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七人の奇妙な依頼人<5>『山中湖にて』(連載)

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伝説の探偵、福田政史の著作「現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人」【第五話 山中湖にて】を連載します。実在する探偵さんの実話読み物です。
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2020年11月の記事一覧

『山中湖にて』(11) レジェンド探偵の調査ファイル,浮気調査(最終回)

『山中湖にて』(11) レジェンド探偵の調査ファイル,浮気調査(最終回)

『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第五話】山中湖にて

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 それから三、四か月も過ぎた頃だろうか。東京もすっかり春めき、西から桜の便りが聞かれる頃である。その日は日曜日だったが、私は用事があって事務所に行った。探偵家業に夜も昼も休日もない。
 私は車を事務所があるマンションの前に停め、六階にある事務所に行く前、メールボックスを覗いてみると、白い封筒があった。私宛で

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『山中湖にて』(10) レジェンド探偵の調査ファイル,浮気調査(全11回)

『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第五話】山中湖にて

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 姉が岡田教諭を呼び出し、私は依頼人の従兄弟として同席することになった。場所は渋谷の道玄坂にある「マイアミ」という喫茶店だった。渋谷駅前のスクランブル交差点は、いつの間にか街路樹の枯れ葉が舞う季節になっていた。
 約束の時間に五分ほど遅れて行くと、二人はもう席に座って、気まずそうな雰囲気で向かい合っている。

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『山中湖にて』(9) レジェンド探偵の調査ファイル,浮気調査(全11回)

『山中湖にて』(9) レジェンド探偵の調査ファイル,浮気調査(全11回)

『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第五話】山中湖にて 

9 依頼人から電話があったのは「工作活動」をした翌日の午後四時過ぎだった。
 弾んだ声で、
「うふふ、楽しかったわよー。彼は昼過ぎに出て行ったんだけど、すぐ私の部屋に引き返してきて、〝止めていた車がないんだ。知らないか?〟って青い顔をして言うの。私が〝知らないわ。大家さんに聞いてみたの?〟と言うと、バタバタと大

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『山中湖にて』(8) レジェンド探偵の調査ファイル,浮気調査(全11回)

『山中湖にて』(8) レジェンド探偵の調査ファイル,浮気調査(全11回)

『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第五話】山中湖にて


 調査は三週間目に入ったが、その結果はどれもこれも依頼人の意に沿わないものだった。
 マルヒの家を見に行って私が推測したとおり、岡田夫妻は円満だった。二十六歳の若い妻は二人の子供にも恵まれ、幸せを絵に描いたような日々を送っていた。
 マルヒの妻について調査したところ、父親は某私大の教授で、謹厳な家庭環境だった

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