R.P. Mac

D系ライター。

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最近の記事

アメリカのシンデレラ1

はじめに 読者の皆さんは、今年公開された実写版ディズニー映画『シンデレラ』をご覧になりましたか?アニメーション版『シンデレラ』の伝統を保ちながらも、苦境の中でも前向きで、自らの手で人生を切り開こうとする現代風のプリンセス像が魅力的でしたね。シンデレラ物語は世界各地にさまざまなバージョンがあり、その起源には諸説あります。500以上のバージョンが確認されているヨーロッパ諸国はもとより、大西洋を隔てたアメリカ、はたまた、東洋では中国に類似した物語があるなど、枚挙にいとまがありませ

    • ディズニーパークとバックグラウンド・ストーリー3

      「トムソーヤ島いかだ」と「ハックルベリー・フィンの冒険」  アメリカ文学において、トウェインは実に「アメリカらしい」作品を残した作家として知られています。地方色豊かな西部開拓期の田舎町を舞台にして、その地域の方言を積極的に導入しながら創作された「トム・ソーヤの冒険」は、現在に至るまでアメリカの人々の心の故郷であり続けてきました。アメリカ文学史上、もっともポピュラーな主人公の一人としてトマス・ソーヤの名を挙げることができますが、知名度では若干ひけをとるトムの相棒ハックを主人公

      • ディズニーパークとバックグラウンド・ストーリー2

        「トムソーヤ島」と「トム・ソーヤの冒険」  アメリカ川を渡るとそこは中西部の雄大な自然が広がる「トムソーヤ島」です。小説「トム・ソーヤの冒険」は、腕白少年トマス・ソーヤと相棒の浮浪児ハックルベリー・フィンが繰り広げる冒険物語です。1980年にフジテレビ系列のアニメ・シリーズ「世界名作劇場」で放送されたバージョンを記憶されている方も多いのではないでしょうか。「トムソーヤ島」を散策すると「サムクレメンズ砦」に行きあたります。面白いことに、作家マーク・トウェインの本名は「サミュエ

        • ディズニーパークとバックグラウンド・ストーリー1

          <遊園地>と<物語>の融合  ご存じのとおり、これまでディズニーランドは、世界に数あるテーマ・パークの中でも圧倒的な人気を誇ってきました。日本においては、1983年の東京ディズニーランド開園以来、景気の浮き沈みに左右されることなく、多くの人々を惹きつけてきました。私たちの心をつかんで離さないディズニーパークの魅力は、その<物語性>にあるのではないでしょうか。 1955年にカリフォルニア州アナハイムにディズニーランドが開園しました。既存の遊園地と明らかに違ったのは、娯楽施設に

        アメリカのシンデレラ1

        • ディズニーパークとバックグラウンド・ストーリー3

        • ディズニーパークとバックグラウンド・ストーリー2

        • ディズニーパークとバックグラウンド・ストーリー1

          ディズニープリンセスの恋愛学6――恋のダイバーシティ

          もう恋なんていらない?  恋愛や結婚とキャリアの板ばさみに悩む女性は少なくないはずです。昔に比べると結婚した女性が働きやすい環境が整ってきたように思えますが、残念ながら「仕事か結婚か」という二者択一の袋小路がなくなったわけではありません。歴代のディズニー・プリンセス映画に目を向けてみると、「女性にとっての結婚とキャリア」という問題を扱ったものはほとんどありません。というのも、古典的な童話や民話を元にして作られたものが多いので、物語上、こうした要素が入り込む余地がなかったと

          ディズニープリンセスの恋愛学6――恋のダイバーシティ

          ディズニープリンセスの恋愛学5――恋のダイバーシティ

          ハイブリッド・ロマンス  恋愛は<他者>との親密な人間関係を構築する過程なので、なかなか思うように物事が進まないことがありますよね。育った環境や文化的背景が大きく異なる二人ともなればなおさらのことです。ご存知の通り、アメリカでは歴史上さまざまな人種間の軋轢が生じ、今でも解決していない問題が山積しています。信じられないかもしれませんが、アメリカでは20世紀半ばまで白人とその他の人種との恋愛や結婚を禁じる法律が南部諸州を中心に効力をもっていました。合衆国最高裁判所が異人種間結婚

          ディズニープリンセスの恋愛学5――恋のダイバーシティ

          ディズニープリンセスの恋愛学4――恋のダイバーシティ

           恋愛に対する考え方は十人十色ですが、時代や社会をとりまく状況が変われば、人々が共有する恋愛観にも少しずつ変化の兆しが見られるようになります。『白雪姫』(1937)を皮切りに、80年以上の歴史を誇るディズニー・ロマンスは、折々の恋愛に対する考え方を反映してきました。今回は1990年代以降に公開されたディズニー映画を概観して、そこで描かれる多様化する愛のかたちについて考えてみたいと思います。 多文化主義以降の恋愛映画    ご存知の通り、ディズニー映画の大半は、いわゆる白人

          ディズニープリンセスの恋愛学4――恋のダイバーシティ

          ディズニープリンセスの恋愛学3——ロマンスの語り方

          玉の輿から逆玉へ    結婚のパートナー選びともなれば、お互いの愛情だけではなく、もっと現実的な条件について考えてしまいますよね。とりわけ家庭生活を営むことを考えると、こっそり算盤を弾いてしまうのが人の常。日本語には「玉の輿に乗る」という表現があります。もちろん、これは女性が結婚相手として裕福な男性を射止めることを意味します。英語には「玉の輿に乗る」に相当するフレーズはありませんが、アメリカ人の知人が玉の輿に乗ることを「シンデレラになる」と表現しているのを耳にして膝を打った記

          ディズニープリンセスの恋愛学3——ロマンスの語り方

          ディズニープリンセスの恋愛学2——ロマンスの語り方

          恋の選択肢  雑誌等で、恋愛や結婚のパートナーに求める条件をテーマにした記事を目にすることは少なくないと思います。この手の記事の中にはふたつの選択肢を提示して、読者にそのどちらを選ぶかを問うタイプのものがありますよね。実はこうした二分法を基本にしてロマンスを描いているディズニー作品の例は枚挙にいとまがありません。 たとえば「頭脳派男子/肉体派男子」というに二分法。この二項対立図式はアメリカではおなじみなものです。アメリカ作家ワシントン・アーヴィングの「スリーピー・ホロウの

          ディズニープリンセスの恋愛学2——ロマンスの語り方

          ディズニープリンセスの恋愛学1——ロマンスの語り方

          はじめに みなさんは「ロマンス」という言葉から何を連想しますか。この言葉の起源と発展の歴史はちょっと複雑です。中世ヨーロッパでは「物語」を、そして現在では「恋愛小説」、あるいは「恋愛」を意味する言葉として広く使われています。「物語」と「恋愛」では随分と意味上の距離があるように思うかもしれません。しかし、古くから文学作品が「愛」をテーマにしてきたことを考えると、あながちミスマッチというわけでもありません。20世紀アメリカのエンターテイメントの立役者と言えば、もちろんウォル

          ディズニープリンセスの恋愛学1——ロマンスの語り方