ヒヨドリは違いを知っていた
コブシと白木蓮。よく似た花だ。梅の花は散り、染井吉野の蕾は開きかけたが、この寒さで開花はもう少し先延ばし。この梅と桜の間を埋めるべくしてそれらは咲く。自然界はうまく出来ている。適材適所だ。少しひんやりとした空気にクールな白がよく似合う。
先日、朝の日差しが明るく輝いていたので、今まで行ったことのない市内の公園に出かけてみた。その敷地の一角に、白い花を咲かせたこの二本の樹が並んで立っていた。
だが樹の幹に括り付けられた名札を見て、花を見て、はたと気づいた。その違いを今まで知らずにいたということを。街中の街路樹や住宅街、公園などでよく見かけても、すべてモクレンだと勝手に思い込んでいたのだ。
因みにモクレンは紫紅色の花が上向きに咲く。シモクレン(紫木蓮)とも呼ばれる。
コブシは花びらが開き切って、あっち向いてホイと咲く。
ハクモクレンは開き切らず、大空にだけ中を見せるように咲く。
コブシは全方位的オープンマインド。
ハクモクレンは常に上を目指す努力志向、ということか。
コブシの樹にはヒヨドリが数羽やって来て、ムシャムシャと花びらを食べていた。見ているうちに次から次へと枝先から花が消えていく。ヒヨドリはすぐ隣にあるハクモクレンには見向きもしない。ということはコブシの花びらの方がよほど美味いのか。それともコブシのハートがオープンになり過ぎたせいか。
花の蜜や果実が大好物のヒヨドリ。これは熱帯に生きていたヒヨドリの祖先の名残りだそうだ。
ヒヨドリは違いを知っていた。愚生にとってはよく見かける花でさえ、こうして見分けがつかないのだから、植物の複雑極まりない多様性などは、この時点ですでにお手上げだ。花の姿形が一緒でも、葉の形が少し違っているだけで、名前がまったく違うものがこの世にはごまんとある。
植物に詳しい人というのは凄い。その違いを見分けることができる。noteでも詳しくその違いを解説している方が何人もいらっしゃって、いつも感心させられる。調べる根気がない愚生はすぐに断念してしまう。
今回は樹に名札が付いていたので写真も名前入りで投稿。コブシと白木蓮が並んでいたこの公園の規模は小さいが、その他にもミモザ、啓翁桜、藪椿、土佐水木などが見頃を迎えていた。
敢えて言えば、本来ミモザはオジギソウを指す言葉で、フサアカシアが正しい名前とのこと。
青い空のもと、花に彩られた樹々たちが春の風に揺れ、楽しそうに踊っていた。
彼らのダンスは光と風と一体だ。
他に誰もいなければ一緒に踊っていただろう。
若い頃はよくやった。
振付要らず、リズム不在のフリーダンスだ。
風を感じ、樹の枝に合わせてただ揺れる。
強風ならば、声も出す。
それはまるで野口体操の活元運動のような自然回帰運動となる。
樹々たちの喜びと自由。
一瞬それと共に在るような錯覚に心が踊るひとときだった。
今でも心は君と踊ってる。
ハクモクレン
フサアカシア(ミモザ)
啓翁桜
藪椿
土佐水木
コブシ
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