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【サンダイ先生と葉梨ちゃん】無人島祭り

【登場人物紹介】

・サンダイ先生(年齢不詳)
 売れてると言えなくもない、青年誌で連載作品を持つ漫画家。
 好きなケーキはベリーのタルト。というかタルト生地が好き。
 祭りの思い出といえば、屋台の福引で当てたゲーム機の中身が、でっかい消しゴムだったこと。

・葉梨(はなし)ちゃん(年齢非公開)
 サンダイ先生のアシスタント。美大出身。
 ケーキよりもエクレア派。ただしカスタードのみのやつは認めない。
 祭りの思い出といえば、おじいちゃんと二人で射的の屋台を荒らしてもとい、制覇してまわったこと。

※前回の話はコチラ

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「サンダイ先生は、無人島に行くとしたら何をもっていきますか?」

背景のモブを描き込みながら、私は先生に問いかけます。

視線はペンタブに落としたままですが、ヘッドホンから聞こえる音で先生が仕事の手を止めて真剣に考えこんでくれている様子が見えるようで、自然と口元が緩んでしまいます。

『その無人島は、近くに別の島があったりする?』

「いえ、孤島です」

私が即答すると、『孤島かぁ』とブツブツ言いながら再び考え込む先生。

先生のこういう反応がかわいくて、いつもこうして特に意味のない質問を投げてしまうのですが、先生はそれに気付いているんでしょうか?

『悩むけど、ビニールシートかなぁ。やっぱり水が命綱だから、海水から水を作れて、夜は布団代わりにもなるしね』

「なるほど。理に適ってますね」

思った以上の真面目な答えに、叫びだしたくなる気持ちを抑えながら私が顔を上げると、モニタ越しの先生と目が合います。

『葉梨ちゃんは? 何をもっていくのかな』

思わず目をそらしそうになったので慌てて表情筋に力を籠め、

「家来ですね」

と、再び私は即答します。

『えっ、そんなのアリ!?』

「無機物のみという制限は、つけていませんから」

平静を装いながらの私の返事に『そうかぁ……確かになぁ』と納得しちゃう先生が、もうたまりません。

「自分の王国を建てるにしても、家来の一人もいないのでは格好が付かないですし」

『王国とは、またおっきく出たな』

「建国祝いのお祭りをするにも、人手が必要です」

思いつくままを口にする私の言葉に、先生は目を丸くしたりうんうん頷いたりといちいちリアクションを返してくれます。

「せっかくなので、先生を家来として連れてってあげてもいいですよ」

『おっ、まじでか』

「嘘です、冗談です」

嬉しそうなその表情についに我慢の限界に達した私は、残念がる先生の声を耳にしながら、緩む口元を隠すため再びペンタブへと視線を落としたのでした。

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今回は視点を変えて、葉梨ちゃん視点で。
なんだか思ってたよりもアクセル全開なキャラになってしまった気がする。

※お題は、こちらの「三題噺スイッチ改訂版」をお借りしてます

なんか殺人事件が起こりそうなお題だなぁと思いながら書きました。

これからもゆるゆるとやっていきますので、『サンダイ先生と葉梨ちゃん』ふたりのやりとりを楽しんでいただけると嬉しいです。

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