について盛りあがり続けました。楽しかった!

今回はそのWSのレポートと、後半の有料部分ではWS参加者に配布した「門外不出のテキスト」の一部を公開したいと思います☆彡

「キャラ」「感情」「目的」を演じることを忘れてください。

今回は多種多様なバックグラウンドを持った俳優さんたちが参加してくださって、舞台俳優さんもいれば、インディーズ映画の方、商業映画の方、CMなどを中心に活躍するモデルさん、メソード俳優の方も、マイズナーの方も、小劇場の方も、主演の方も助演の方もエキストラの方も。
そんな多種多様な俳優のみなさんに、7時間のワークショップの冒頭でお願いしたのは、みなさんそれぞれに信じている演技法があると思いますが…

今日1日だけは「キャラ」を演じること、「感情」を演じること、「目的」を演じることを忘れてください。

ということでした。
当然俳優さんからは「それで芝居が観客に伝わるんでしょうか?」という質問が出たんですが、そりゃ出ますよねw。
結論としては「むしろその方が伝わる芝居になった!」のですが、やはり俳優さんは不安ですよね。いままで演じてきた「キャラ」を演じない、「感情」を演じない、「目的」を演じないでは、じゃあ何を頼りに演じたらいいんだ!?ということになりますから。

ではなにを頼りに芝居をするのかというと、それはWSのタイトルにもある「役の人物の目で世界を見ると、どう感じるのか」・・・そう、役の人物として「どう感じるか」を頼りに演じてゆくのです。

「演技法」は時代と共にどんどん変化している。

そして、なぜ「キャラ」「感情」「目的」を演じなくても大丈夫なのかを俳優さん達に説明して安心してもらうために、「映画における演技法の歴史」について軽く講義しました。
これちゃんと講義すると4~5時間かかるので、端折りに端折って30分ぐらいで(笑)。面白いエピソードとかもいろいろ喋りたいけど我慢に我慢を重ねてw、要点だけに絞って。

「時代によって演技法がどんどん変わっている」という話を俳優さんにすると、いつもすごくビックリされたり。時には怒り出す俳優さんもいたりするのですがw。
でも。普通に古い映画に映ってる俳優の芝居がいまの俳優の芝居と違うことは、誰もが知ってるはずなんですよね。

ロバート・デ・ニーロやアル・パチーノだって、もう今は『タクシードライバー』や『ゴッドファーザー』みたいな演技はしてないわけだし。
トム・クルーズだって『トップガン』と『トップガン マーヴェリック』で同じ人物を演じているけど、まったく演技法が違っているわけですから。

かつて「感情」を演じるのが主流だった時代があって、「キャラ」を演じる時代がきて、「目的」を演じる時代になったわけですよね。それが2007年くらいまでの話。
そこあたりで個々の人物を演じる時代が終わって、そこからは人物と人物の「コミュニケーション」を演じる時代が始まったんですよ・・・みたいな話をして、つまり何が言いたいかというと。

ここ数年の欧米の映画や米国ドラマの演技を見ていると、俳優は「キャラ」や「感情」や「目的」のように人物を〈単純化して〉とらえる方法ではなく、もっと〈多面的で複雑な状態のまま〉人物を把握して、もっともっとディテールの多い芝居をしていますよと。今日はそこに行くチャレンジをしてみましょう!ということでした。

いまは20世紀と違って、映画のクライマックスシーンは「俳優の顔のアップ」が「けっこうな長回し」で撮影される時代。
20世紀のコントラストの高い芝居よりも、もっともっとディテール豊かでイキイキと自然に「脚本上の他人を演じる」ことを俳優が求められる時代なのです。

では「他人」とは誰なのか?

そもそも俳優の仕事とは、一言で言ってしまえば脚本上に書かれた「他人」を演じる仕事なわけですが、ようするに自分と他人はぜんぜん違う存在なわけですよね。
ここで方法論①「役に寄せるか」、方法論②「俳優本人に寄せるか」という有名な二択が出現するのですが・・・その前に「他人」とはいったい誰なのか??? この「他人」の認識があやふやなままでは「他人」になれるはずがないんですよ。

ボクが思うに、最近の欧米の映画やドラマ『サクセッション』などの演技を見ていると、この「役に寄せるか」「俳優本人に寄せるか」問題は解決している・・・この矛盾する2つの方法論が両立しているんです。

「役の人物そのものに見えるし、ディテールが豊かに反応している」

俳優たちが普通にその人物として反応しているんです。

というわけで座学はここで終わり。
午前11時から12時までは、その他人である「役の人物の状態」に実際に入ってゆくためのエクササイズを繰り返し繰り返しやりました。
そう、このエクササイズでほとんどの俳優さんが大きな成果が出したのです。

「役の人物の目を手に入れる」エクササイズ

俳優自身が普段見慣れている景色が、役の人物の目から見たらどのように見えるのか・・・それを実際に体験してみるのがこのエクササイズです。

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