見出し画像

海外登山#8 「プロメテウスが縛られた山 」 カズベキ山の行き方/楽しみ方

カズベキ山(Kazbek/ყაზბეგი)
コーカサス地方のジョージア東部に位置する5000Mです。その圧倒する高嶺から、古代より神話と繋がりがあります。

ギリシャ神話では、巨神プロメテウスは、罰をうけてこの山に縛り付けられていたされています。どんな罪を犯したのか?
人類が飢えに苦しむ姿を見かねたプロメテウス。その優しさから、プロメテウスは人類に火をもたらしました。人類が神々の座を奪うことを恐れたゼウスは、プロメテウスをこのカズベキ山に縛り付けたという伝説があります(参考文献は最後に載せておきます)。
ジョージアでも、巨神プロメテウスに親和性の高い神話があります。巨神アミラニ(Amirani/ამირანი)が人類に治金の技術を授けたことに対して、神々からの罰として、この山に拘束されていたという話があります。
このように、巨神を拘束できるほど高く聳え立つカズベキ山。

ジョージアは登山/ハイキング好きにとって最高の国です。
コーカサス地方の小国でありながら、世界中からアウトドア好きが足を運びます。引き込まれる絶景を見てみたくないですか?

今回の記事はカズベキ山(Kazbek/ყაზბეგი)のゲルゲティ氷河(Gergeti Glacier)コースを紹介します。①公共交通機関でアクセスが可能、②壮大な絶景と文化遺産両方を楽しめる、③雪上登山用ギアを必要としない、という観光客に優しい登山コースです。このコース、実は観光名所である"2170Mの天空の教会"、ゲルゲティ・トリニティ教会(Gergeti Trinity Church/გერგეტისსამებისეკლესია)を通過します!!見どころが豊富の登山コースです。

本記事では、
カズベキ山とその周辺の見どころ、
登山の概要や難易度、
装備や注意点(天候など)、
実際の行程(体験記)
アクセスや宿泊について
シェアしていきます。

本記事では
①カズベキ山の登山に挑戦したい方が
 無事に帰って来れるような役立つ情報を提供する
②ジョージアの魅力が伝わる
③これから旅をしたいな思っている人にも少しでも参考になる
ことが目標です。
最後まで読んでいただければ幸いです!!

これ先から下線が引かれている地名は、
クリックするとGoogle Mapに飛ぶようになっています。

是非、参考にしてみてください。
また地名の()内にMapsMe内の名称も記載しておきます。



カズベキ山とその周辺の見どころ

[カズベキ山(Kazbek/ყაზბეგი)]

5054Mの高さを誇るジョージア有数の高山です。堂々と聳える頂を見て、昔から神々の逸話が絶えない山でもあります。前途したように、巨神プロメテウス/巨神アミラニが拘束されていたという伝説があります。
この山の頂上はジョージアとロシアを隔てる国境でもあります。ジョージアを旅していると、ロシアの地理的、そして政治的な”近さ"を感じると思います。
ちなみに、今回紹介するコースは、ロシア国境に近づきすぎないため、細かい事務的な申請が不要なのでご安心を!!

[ゲルゲティ氷河(Gergeti Glacier)登山コース]

本記事で紹介するコースです。カズベキ山の登山コースの中でも、5月下旬から10月初旬であれば、特殊な装備なしで登ることができます。目標は標高約3700M地点にあるゲルゲティ氷河(Gergeti Glacier)です。カズベキ山、下記で紹介するゲルゲティ・トリニティ教会などの絶景を楽しめる登山コースです。また、寒い時期に足を運べば、純白の氷河を見物することができます。
本コースよりもさらに先(カズベキ山登頂やゲルゲティ氷河を歩く)に進みたい場合は、アイゼンなどの雪上登山器具、テント/寝袋等の寝具、国境歩行許可証などが必要になります。

本コースでお馴染みの、ずっと追いかけてくる犬ちゃん

[ゲルゲティ・トリニティ教会]

カズベキ最大の観光の目玉であるゲルゲティ・トリニティ教会(Gergeti Trinity Church/გერგეტისსამებისეკლესია)。高嶺の山々に囲まれ孤立したこの教会は、14世紀に建設されたそうです。東にトルコ、北にロシア、南にイランと、常に大国に挟めている地理的要因から、自然の要害としてこの地に教会が建設されたと言われています。人々や宝の隠し場所としても、この教会が機能していたいう説もあります。

[セパンツミンダ(Sepantsminda)の町探索]

カズベキ登山の起点となる町です。4000〜5000M級の山々に隔たれた、まるで鳥籠のような町です。この町から数キロ北に運転すればロシアの国境にたどり着くことができます。この町の見所は、登山、ゲルゲティ・トリニティ教会でけではありません。ただ、ぼうっとするんです。ただ、ぼうっと、孤立した田舎で山をただただ眺めてみるのも一興だと思います。また、ジョージア独特の石作りの家もまだまだ点在しています。

町から眺めた山々の景色。
ちなみに、反ロシア派の方が多く見受けらるジョージアですが、この地では、ロシアに近いこともあり、ロシア語が大活躍でした。
懐かしい
???

[縦長ハチャプリ]

みなさん、お待たせしました。ジョージアといえば爆食をそそるグルメですね。その中でも一際人気なハチャプリと呼ばれる食べ物。この言葉を翻訳すると「チーズパン」です。様々な形を持つハチャプリですが、このセパンツミンダ(Sepantsminda)では、世に珍しい縦長のハチャプリが堪能できます。町でたった一つのパン屋があります。地元民やロシアとジョージアを行き来する運ちゃん、そして観光客からも愛させる至極のハチャプリを味わってはいかがでしょうか。ちなみに、登山後の熱々のハチャプリは、天に昇る味でした。

[その他のハイキング]

今回紹介する登山以外にもセパンツミンダ(Sepantsminda)の町が起点となる、魅力的なハイキングや登山が多々あります。今後、本ブログを通してアップデートしていく予定です!!!!

こんなところも歩きました!!

登山の行程と注意点

これ先から下線が引かれている地名は、
クリックするとGoogle Mapに飛ぶようになっています。
是非、参考にしてみてください。
また地名の()内にMapsMe内の名称も記載しておきます。

概要

ハイキング日:2023年9月3日
合計所要時間:約8時間30分
合計所要時間目安:8〜10時間
トレイルスタイル:アウトアンドバック
歩行距離: 15km
歩行時間: 約3時間半
最高標高: 約3130M
開始標高:1850M
歩行開始地点: 登山口(Gergeti Cafe)
往路終点:氷河
歩行終点:登山口(Gergeti Cafe)

5:10:登山口(Gergeti Cafe)出発
↓800M
5:50:トリニティ教会写真スポット
↓480M
6:00:公道(これ以降はMaps.Meを参考)
↓980M
6:40:View of church and mountains
↓1.3KM
7:15:Best View to Kazbek
↓1.7KM
8:00:Sabertse
↓1.4KM
8:45:Sabertse Camp
↓680M
9:20:氷河(20分ランチ休憩→帰路へ)
↓6.7KM
12:30:ゲルゲティ・トリニティ教会 (30分ほど見学)
↓1.2KM
13:30:登山口(Gergeti Cafe)

難易度

体力  :★★★★☆
技術  :★★☆☆☆
アクスセス:★★☆☆☆
(★が多ければ多いほど難易度が高くなると考えてください。)
体力/技術はYAMA HACKの基準を参考にしています。)

・体力面
総距離と標高差を踏まえると、侮れない登山になります。加えて、自身の宿泊施設から登山口までの距離も加算されることをお忘れなく。自身の国で、体力作りをしてから臨むことをおすすめします。また、ゴールの氷河まで3000M以上の標高まで上がるので、高山病のリスクを踏まえて、ゆっくり進んでいく必要があります。

・技術面
非常にひらけた登山道なので迷いづらいです。念の為、MapsMeのようなオフラインマップを持っておいた方がいいです。序盤とゲルゲティトリニティ教会以降にの急勾配があるので、そこだけは気をつけましょう。

・アクセス
すべて公共交通機関でアクセスが可能です。詳しくは、下記の「アクセス」にて紹介します。

登山前に知っておきたいこと

・おすすめのシーズン
7月から9月下旬がおすすめです。天候が安定していて、もっとも温暖な時期です。しかし、この真夏でさえ、15度を下回ることがあるので、暖かい装備をお忘れなく。また、白銀の氷河が見たい場合は、5月や冬季に来るのもいいでしょう。

・気温と天候
上記のコースの最標高地点で、8月(真夏)の晴れている日でも10°〜15°まで冷えます。そのため、春秋用のダウンが必須です。加えて、午後になるとにわか雨に降られる可能性が高いです。雨対策としてポンチョや耐水性の高いアウターを用意しておきましょう。

・ロシア国境
カズベキ山を登り終えるとロシア国境です。本コースではこの国境に近寄らないコースです。歩いていて、レンジャー(山を管理する人)にどこまで行くか聞かれると思います。英語、またはロシアで話しかけられるので、"We are going to the glacier"、または、"я иду на ледник(ヤ イドゥ ナ リェドゥニック)"と伝えておけば大丈夫です!!

装備

1.服装(9月上旬)
20Lバックパック/フリース/ダウン/ウィンドブレーカー/Tシャツ/長ズボン/ショートパンツ/山ぐつ/靴下(秋冬用)

2. 飲食物
水/軽食/お菓子

3. ガジェットやアプリ
スマートフォン / オフラインマップ(MapsMeなど)/Windy(おすすめの天気アプリ)


写真で眺める実際の行程

登山開始

夏の終わりが近い9月初旬。まだまだ暗く寝静まっているセパンツミンダの町。カザフスタンの山を共に歩いた友人と朝5時に(Gergeti Cafe)に集合しました。ダウンジャケットとフリースさえ来ていれば、快適に歩ける寒さでした。上り坂スタートだったので、体はますます温まっていきました。曙どきのカズベキ山が顔をだしています。

カズベキ山とその日の登山仲間

チョコレートを頬張りながらゆる〜く登っていきました。一人登山と違って、仲間がいると色々な食べ物をシェアできてうれしいですね。1時間ほどあるくと、トリニティ教会写真スポットに到着しました。まだ夜があけていないトリニティ教会は、観光客が不在のため、より荘厳さが際立っていました。

山に囲まれてそこにポツンと佇む教会。外敵に常に囲まれ続けたコーカサス地方の地形を踏まえれば、僻地に教会を建設するのも分かる気がします。さて、これ以降は、Google Mapには載っていないコースなので、MapsMeや他の登山地図アプリを参考に進行した方がいいですね。
一度公道と広いパーキングスペースにぶつかったら、カズベキ山方面を正面にすると、水色の"TRAIL TO THE GLAICER"と書かれた サインが見えるはずです。これに着いていきましょう。

常に北側を歩く

何本かコースの分岐が見られると思いますが、常に北側(つまり登っている最中に左側)を選び続けるコースがおすすめです。北側に君臨するロシア国境を守る山々を横目に、歩いていくことができます。

このように常に右側に崖があるコースがおすすめ!!

朝7時になってようやくカズベキ山に朝日が届きました。

犬ちゃんと合流

朝7時頃でしょうか。この犬が現れました。吠えるわけでもなく、噛んでくるわけでもなく、ただ人畜無害に着いてきます。ただ、食事の際には、興味津々に歩き寄ってきます。わかりやすい。
運良く快晴が続き、意気揚々と進行していきました。いよいよ"Best View to Kazbek (MapsMeより)"にたどり着くと、壮大なカズベキ山の姿を見ることができました(敢えて本記事ではその写真を載せないでおきますね!!)。神々を縛り付けたという伝説が語り継がれるのも納得がいく圧巻の絶景でした。

Sabertse

ランドマークのSabertseに到着したのが朝8時でした。この十字架があるので、分かりやすいです。

ここでランチ休憩。ハチャプリと同じくらい人気のジョージアの主食、ロビアニをいただきました。美味しい豆が入った香ばしいパンです。セパンツミンダの町で前日に購入しておきました。犬ちゃんもその香ばしさが気になっている様子。

モニュメントの左側を下っていきます

休憩後は、十字架のモニュメントの左側を下っていきます。ここからは登り降りの多い道が続きます。この先もキャンプ場があるので、道自体はわかりやすいという印象でした。迷わないようなにMapsMeを見ながら進行しました。40分ほどするとキャンプ場が見えてきます。浄水フィルターがあったので、川の上流で給水しました。ここまで来ればカズベキ山を目指す登山客と合流できます。

キャンプ場

そして、本日の旅の終点、氷河まで辿り着きました。残念ながら土砂にまみれて冬に見られるのとはかけ離れたクオリティーの氷河でした。

グレー色の氷河

雨雲が空を覆ってきたので、あまり休まず退散しました。今日はたまたまカズベキ山マラソン大会の開催日だったので、後ろから、ランナー達が息を切らしながら登ってきていました。

マラソン大会の広告

だれかに声援を送るのも気持ちいいものですね。"you're nearly there," "hang in there," "you're sensational," かける言葉はなんでもよくて、その言葉に対して、残り少ないスタミナを使って表情や言葉を返してくれるランナーたち。応援している側なのに、そんなランナーたちから不思議な力がもらえました。11時半ごろから、かすかに雨が降り始めてきました。

ゲルゲティ・トリニティ教会

降り終えた先にある最後の楽しみは、ゲルゲティ・トリニティ教会 。到着時間はお昼の12時半。

最後の力を振り絞って、教会までの階段を上がっていきました。内部は信仰者が祈りを捧げる場でもあるので、写真撮影は控えました。ただ、その教会の手すりにジョージアの文字が彫られていました。甚だ検討もつかないですが、たぶん思いを捧げる人への名前かもしれませんね。

何度も見ても興味深い文字です

降り道がかなりきついです。気をつけて下山していきましょう。最後は、ゲルゲティ・トリニティ教会敷地内から降って、裏道を通って登山口(Gergeti Cafe)へ戻りました。最後の最後で急な道です。途中に、朝は暗くて見れなかった要塞なども見れるおすすめの経路です。ちなみにMapsMeだとこんな感じの道順です。

1 がゲルゲティ・トリニティ教会、旗が登山開始地点のカフェです



幸い登山口から10分歩いたところに宿をとっていたので、すぐに休息できました。ひたすら寝ました。翌々日にも長いハイキングが入っていたので、しっかり休む。登山やハイキングの間に1日何もしなくていい日をあえて設定するのが大好きです。しっかり休む日があると分かっているから頑張れる!!

この部屋のくおりてぃクオリティーで一人3000円以下。

アクセス(行き方/帰り方)

首都トゥビリシからの行き方を記載しておきました。電車とマシュートゥカを通して移動が可能です。是非参考に!!

[トゥビリシ市内→Didube駅]

手段:地下鉄
価格:1Gel
所要時間:乗る場所による
出発場所:トゥビリシ市内の地下鉄駅
到着場所:Didube駅

市内の地下鉄であれば、どこから乗っても同じ1GELで乗ることができます。朝6時からかなりの頻度ででています。決済はすべてMetroMoney cardと呼ばれる交通ICカードで行われます。カードの購入やチャージはすべて駅内で可能です。どの駅からの乗車しても一律1GELです(2024年8月時点で)。カズベキ山に早い時間に到着したい場合は、朝6時に乗れるように準備をしましょう。

[Didube駅→Didube Bus Terminal]

手段:歩行
所要時間:10分(迷わなければ)
出発時間:朝7時から1時間1本の頻度
出発場所:Didube駅
到着場所:Didube Bus Terminal

駅から、地下に向かうように進みます。とにかくに地下に!!地下にでたら左に曲がります。それ以降はとにかくまっすぐ進みます。下の写真から順路を参考にしてみてください!!

地下通路をまっすぐ
マーケットを突っ切る
道路を渡って路地に入る
このとたん屋根付近の運転手に話しかける

[Didube Bus Terminal→カズベキ(セパンツミンダ(Sepantsminda)の町]

手段:マシュートゥカ
価格:15GEL(現金)
所要時間:3時間〜4時間
出発時間:8am, 9am, 10am, 11am, 12pm, 1pm, 2.30pm, 3.30pm, 5pm, 6pm & 7pm
出発場所:Didube Bus Terminal
到着場所:カズベキ(セパンツミンダ(Sepantsminda)の町のバス停

夏は混み合います。マシュートゥカに着いたら、運転手さんにすぐにお金を払い、荷物を席に置いて確保します。私の場合は時間通りに出発しました。大きい荷物は車の後部や足場に置かれます。汚くなってもいいバックパックを持っていくといいですね。ちなみに、マシュートゥカ乗り場付近に、マーケットがあるので小腹が空いてもいいようにバナナなどを買っておくといいです。トイレ休憩あり。
到着場所はカズベキ(セパンツミンダ(Sepantsminda)の町のマシュートゥカ乗り場で下車します。同じ場所から帰りのマシュートゥカに乗るので、場所を覚えておいてください。
また、セパツミンダの下町から登山口までも20分から30分ほど歩きます。もしも登山する予定があるなら、前日に、登山口付近の宿を取っておくといいでしょう。ただし、登山口付近には、ハチャプリのお店やスーパーマーケットがありません(あるけど割り増しの値段です)。つまり、セパツミンダの町に着いたら、食べ物の買い出しを済ませることが先決です。マシュートゥカを降りたら、このパン屋さんに行ってみてください。ハチャプリやロビアニをまとめ買いするのをおすすめします!!また、スーパーはこちらのリンクから!!

帰り方

帰り方は以上の逆をやれば大丈夫です。トゥビリシ→へ帰るためのマシュートゥカの時間は、7am, 8am, 9am, 10am, 11am, 12pm, 1.30pm, 2pm, 3.30pm, 5pm & 6pm(2024年8月時点)です。バス停は、こちらのリンクから。このバス停の運転手に直接お金を払います。
もしも時間があれば、すぐに帰らずカズベキでまったりするのもありです。


この度も本記事を読んでいただきありがとうございました。
ようやく、パソコンが手元に戻ってきたので、タスマニアからジョージアの記事に切り替えました。
山/ハイキング/旅/食べ物好きにとって、ジョージアは外せません!!今後も記事をUpdateしていきます!

<参考文献>
Robert Graves. (2017). The Greek Myths. Penguin Books

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?