神秘の火🔥不知火の里　宇城市歴史さんぽ③ 【蒙古襲来絵詞の主人公•竹崎季長関連史跡】　〈前編〉

こんにちは。だいぶ間が空いてしまいましたが、今回は宇城市散策の3回目です。今回ご紹介する史跡は、宇城市小川町北海東にある竹崎季長のお墓です。今回は長文になりますので、前編・後編に分けたいと思います。（前編4000字。既に長いですが、お付き合い頂けましたら幸いです🙇‍♀️）

鎌倉時代の肥後の御家人、竹崎季長（たけざきすえなが）は文永・弘安の役（蒙古襲来/元寇）で活躍した武士で、教科書などで誰もが一度は目にしたことのある「蒙古襲来絵詞」の主人公として知られます。下の画面は絵詞の有名な1シーン↓

Wikipediaより

竹崎季長のお墓のある場所は、季長が恩賞として賜った海東郷にあり、周辺は現在「平原公園」として整備され、墓と共に季長の武勲を讃えた東郷平八郎の書による「弓せんのみちすすむをもてしょうとす」という言葉が刻まれた記念碑も建っています。訪れた時は4/8で、公園内は花が咲き乱れてきれいでしたよ✨（散策後すぐに記事に起こせてないため、季節感が今とずれているのが申し訳なく口惜しいですが💦）

今日の散策地はここ！

竹崎季長は大変ユニークで魅力的な人物で、熊本が誇る郷土の偉人の1人です。季長さんのことをよくご存じない方もいらっしゃるかと思うので、最初に季長さんの人物紹介をしてから、散策レポートに移りたいと思います❣️

蒙古襲来と竹崎季長

まず最初に、五味文彦・鳥海靖編『もういちど読む山川日本史』から蒙古襲来絵詞と竹崎季長について書かれた一節を引用させて頂きます。

　　　　　　　　　蒙古襲来
『蒙古襲来絵詞』は、肥後国の御家人・竹崎季長がこの合戦でいかに戦ったかを描かせた絵巻であり、同時に季長がその時の恩賞をもとめて、獲得するまでの苦労もえがかれている。
　合戦は恩賞によって、その労がむくわれ、また自弁の武装・費用もおぎなわれる。恩賞なくしては合戦はおぼつかない。文永の役では、日本軍は苦戦の連続だった。「てつはう」とよばれる火薬を利用した武器を使い、集団戦をいどむ敵軍になやまされた。季長はこのとき、先駆けの功をいそぎ、「弓矢の道、先をもって賞とす、ただ駆けよ」と叱咤して敵陣に突っ込んだのである。だが蒙古軍の攻撃にあい、季長らは馬を射られて、あやうく死にかけたのであった。
　軍功は合戦の大将軍（総指揮官）に報告され、さらに大将軍から幕府の侍所に注進されたはずであったが、季長に恩賞の伝達がない。やむなく鎌倉に恩賞をもとめていくこととなり、馬鞍を売って費用をつくった。訴訟がかなわないならば、出家してもどってこない、と決意をかためて鎌倉にやってきた。しかし季長の訴えはなかなか取り上げられなかった。ついに直訴を試みて恩賞奉行安達泰盛（あだちやすもり）の屋敷に談判におよんだ。
　このとき迫真の弁舌により季長の訴えはみとめられ、肥後国海東郷（現、熊本県宇城市）を拝領した。当日、恩賞をえたのは120人におよんだが、季長のみは恩賞奉行の手から直接にたまわったという。季長がこのことにいかに感激したかは、絵巻をえがかせた直接の動機がこの一件にあったことから知ることができる。

もういちど読む山川日本史   p.99

季長さんの絵詞におけるストーリーは大体分かっていただけたと思いますが、上記だけでは彼の魅力は網羅されていないので、以下に私が感じた季長さんの魅力ポイント5つを挙げたいと思います！

　　　　　季長さんの魅力ポイント5

①庶子で無足の身（土地なし）ながら、合戦で手柄をたてて恩賞を得ようと、手勢たった5騎でモンゴル軍に猛然と立ち向かった。

②馬と鞍を売って旅費を工面し、恩賞をもとめてはるばる鎌倉まで直訴に出かけ、3ヶ月粘ってついに恩賞奉行と対面し、海東郷の地頭職と名馬をゲットした。

③老境に入ってから太宰府あたりの絵師に依頼して、自らを主人公とする合戦や訴訟の次第を描いた絵巻物『蒙古襲来絵詞』を描かせた。
※当時、絵巻物を作成する（それも主人公は自分）などということは片田舎の武士では思いもつかぬ発想です。絵も文も素晴らしい出来のこの絵巻は、長年受け継がれ、現在は宮内庁所蔵で国宝指定されています。

④絵巻物の内容は、自身の活躍を描いたものではあるが、当時出会った武将達への賞賛や感謝の念をふんだんに盛り込んでいる。
※季長さんの人柄の良さが伺えます。

⑤海東郷の所領経営に手腕を発揮し、領民達にも細やかに気を配り善政を敷いた。

もう一つ、季長さん自身の事ではないので上記に挙げませんでしたが、季長さんに感謝したい事があります。それは、当時同じく蒙古軍との合戦に参戦していた肥後の有力士族・菊池一族と当時の当主・菊池武房さんを素敵に描写して頂いた事です😆💕💕💫菊池一族ファンとして、この一節は後編でご紹介したいと思います！（後編もかなり長文な記事になりそうな予感😅）

前置きが長くなりましたが、早速散策レポート行ってみましょう🏃‍♀️

平原公園（元寇記念碑）

平原公園への入り口は下記画像右の石碑と案内看板が目印です↓もし訪問をご検討の方は分かりにくいのでGoogle mapで確認の上、訪問下さい。（自分のカーナビでは出てこなくて最初迷いました）

公園までの細い道を車で上がります。

駐車場に到着。まずは公園案内図を確認しましょう！

案内図、葉桜の影で見にくいですが、まずは高台にある記念碑に行ってから、その後、案内板左手の季長さんのお墓にお参りします。↓

※トイレはゲートボール場横に有ります

同じく駐車場にある平原公園案内。ここでは抜き出して引用はしませんが、ご興味のある方は拡大してお読み下さい

それでは公園内を通って、元寇記念碑に向かいます👟公園内には休憩所もあり、訪れた際はご近所の女性2人が楽しそうにお喋りしていらっしゃいました↓ 美しい自然に囲まれて気の置けない人と何気ない話で笑いあえるのは最高に幸せな時間ですよね✨

そして、こちらが元寇記念碑を下から見上げた図です↓

立派な石垣と石段の上に建っている大きな石碑❗️堂々として風格がありますね〜。石段の麓には案内板がありますので、こちらは全文抜き出し引用したいと思います。↓

　　　　　竹崎季長墳墓公園御案内
　本日は竹崎季長墳墓公園にご参詣下さいまして有難うございます。竹崎季長は蒙古襲来絵巻の作者としてあまねく知られています。寬元3年（1245）肥後国竹崎で生まれ竹崎を家号としました。幼くして兵衛尉の官位につき、左兵衛藤原季長と称し藤原を本姓とする名門の出と言われています。
　七百年前蒙古国王フビライは、日本遠征を企て文永・弘安の二度にわたり九州博多湾に襲来しました。国難来るの知らせに季長は肥後竹崎から博多湾に一番駆けして蒙古軍と激戦、ときに大風おこり蒙古の軍船を直撃して壊滅しました。まさに神風といわれました。
　蒙古合戦の戦功者は全国で120名にもおよびましたが、季長はただ一人幕府の下文をもって恩賞を給り、海東郷地頭に任命されました。武将季長は地頭としても経綸の才を発揮し海東郷は急速な繁栄をしました。所謂（いわゆる）貞永式目と対比される箇条書の掟を置文・寄進状に定めて実践しました。この掟は鎌倉時代では珍しく、国の重要文化財（古文書）に指定され、季長の善政の証となりました。
　蒙古襲来絵巻は、季長の戦斗記録を描いたもので、竹崎季長絵巻とも呼ばれています。絵巻は絵と詞からなり、鎌倉時代の合戦の様子・風俗・建物など忠実に描かれた歴史絵巻といわれています。明治天皇も親しく御高覧になり宮中に献上して御物本となりました。絵巻の模本は平原公園でも展示して御覧頂けます。
　大正天皇は竹崎季長の勲功を賞えて従三位を追贈され、記念碑は後の総理大臣清浦奎吾（熊本県出身）の碑文・海軍大将東郷平八郎揮毫により建立されました。
　天下の安危を身に受けて、蒙古の軍と戦いし竹崎五郎季長は、平原公園の夢想寒煙の地を奥つ城と定めて八十路の長寿を全うしました。
　思いは七百年前にさかのぼり山河は歴史を吸い込み鎌倉時代の武士の姿が彩を添えて

　弓箭の道すすむをもてしゃうとす

季長の面目躍如たるものがございます。心静かにお忍びください。

※本文中に「絵巻の模本は平原公園でも展示して御覧頂けます。」とありますが、現在展示はされていません。

この案内板の説明書はおそらく戦前に書かれた文章と思われますが、（難しい漢字が多くて、ふりがな打ってなくて、抜き出し引用も苦労した😅←教養ない人）明治大正期に竹崎季長に対する顕彰の機運が高まって建てられた石碑なんでしょうね。それでは早速、石碑まで石段を登ります👟

東郷平八郎揮毫による碑文『弓箭のみちすすむをもてしゃうとす』。石碑の高さは台座までいれて3メートル以上あったと思います。周辺をツツジや山桜で縁取られ、青空に映えて、圧倒されます😲石碑からオーラを感じる感覚は初めてかも。正に「文字には不思議な力があります。」（byドラマ『トリック』の山田奈緒子の母）ですね！
そしてこちらが台座に書かれた清浦奎吾の碑文です↓（読めないけど💦）

そして、石碑のある高台から海東郷平原の里を見下ろした図がこちらです✨↓

美しい山里ですよね〜✨記録によると、季長さんは晩年にここ平原地区に隠棲していたとされています。だからここに季長さんのお墓はあるのですね💡今回は文字数の関係で、石碑（記念碑）までしかご紹介できませんでしたか、次回の記事では季長さんのお墓と、少し離れた場所にある菩提寺・塔福寺をレポートします！同時に『蒙古襲来絵詞』のエピソードを幾つかご紹介しつつ、私独自の感性？と妄想を織り交ぜなら季長さんの魅力に迫っていきたいと思います！次回も宜しくお願い致します❣️

石垣の間から、冬眠から目覚めた？ヘビちゃんが🐍
（田舎の史跡散策にはヘビとの遭遇はつきもの。苦手な方は最後にごめんなさい笑）

最後までお読み頂き、ありがとうございました😊

【引用文献】
・五味文彦・鳥海靖編『もういちど読む山川日本史』山川出版社 2009年　p.99

【参考文献・HP】
・五味文彦・鳥海靖編『もういちど読む山川日本史』山川出版社 2009年　p.99
・阿蘇品保夫『菊池一族』新人物往来社1990年
・宇城市教育委員会編『宇城市の指定文化財』
・宇城市ホームページ
・九州大学附属図書館サイト
・熊本県総合博物館ネットワーク･ポータルサイト
・熊本県公式観光サイト　ふるさと寺子屋
　No.097 「 竹崎季長と海東郷 」

アクセス情報はこちらから↓

https://kumamoto-museum.net/blog/archives/chiiki/119