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花や虫たち

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花の写真 時々花と虫たち
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森の木漏れ日と山紫陽花

 今年も紫陽花の季節がやってきた。北九州市高塔山では毎年恒例の紫陽花まつりが開催されている。梅雨入りの遅れに伴い、7万株あまりの西洋アジサイとガクアジサイの開花は全体的に遅く、見頃は来週くらいになりそうだ。    見物客で賑わうエリアを通り抜け、脇道へと進み、急勾配の狭い階段を下る。すると静かな森の木陰に野鳥のさえずりが響き渡る秘密めいた場所に辿り着く。そこには谷間を通り抜ける風に吹かれながら、数十種類の日本原産「山紫陽花」がひっそりと咲いている。  ここは管理者の友田氏が

黄昏の園

西の空に色鮮やかな夕焼けが広がるとき、その場の風景もみるみるうちに紅色の光のヴェールに包まれることがある。それまで目にしていた光景とは別世界のようで、突然のギャップに驚く。  ライトアップ直前の、黄昏のバラ園にもそれがやってきた。目の前に咲いていた花が急に色めいて、ふわっと浮かんで怪しく揺れて、一瞬のうちに闇の中へと消えていった。 日没と日の出の直前直後の「薄明」は、「黄昏」や「薄暮」「トワイライト」「逢魔時」など多数の呼称があり、また撮影用語で「マジックア

バラの奥に潜むもの

 北九州市内にあるバラ園で、毎年恒例のフェアが開催されている。昨年は開花時期が例年よりもだいぶ早かったが、今年は逆に遅く、先日訪れた際にはまだ4~5分咲きほど。見頃は今月20~25日位になるらしい。  約450種、2,700株、そして数十万、数百万の個性豊かなバラの花。同じ姿形をしたものはひとつもない。  (フェアは6月9日まで) 🌹  専門家の研究によれば、バラの発祥地はヒマラヤの麓や渓谷周辺。遠い昔、そこから世界中に広がったとされる。  原種から数多くの交配が繰り返さ

初夏の花

 ちらほらと薔薇が咲き始めたこの時期、市内にある県営公園の花壇では初夏の花が一斉に咲き誇っている。  この公園は散歩がてら月に数回は来ている馴染みの場所。長い階段もしくは迂回路の坂道を登った丘の頂上にあるために訪れる人は少なく、とても静かなひとときを過ごせる。四季を通じてこの花壇を観察していると、いろいろと気付かされることがある。    1ブロック20平米ほどの花壇が10ブロック並び、それぞれ一人ずつボランティアの方々が自由気ままに管理している。人様の家の庭をじっくり

『オルハン・スヨルジュ記念園』

 関門海峡を見下ろす下関市の高台にある火の山公園では、5万株のトルコチューリップが満開となっている。 下関市とイスタンブール市とは「海峡」という地理的類似性があることから1972年姉妹友好都市となった。ここに植えられたチューリップはすべてイスタンブール市から寄贈され、下関市民ボランティアによって植栽されたものだ。  このチューリップ園の名称『オルハン・スヨルジュ記念園』とは、1985年3月、イラン・イラク戦争の最中にテヘランに取り残されていた日本人215名を救出した

庭に春時雨

 この一週間は北九州でも不安定な天候が続いた。暖かくなったと思えば急に気温が下がり、強風が吹き荒れ、雨が降る。晴れて静かになったと思ったら今度は黄砂。黄色く霞む空を見上げる度に自ずと呼吸も浅くなりがちだ。 それでも雨が降ると無性に草花の写真を撮りたくなるのは、目の前の光景が突然輝き始めるからだ。春時雨は庭の春色をいっそう際立たせてくれる。  我が家の庭は、とても全体をお見せできるような大層なものではないが、先月の梅の花を皮切りに所々春らしい花が一斉に咲き始めている。 12月

言い得て妙

 冬から春へと移りゆくこの時期、景色を春色に染めるのは河津桜や寒緋桜。市内にあるいつもの植物公園に出かけると、一本の河津桜の樹に数十羽のメジロ大集団が群がり、近くに人がいても逃げることなく、一心不乱に蜜を吸っていた。 花壇には色とりどりのクリスマスローズの他、カンザキアヤメ、スイセン、バイカオウレン、ヒマラヤユキノシタ。少し気温も暖かくなってきたせいか、春本番に向けて植物園もにわかに活気づいてきた。 来園者のために休憩室として使われている古い木造家屋の和室には雛人形も飾ら

大地に安らぐ

 早春の風物詩、梅の花がほぼ満開となった。先日配布された市の広報に、市内の公園にある枝垂れ梅の開花情報が載っていたので、早速雨の日に出かけることにした。 まだまだ冬色に染まる公園に、そこだけ春を先取りするかのような華やかな彩りの一角が遠くからも見て取れる。白、赤、ピンクと小さな花弁を無数に付けた細い枝が四方に広がり、こぼれ落ちるように咲いているその姿は、うっとりするほどの風情と、枝垂れ桜とはまた異なる落ち着いた趣きがある。 梅は中国原産で朝鮮半島経由で日本に渡ったとのこと

冬の花

 全国的に寒風吹きすさむ中、北九州では梅の花が咲き始めた。体感的にはまだまだ真冬。しかし梅の樹に住まう主は、微細な温度変化をしっかり感じ取っているようだ。 先日、雪が降りしきる朝にこの梅園を見て廻っていると、殆んど花を咲かせている樹の中にあって、蕾が少しだけだったり、既に枯れてしまった樹が数本あった。こうした樹の幹にはいずれも雪が付着して残っていた。ところが咲いている樹には雪が付着していない。つまり花を咲かせている樹の幹は温度が高い、ということになる。 外気温が低くても、

「春が来たよ」と思わせて

 二十四節気の小寒に入り、これからが寒さの本番。被災された方々にはどうか暖かな環境をできるだけ確保して、御自身の心と体を冷やさぬようお過ごし頂きたいと思う。  北九州の街の景色もすっかり冬枯れ色に包まれている。しかしながら春の訪れの中に夏の気配が隠れているように、秋の訪れの中に冬が潜んでいるように、冬の真只中にあっても、そこにはすでに春の息吹きが見え隠れしている。 先日、冷たい雨が降りしきる朝に、よく出かける市内の植物園に行ってみた。重く垂れこめた雨雲の下は光が乏しい。そ

秋薔薇と「ばら色の人生」

 秋薔薇のシーズン到来である。今年も晴れた朝と、雨の朝の2回、市内にある同じバラ園に出かけた。天候によって印象が大きく異なるところが花写真の面白さ。明るい陽射しの下では彩り豊かに輝き、雨に濡れると艶めかしく光る。 春薔薇に較べるとやや小ぶりに見え、花数も少ない。しかし、その分一つ一つの花の存在感が浮き出て、より輪郭がくっきりしてくる。夏に向かう薔薇は期待に胸を膨らませるように盛大に咲くが、冬に向かう薔薇は過去を懐かしむようにひっそり咲いているように見える。 薔薇と言えば、シ

秋風の通り道

10月の朝の光は柔らかい。 秋の薫りを含んだ風が木立をサラサラと通り抜けてゆく。 温かい光と冷たい空気が重ね合わせになって枯草の匂いを閉じ込めている。 風が吹くとふわっと舞い上がる。 草むらに潜んでいる虫たちが足音に驚き次から次へと飛び跳ねた。 四季の移ろいをいち早く敏感に嗅ぎ分けるのは桜の樹。 春にはまだ冬の寒さが残る時期に蕾を膨らませ、秋は夏の余韻が終わらないうちに葉を紅く染め上げる。 秋風の通り道に色づいた葉が舞い落ちた。 それを見た花や実をつけ忘れた草木たちは大慌

曼珠沙華の花咲く時

季節は秋彼岸の7日間を迎え、外の景色はすっかり秋の光に輝いている。 お彼岸と言えば「彼岸花」。気温20~25℃で開花時期を迎える。日陰は開花が早く、日当たりのいい所は遅くなるのはそのためだ。 先日の雨の朝、早速市内の植物園に出かけてみた。 最近は異常気象のために、桜や薔薇の開花時期が随分と早まっているが、彼岸花は今年も正確にこの時期に合わせて開花した。 どうやら他の種とは異なった秘密がありそうだ。 日本では別名として「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」があまりにも有名。

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8月の我が家の庭