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分類その16「密室トリック」

今回からはまた、角度を変えた視点で、ミステリ小説を分類して行こうと思う。新たな視点として、トリックの構造による分類を試みてみよう。

創始者ポオの「モルグ街の殺人」以降、トリックの代表的な手法になっているのが、「密室」だ。死体のある場所が、出入りできない状態にあることだ。主な種明かしとしては、以下のようなものが挙げられる。

  1. 部屋もしくは建物の鍵に複雑な仕掛けをしてロックする

  2. 鍵がかかっていたのは別の部屋もしくは別の場所だった

  3. 自殺もしくは致命傷を負った被害者が自分で鍵をかけた

  4. 足跡などの出入りした痕跡を何らかの方法で消し去った

  5. 死体を発見した時点で犯人がまだ部屋の中に隠れていた

  6. 複数の協力者が密室でないものを密室だと証言している

この他にも、推理小説の犯人は様々な方法で密室を作っているが、大まかには上の6種類から派生した亜種である。更に細かく分類すればキリがない。
SF的には瞬間移動や時間移動も可能だが、それは除外しておく。大原則として、実は密室に見えて密室でない何らかの物理的仕掛けがあるものだ。
ここで大切なのは、読者や捜査側が「密室だと思う」事なのだ。どうやって犯人が犯行現場を偽装するのか?が焦点となる。

最初に古典的名作を挙げておく。沢山のミステリを読んでいる読者にはあまり驚かないトリックかも知れないが、完成された美しさを持つトリックだ。
個人的に私は、紐や滑車を使った仕掛けはあまり好きではない。設計するのは天才的才能だと思うが、リハーサルできないので失敗の可能性も高い。作者自身が試したのかどうか怪しいものもある。

横溝正史の「本陣殺人事件」も古典的な名作と言われる作品だが、小栗虫太郎に比べたら少しは現実的な気もするが、何度読んでも実際に上手く行く気がしない(笑)。

自動殺人装置のような密室トリックもあまりいただけない。そんなに大掛かりなメカニズムを作るというのも、ちょっと美しさに欠ける。人を殺す為に建物を一つ設計して建ててしまうというのは、完全犯罪の為の仕掛けというよりも、推理小説を書く為の仕掛けとしか思えないのだ。

最早ネタは出尽くした感のある「密室トリック」であるが、新たなアイデアの余地はまだまだある。密室の仕掛けそのものを考案するのではなく、登場人物の心理と、読者への情報の与え方に工夫をする方法も考えられる。
私にも、いくつか温めたアイデアはあるのだが、発表する機会に恵まれるだろうか?


2023.3.5

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