見出し画像

DETOURS STORY #1 Maiさん

元看護師で現在はイギリスに在住、ヘルスコーチとして活動されている
Mai MacCarthy さんのDETOURS STORYをご紹介させていただきます。


プロフィール

埼玉県生まれ、宮城県仙台育ちです。中学の頃から誰かの役に立つ仕事に就きたくて、看護師を目指しました。日本で10年働いたのち、イギリス人の方と結婚して、現在はイギリスの田舎に住んでいます。趣味は絵を描いたり、アニメを見たり、スポーツ観戦したりすることが好きです。
SLEは2017年に症状がで始め、2018年1月に診断、2023年に一度再燃。
現在ステロイドはセルセプトとプラケニルで、コントロールしています。

発症からSLEと診断されるまでの経緯を教えてください。

わたしの場合は病気の症状が出たきっかけが、2017年5月に母が末期ガンを診断されたことでした。母を仙台から川崎に呼び寄せた次の日に、二人で一緒にヨガ教室へ。翌朝筋肉痛や関節痛を自覚したのが最初の症状でした。
そこから母の世話をしながら、わたしも少しずつ症状が悪化。勤務先の先生に紹介してもらい、8月に大学病院のリウマチ科で診察を受けることになりました。

そのとき受けた診断は、「関節リウマチ」。このときは母のことで満身創痍だったので、とくにショックではありませんでした。そしてリウマチの治療を開始。しかし、次第に関節リウマチの症状ではない、皮膚の発疹や尿の泡立ちなどが見られ、自分の中では「全身性エリテマトーデス(SLE)」なのではないかと疑うように…医師に話しましたが、まだ診断基準にはあてはまらず、リウマチの治療を継続することになりました。

そして、10月に母が亡くなってからSLE症状の進行が加速し、ひどい疲労感や関節の腫れ、筋肉痛、発疹などが毎日でるように…2018年年始から39℃位の熱が連日続いていましたが、そのときはずせない仕事があり、解熱剤を飲みながら仕事へ行きました。
それが追い打ちをかけ1月末には動けなくなり、夜間の救急センターに行き入院。2週間ほどさまざまなSLEの検査を受けて、やっと診断されました。
診断された際は、ショックというよりかは、わかってよかったという安心感があったことを覚えています。

SLEと共に過ごす中での転機、考え方や視点が変わったきっかけはどのようなときでしたか?

自分が病気になったことは、人生において大きな転機となりました。
当時28年も生きてきたのに気付かなかったことや新しい視点から世界を見られるようになったのが、この出来事でした。この期間に考え方が変わった大きなきっかけは3つ。
「母が亡くなったとき」「長期の入院をしたとき」「退院後に出会った同僚のことば」です。

母が亡くなったときに感じたことは、「当たり前のように明日は来ない」ということ。母は当時59歳でいつも海外旅行に行きたいと話していました。
しかし突然の末期がん宣告。その夢が叶うことはありませんでした。
「やりたいことは、できるときにやろう!」とおもった瞬間でした。

2つ目のきっかけは、長期入院をしたとき。当時足の手術や、ステロイド精神症状による手足の拘束で、日常生活のほとんどを介助してもらっていました。普段自分でご飯を食べることや、トイレへ行くこと、娯楽があること、誰かと話すこと、外に出られることがいかに幸せなことなのか、思い知らされた期間でした。
欲求があっても満たされない経験をしたことで、小さな当たり前のことでも幸せを感じるようになりました。

3つ目のきっかけは、退院後に仕事復帰した際に出会った同僚のことばです。いままで不器用で生きづらく感じていたわたしに、彼女は生きる指針を教えてくれました。人生には波があって辛い時期こそ未来を良くするヒントが隠れていること、自分の体調に合わせて人との距離感をとること、誰かを幸せにしたいなら、まずは自分を幸せにすることなど。
生きやすくなるコツを彼女から教わり、今まで複雑に考えてきたことがクリアになり、整理させてくれました。

どのように考え方や感じ方が変わりましたか?

わたしのなかで、さまざまな物事に対して考え方が変わりました。
とくに大きく変わった考え方は5つです。

・やりたいことは、できるときにやること
母の死や病気を経験する前は、まだ若いから先送りしても大丈夫!なんて思っていました。
しかし、人生は何が起こるか分かりません。病気があっても、事故や災害で数秒後に亡くなるということもあります。そのときそのときに、後悔のない選択をしようとおもいました。病気になってからイギリスに行こうとおもったのも、小さい頃から海外で働きたいという夢があったからです。
今ではおもいきって決断して良かったとおもっています。

・自分の可能性を信じること
病気になってから「できることが限られる」のではないかと、心配していました。たしかに健常者と比較したら方法は違うのかもしれない、しかし病気があっても自分ができることをやってみようと思えるようになりました。
患者・看護師の立場から助けられる人が1人でもいるのではないかと自分なりに考えて、フリーで仕事を始めようと思いました。

・当たり前にできることを感謝する
病気になる前は、普段の生活が退屈で仕方がありませんでした。当たり前のことに感謝すると聞いても、おそらくピンとこなかったとおもいます。
当たり前のことができなくなってから、わたしはこの考え方に気付きました。自分の家にいられること、手足が自由に動くこと、痛みがないこと、家族がそばにいること、いくらでも周りに幸せはあります。
それに気付くか、気付かないかで、人生の幸せ度や笑顔の量は変わってくると感じました。

・自分を大切にすること
以前はバリバリ働けている自分がかっこいいと思っていました。
しかし、自分を犠牲にしてたことで、病気を発症することに…。
このままでは病気は落ち着かないと感じ、まずは自分を優先させることを心がけるようになりました。自分にやさしくできるようになってから、仕事の配分や休日の取り方などを上手くできるようになりました。

・辛い出来事は、かならず未来の役に立つこと
2017年、2018年は人生のなかでも、最も辛い時期でした。しかし、今思えば、そのときの出来事が今につながっていると感じています。たとえば母のがん治療で調べた自然療法などのさまざまな知識がわたしの病気にそのまま生かされ、症状の改善につながったこと。療養中の失敗がヘルスコーチの活動で役に立っていること。当時はただの辛い出来事でしたが、今ふりかえるとほとんどのことが未来に面白いほど繋がっていることに気付きました。
今では辛いことがあれば、それを乗り越えるプロセスを書き留めて未来に生かせるようにしています。ただの「辛い出来事」で終わらないとおもうと、辛さも半減している気がします。

イギリスの医療や環境で、日本と違う点があれば教えてください。

イギリスと日本では、医療環境がかなり異なります。
イギリスではNHS(国民保健サービス)があり、NHSに加入していれば基本無料で医療が受けられます。しかし国が運営しているので、制度が崩壊しないよう風邪やインフルエンザなどでは病院へは行きません。薬も最低限の薬で様子見、手術をしても当日退院はよくあることのようです。

イギリスでのSLE事情は、患者数が多く、治療に慣れていると聞きました。日本では1か月に1~2回診察を受けていたのですが、イギリスでは半年に1回!採血は3か月ごと。薬は変更がなければ、オーダーすれば自動的に薬局からもらえます。つまり、セルフケアを徹底しないといけないという環境ということです。去年再燃した際は救急で痛み止めをもらい、予約は1か月半後でした。おかげでセルフケア力は勝手についたとおもっています。

イギリスでありがたいなぁと感じる点は、病気や障害をその人のデメリットと考えていないところです。テレビを見ていると、脳性まひの方が人気コメディアンだったり、全盲の方がクイズ番組に出ていたり、MCが義足だったり、乳がん治療中で髪の毛がなくてもダンス番組に出演したり。健常者と同じ土俵に立っている姿を見て、とても勇気をもらえます。同情とか病気なのにがんばっているとか、そういう気持ちではなく、ただただかっこいいなという気持ちで見られるのが、イギリスの良いところだとおもいます。

将来的に目標にされていることについて、教えてください。

看護師にフルで仕事復帰し、続けていたら安定した看護師人生を送れていたとおもいますが、フリーになってヘルスコーチになる道を選びました。

患者側になり、いままでと違う視点から病気や治療と向き合ったことがきっかけです。患者側になって一番辛かったのが「孤独感」。身体の症状は薬でどうにかなるけど、落ちていく気持ちばかりはどうにもできず、第3者で身近に話せる存在がほしいとおもっていました。

また、職場で患者さんが医師に話せないことを、看護師であるわたしに話してくれることがよくあったのも、ひとつのきっかけです。生活での悩みやセルフケアなど医師に聞きにくいことを聞ける、と喜んでくださっていたので、気軽に相談できるサービスがあったらなとずっとおもっていました。

今後はまだ大きな展望はありませんが、自分の手の届く範囲で病気の方のヘルスサポートができたらなとおもっています。そしていろいろな方に出会って、少しでも生きるパワーを与えられたらと考えています。クライアントさんが人生を病気に支配されず、自分らしく生きていけるように、病気以前よりも生きやすくなるように寄り添ってサポートしていきたいです。


今回インタビューにご協力いただいたMaiさんのリンクはこちら

MaiさんはLINEやインスタグラム、ブログなどで発信されているので、
ぜひ訪れてみてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?