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モンスター社員の調査記録

ある経営者の奥さんからの相談。
夫(経営者)はコンビニを経営している。
しかし、その経営は順風満帆とは言えず、ある1つの大きな問題を抱えている。
それは、モンスター社員による夫の洗脳だ。
約5年という長い年月をかけ、このモンスター社員は経営者である夫を洗脳していた。
洗脳と言っても、宗教のようなものではなく、恐怖を与え続けて「現状維持がベスト」「逆らわないようにするのがベスト」ということを刻み込む類の洗脳である。
つまり、このモンスター社員に逆らうとどうなるかわからない、機嫌を損ねないように動く。これが自分にできる一番の選択。
こう思うようになってしまったのだ。

こういった洗脳は、初めは小さな「貸し」からだった。
このモンスター社員は、少しの金銭貸借や労働といった「貸し」を返せ返せと夫に毎日言い続け、段々と勤務シフトを牛耳るようになり、経営者である夫をシフトに混ぜ込み、夜勤を全て夫にやらせる。
30日連勤を強いる。
自身の給料を倍にして経済的圧をかける。
友人に反社や弁護士がいるといって逆らう余地を潰す。
このように徐々に夫から思考する「時間」を奪い、恐怖を植え付けていった。

最終的には、
社員であるはずなのに給料は通常の3倍。
カツアゲを毎月。
店中の防犯カメラを彼が支配。
モンスター社員の王国が作り上げられたのだった。

僕は奥さんからこの話を聞いた。
彼女は涙ながらに「弁護士さんに相談しても、証拠がないと戦えないと言われ続けた。警察も動いてくれない。だけど毎日お金と精神は擦り減っていく。頼るところがない」と訴えかけてきた。

僕は3ヶ月、このモンスター社員について調べ、解放までのシナリオを作った。
ようやく準備が整い、まずはその夫と対面することにした。
何故このタイミングかと言うと、準備ができていない段階で夫に会っても不安にさせるだけだし、洗脳されているのでモンスター社員に告げ口してしまうかもしれないからだ。

夫との対面。
奥さんは言った。
「あなた、この方が解決してくれます。探偵さんです。」
僕も続けた。
「探偵です。実は、3ヶ月かけて〇〇さんからこのお店を解放する準備をしていました。もう全て整いました。急でびっくりするかもしれませんが、来週には〇〇さんはいなくなります。全て、任せて下さい。」

何をするとか、何が必要だとか、詳しい話はしていなかったが、全てを悟ったのだろう。

夫は無言で、一切の瞬きをしないまま
僕の目を見つめ涙を流し続けた。

僕はその時初めて、安堵の涙というものを見た。
何分かした後、夫は一言「宜しくお願いします」と声を絞り出した。

成功した案件だが、成功のプロセスはまた別の機会にご紹介するとして、僕が心に残ったのは、「安堵の涙」だった。
その後は、僕の信頼する弁護士さんにもお願いし手伝ってもらった。
こういった人が現実にいること、それを救える人も限られていること。
こういった人たちが埋もれていかないよう、今後も目を光らせていきたいと思う。


ありがとうございます!!これからも精進して参ります(^^)/