ヤクルト村上が56号をなかなか打てなかった理由と、「集中」の話。
ヤクルトの村上宗隆選手、なかなか56号打たなかったですよねー。
待望の56号はなんと61打席ぶりのホームランだったそうで、いや~今日(10/3)のヤクルト最終戦はいろんなイベント目白押しで、泣かせられっぱなしですよ~。
今回の演技ブログ「でびノート☆彡」は61打席も村上選手を苦しめたバッティングフォーム問題について・・・あ!そうですね!演技ブログですものね、もちろん後半は演技の話に繋がってゆきます。安心して(笑)。
いや~いろんな野球解説者の方々が村上選手のバッティングフォームについて、ばんばんホームラン打ってた春頃と最近のとの違いを指摘してますよね。それはすごく興味深い話で、人体の不思議の勉強としては興味深いのですが・・・村上選手が一塁ベースの上でふとバッティングフォームの反省をしているのとかを見ちゃうと痛々しくて・・・。
あーゆー姿を見ててボクが思い出すのは「過去の自分の良かった芝居を、なぞろうとしても無駄。」という舞台俳優たちの間ではもう伝説的に語り継がれている言葉です。
バッティングフォームってのは「結果」に過ぎないですからね、よいパフォーマンスの「結果」をなぞろうとしてもなぞれるわけもなく、もしなぞるのなら「原因」のほうをなぞる必要があるのです。
フォームは練習の時にはもちろん気にするべきなんですが、いざ試合が始まってバッターボックスに立った時点でまだ自分のフォームとか、自分自身に意識が行ってしまっている時点でダメだと思うんですよ。 ホームランを打つバッターは、自分ではなく、もっとボールやピッチャーに集中してるはずなんです。
だってバッティングって、バットで「飛んできたボールを狩る」ことですから!
すごく弓を引いた状態というか・・・。
平成の三冠王・松中信彦さんがインタビューで絶好調時の村上選手の打撃フォームについてこんな風に分析していました。
「すごく弓を引いた状態というか、思い切り右手を張る状態で構えているので、いつでも振れる状態。 村上選手はそこからバットが動かないので、無駄な動きがない。タイミングを外されても、泳いでもボールとの距離が取れるので、どういうボールにも対応できるのが一番の特徴」
なるほど!素晴らしい分析!この記事を読んで、この打撃フォームって、猫や肉食獣が獲物を狩る時の動作とよく似てるなーと思ったのです。
鳥とか獲物を狙っている時の猫って、ものすごい目で鳥のことを見てますよね。 目の前にネコジャラシを回して見せると、猫は首をぐるんぐるん回して、振り回されたネコジャラシから一瞬も目を離さないですよね・・・あの集中力と動体視力でもって獲物を見ているんです。
で、あとはタイミング。猫は鳥を凝視しながらお尻を上下にくんくんと振ってタイミングを計って、身体全体が弓のようにしなっていって、今だ!という瞬間にバビューン!と飛んで獲物に襲いかかる。
絶好調時の村上選手のバッティングってまさにこんな感じでしたよね。
彼はボールに最大限の打撃を与える事のみに集中しているので、当然自分のフォームなんかに意識は行っているはずがない。だから打った球がホームランになって自分でびっくりしてた時ありましたよね(笑)。
打つ瞬間のことを聞かれて「無でした」という発言もありましたよね。
そう、ホームラン打とうなんて考えてなかったんですよ。まさに「スーッと来た球をガーンと打つ」のみ・・・あ、長嶋茂雄選手の名言です(笑)。
「スーッと来た球をガーンと打つ」by長嶋茂雄
長嶋さんはホームランを打つ秘訣を聞かれて大真面目にこう答えたんですが、これを聞いた人々は「それじゃわかんないよ!」と笑いました。
でもね、絶好調時の村上選手のバッティングを見てると、まさにコレなんですよ「スーッと来た球をガーンと打つ」。松中信彦さんが分析していたように、どんな球が飛んできてもその球に食らいついていってガーンと打ってしまう。
ヤクルトの山田哲人が絶好調だった時もこんな感じだったと思います。
今年は夏ごろに山田選手がスランプになって全く打てなくなったんですが、あの時、球場で彼が三振する姿を見ていてボクが思ったのは、ああ、山田は「自分自身との戦い」をしちゃっているなあ、でした。
目が、コミュニケーションできなくなった時の俳優の目とそっくりだったんですよねー。見ようとはしてるんだけど、集中すべき対象を見失っていて目がボンヤリしているんですよ。かつてのボールやピッチャーに対する鋭い眼光が消えていて、ずっと自分のフォームやら意識やら、過去の自分自身と戦ってる感じ・・・ダメですよ。相手のピッチャーと戦わないと!
自分の打撃フォームのことは練習の時にはさんざん気にすべきですが、いざ試合が始まってバッターボックスに立ったら、そのことは一旦すべて忘れて、獲物であるボールに集中すべきなんですよ。そしてしかるべき瞬間に「ガーンと打つ」・・・それが調子のいい時のバッターです。
そしてこれって、調子のいい時の俳優もまったく同じです。
家で脚本分析している時にはいろんなことを考えてみるべきなんですが、いったん現場に来たらもう考えちゃダメなんですよ。「何が正解か?」なんてことに頭なんか使ってる場合じゃない。全身全霊でその状況に入って行って、その状況を生きるべきなんです。
そして「スーッと来た球をガーンと打つ」のです。
大切なのは「獲物」に集中すること。
俳優って演出に「相手をよく見て」とか「相手のセリフをよく聞いて」とか言われることありますよね。でも困りますよねw。だって本人は見てるつもりだし聞いてるつもりだから。
で、そんなときに多くの俳優がついやってしまう最悪の失敗は、見てます!聞いてます!とアピールするような「聞いてるふり/見てるふり」の演技をしてしまうことです。
これ、インプットを求められているのにアウトプットをしてしまっているんですよねー。逆なんです。
こーゆー時の俳優には何が足りてないのか?・・・それは「相手に対する興味」です。興味なくして相手に集中できることはありません。相手に全集中しないで芝居をしているから、いざという時に振り遅れるんですよ。
「アウトプット」として演技してたんじゃ遅いんです。「インプットに対する反応」として演じなきゃ
ボーっと刺激が来るのを待っていてはダメです。獲物に全集中してみましょう。猫のように。そして絶好調の時の村上選手や山田、また長嶋のように。
弓のように力をためながら獲物を目で追って、「スーッと飛んで来た」ら「ガーンと打ち」ましょう。騙されたと思って、これぜひ試してみてください。パフォーマンスが急にイキイキと、瑞々しくなり始めますよ。
・・・とまあヤクルト最終戦を見ながらこのブログを書いていたんですが、村上の56号ホームラン、素晴らしかったなあ。とにかく飛んできた球を逃さずぶっ叩くこと!最大限のインパクトで! それが素晴らしいバッティングの、そして面白い芝居の本質ですよねー。
あーしかし。ついにボク、なんでも野球たとえる「野球たとえオジサン」になっちゃいましたねー(笑)。これ超ウザがられるやつですよねー・・・気をつけますw。
小林でび <でびノート☆彡>