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街中の動物園


 北九州市のほぼ中央に位置する「到津いとうづの森公園」は、地元市民にとって人気の市営動物園だ。大きな施設ではないが、それでも休日の朝には開門を待つ車の列ができるほど。
しかし過去には閉園の危機に直面したことがある。
平成10年(1998年)、前身である民間経営「到津遊園」の閉園が発表されたとき、市民から「この森と動物を残してほしい」という署名が集まった。その数26万筆。市はその要望に応え、園を引き継いで動物園と遊具施設のある公園として再整備することを決めた。

新しく誕生した園は動物舎の柵を減らし、床のコンクリートを撤去してすべて土に入れ替え、動物の生息地に近い環境に整え、自然に近い形で観察できるよう工夫を凝らしたものになった。
北九州市広報では「この公園は市民の皆さんが取り戻した動物園。自分の庭だと思ってきて頂けると嬉しく思います。」というコメントを残している。

愚生の記事に度々登場する花や猫たちの写真は、この動物園に隣接する県営中央公園で撮ったものが多い。ここには森に囲まれた小高い丘や広い池、花の丘などがある。園内の森を散策していると、すぐ近くから「ホウーホッホッホッ」という物凄く大きな咆哮が聴こえてきたりもする。自分たちの縄張りを主張するフクロテナガザルの遠吠えだ。その声が聞こえてくるとまるで熱帯のジャングルにいるような気分になる。

動物たちにとっては、ここが憩いの場なのかどうかは知る由もないが、皆元気に暮らしていることは間違いない。自然環境が悪化の一途を辿り、動植物の絶滅が後を絶たないという状況を考えると、不自由ではあるだろうが、ここにいる方が安定した暮らしを確実に手にすることができる。
2022年10月時点でIUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」には、存在が確認されている野生生物213万1,499種のうち、最も絶滅の恐れが高いとされる3つのカテゴリーに、4万1,459種の野生生物が記載されている。
そういう意味では動物園の存在理由が昔と今では随分と違うものになった。来園者の立場から見ても、生息する現場に行かなくても動物を観察することができるという人間中心的な意識から、動物たちの保護育成という観点にシフトしたものになると思う。

この数十年遠ざかっていた動物園や水族館だが、この危機的な時代にあって最近あらためて訪ねてみると、生き物たちの存在感、美しさ、純粋さに見惚れてしまう自分がいる。そしてまた飼育に携わる若い人たちの動物たちとの親密な光景にも感動したりする。
休日には小さな子供たちもたくさん訪れている。彼らにも動物たちの存在から溢れるものがきっと伝わっていることだろう。その子供たちが大人になった頃、この世界に少しでも愛が広がっていることを願いたい。




動物園の機能

国際的には、動物園にはレクリエーション、教育、種の保存、調査研究の4つの機能があると理解されている。

①レクリエーション - 動物園は市民が生きた野生生物を直接見られる場所であり、知的好奇心の充足感や非日常空間での開放感を呼び起こす要素ももつ。レクリエーション機能を発揮するためには、展示動物の選択、展示施設の構造と展示方法、利用料金の設定、園内の施設の整備(食堂やトイレ)など総合的な対応が必要となる。

②教育(環境教育) - 国際自然保護連合(IUCN)の「世界保全戦略 World Conservation Strategy 1980」では、動物園の担うべき教育上の役割として「野生動物の展示は、丹念に用意された教育計画に基づき、その展示種が生態系の中で果たす役割を理解させるものでなければならない」としている。

③種の保存 - 国際自然保護連合(IUCN)、国際連合環境計画(UNEP)、世界自然保護基金(WWF)による「世界環境保全戦略」では「動物園や水族館は、種の保存や遺伝子の多様性の保存、さらには環境学習の面でも貢献できる」との勧告を行っている。

④調査研究 - 動物園には多様な生きた野生生物がいて、野生下での観察では得ることができない情報も多い。野生生物に関わる繁殖や行動など学問の発展に寄与している。

Wikipedia


世界の野生生物の危機的な現状
2022年10月の時点でIUCNの「レッドリスト」には、最も絶滅の恐れが高いとされる、3つのカテゴリーに、4万1,459種の野生生物が記載されました。現在、存在が確認されている野生生物は213万1,499種。IUCNのレッドリストでは、このうちの14万7,517種の絶滅危機を評価しています。

WWFジャパン



北九州市小倉北区到津いとうづの森公園



































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