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陽だまりにゃんこ7:ボクらはみんな生きてるにゃんこ

(文2600字写真60枚)


2022にゃんこシリーズ総集編
───北九州の地域ねこたち───


 「キミたちの視線はいつも『直球ストレート』だね。」
散歩の途中、ふと出会う猫たちから向けられた眼差しを見てそう思う。
一瞬にしてこちらの意図を見破ってしまうような鋭い眼光。
揺るぎない意志を感じさせる不動の凝視。
その瞳の奥にはいったいどのような意識が潜んでいるのだろうか。

昨年noteを始めてから猫写真を撮るようになり、それらの一部は「にゃんこシリーズ」として投稿してきたが、今回はその中からピックアップしたものと未公開のものを集め、総集編としてこの一年を振り返ってみたい。


 この猫たちが暮らすのは北九州市内にある様々な公園の片隅。暑さ寒さ、時に激しい嵐を凌ぎながら逞しく生きている。大半は不妊去勢手術を済ませた印「耳先V字カット」のさくら猫。ごくたまにそうでない猫を見かけることもある。

住宅街での繁殖による住民の苦情や相談件数は依然として減らないようだ。放置すれば1匹のメス猫から1年後には50~70匹近くまで増えてしまうその繁殖力。その一方で年間の殺処分数は全国で3万匹以上。
こうした事態に対処すべく、一代限りの命を全うさせ、殺処分を減少させるために、TNR【捕獲器などで野良猫を捕獲(Trap)し、不妊去勢手術(Neuter)を行い、元の場所に戻す(Return)】という活動が全国各地で行われている。人と猫双方が心地よく共存できる環境作りを目指した取り組みだ。

殺処分を免れて手術を施されたさくら猫は、新たな飼い主に引き取られるか、もしくは再び元居た場所に戻される。人に心を開く術を身に付けた猫は、毎日公園にやってくる地域ボランティアの方たちから食事を頂ける。警戒心を捨て切れない猫は森の中を彷徨いながら、自ら探さなければならない宿命を負う。
外飼いの猫の平均寿命が13.75歳。室内飼いの16.22歳。それに比べると野良猫の寿命は3~5才程度と極端に短い。天候の影響をまともに受けたり、縄張り争いや食料確保が不安定といったストレスがその要因ではないだろうか。



だが意外なことにこうした境遇にもめげず、人気のない森の中を歩く猫たちは、普段は見ることのない野生肉食動物特有の力強いオーラを放っている。地を這うように低い姿勢のまま、注意深く辺りを見回し、音もなく歩を進め、そして獲物を見つけた時には完全停止し、飛びかかるチャンスを待つ。その姿は森のハンターそのものだ。
森の中でばったりと鉢合わせした時には、警戒心を剥き出しにした表情をこちらに向けてくる。どストレートに見つめてくるその視線は鋭く、冷静である。

そうかと思えば、猫の驚異的な別の一面を垣間見たこともある。これはある飼い猫の思い出話だが、若い頃とある大手企業の保養所でスキーシーズンだけカミさんと住み込みバイトをした時のこと。
ここには一匹のオスのキジトラ「ふーちゃん」がいた。毎日ストーブ前に分別臭い顔して朝から晩までへばりつくだけのグータラ猫だった。臆病なので外出するのは用を足す時のみで周辺の見回りはなし。それが昼前の館内清掃が終わる直前の30分間ほど、1,2階にあるすべての客室を毎日欠かさず隅々まで見回るという変わった仕事(習性)の持ち主でもあった。流石、保養所の猫だけのことはある。
ある日、カミさんが熱を出して仕事を休んだことがあった。するとこのふーちゃんが、普段一度も上がってきたことのない3階の屋根裏にある私たちの部屋までやってきて、寝ているカミさんの傍らにただじっと寄り添い、朝から夕方まで見守り続けたのだ。
何故そこに具合が悪い人がいると気づいたのかも不思議だった。翌日には熱も下がり仕事ができるようになった。それ以来部屋に上がってくることはなかった。猫の驚くべき超能力とヒーリングパワーを見せつけられる出来事だった。



人とペットとの関係は長い時間をかけて深い絆を持つものとなった。
567禍の影響が続き、さらに日本社会の「格差と分断」によって人と人との距離が広がり、孤立感孤独感を抱く人が増えるという世相の中で、ペットは人の心の拠り所として、或いは家庭内コミュニケーションを深めるために今後とも大切な存在になっていくことだろう。実際に2019年と比べて、2020年、2021年と犬猫の家庭内飼育頭数は増加傾向にあるということがペットフードの販売実績からも推測できる。
しかし同時にNTR活動による不妊去勢手術が進められる一方、ごく一部の心無い飼い主によって飼い猫や生まれた子猫が捨てられたり、捕獲を免れた猫が子を生んだりといった難題が残されたままだ。



今、公園に暮らす猫たちの存在は、人にどんなメッセージを投げかけているのだろう。
人間の思惑に翻弄された挙句、行き場を失って最後は公園の片隅に追いやられ辛うじて生き延びているという姿は、哀れで気の毒に見えてくる。
ところがその反面、人間の心配や憐れみをよそに相変わらず「ツンデレ」というマイペースでしたたかな処世術を決して失ってはいないのだ。
腹が減れば哀れっぽい小さな鳴き声と共にデレデレとすり寄って来て、満たされれば一瞬にしてツンと踵を返して立ち去り、離れた所で何食わぬ顔して丹念な毛づくろいとうたた寝に余念がない。



こうして猫についてあれこれ考えてみるのだが、結局猫たちから向けられる視線の意味を解き明かすような気の利いた言葉は永久に思いつかないまま迷宮入りとなりそうだ。

強いて言えば、もしかして猫たちは二つの次元を同時に生きているのではないかと思う。
空腹だったり、縄張りの見回りといったような用事がある時にはこの世という物質世界に降りてくる。終われば自分だけの異世界へと戻っていく。それは人の思惑の届かぬ別次元であり、猫のみぞ知る至福の世界。
どんな状況に置かれていても、たとえどんなに短い命であったとしても、猫は自分自身を愛することを忘れない。
その核心的な資質が決してぶれないという強さこそ、彼らが「猫様」と呼ばれる所以なのだと思う。

人と猫との共存。
そのためには私たち人間がもう少し歩み寄り、猫のことを理解することが大切だと感じるこの一年だった。





































































北九州市に本拠地を置くNPO法人あおぞら代表、杉原英子さんのnote。
猫たちのTNR、救済保護譲渡などの活動をされている。
彼らにとってはまさに救世主である。
投稿される記事には保護している可愛い猫たちの成長していく姿が毎回掲載されている。




André Gagnon
Photo Jaunie




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