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デザインの文脈における“ストラテジック・ビション”

プロダクトデザイナーのミナミデです。
今回は「ストラテジック・ビジョン」について、UXやCX的な視点を交えて、僕なりに書いていきたいと思います。

はじめに…

「ストラテジック・ビジョン」
きっと、聞きなれない、聞いたことのない名前だと思います。

それもそのはずで、僕と“KI Strategyの今井さん”との何気ない会話の中で、
最近少しづつ増えてきたブランディングの傾向について話が盛り上がり、分析を行なったことで生まれた、一つのブランディング手法だからです。

「ストラテジック・ビション」って何?

では、どんなものかを簡単に説明すると、
『企業が目指す方向性を“作品化”することで、
      組織の内外にわかりやすく伝えるためのブランディング手法』
といったところでしょうか。

これだけではピンときませんよね。汗
具体的に説明しますと、

企業が世間に具体的な方針を示す際に行なうのが、株主など対しての経営方針説明会があります。ここでは、経営戦略を数値やグラフなどの多くの情報でまとまった資料を公開しています。

こういった情報は、株主やシンクタンクなどの財務状況を細く知りたい人達には大変有用な資料ですが、“商品やサービスを使っているユーザー”や“今後ユーザーになり得るカスタマー”からすると「なんのこっちゃ?」「だからなんなの?」といった反応になってしまうと思います。

また、“企業内の一般社員”が自社のこういった情報を与えられても、当人が一部の事業にしか関わっていない場合、内容が大きすぎて自分事として見れないということが起こりえます。

“こういった人たち”に対して、「何を考えていて、何を目指しているか」をわかりやすく伝えるために、考えを体現化したストーリーやアートピースなどの作品を生み出すブランディング手法になります。

さらに詳しくは、今井さんが書かれている記事に載っていますので、
ぜひ読んでみてください。

ストラテジック・ビジョンの強み

次に、他のブランディング手法にない『ストラテジック・ビジョンの強み』を見ていきたいと思います。

まずブランディングには、
外から見たイメージを整える『アウターブランディング』
組織のモチベーションやプレゼンスを向上させる『インナーブランディング』があります。

この違いは、「ユーザーやカスタマー」と「組織内の人」という受け手の違いであり、企業と触れ合う時間や機会に差が生まれるため、それぞれに適した手法は異なってきます。

ストラテジックビジョン素材-01

代表的な例をあげると、
アウターブランディングでは、CIやコーポレートコピーの策定、商品ライナップの整理など、数多くあるユーザーとのタッチポイントでコンセプトの一端に触れさせ、イメージアップを図る試みが挙げられます。

インナーブランディングでは、ワークショップや研修、社内表彰制度の実施など、企業の目指すコンセプトに深く浸かってもらう試みがあります。また、これらの試みは結果が出るまでに時間がかかるため、苦戦している企業も多く存在しています。

企業はブランド力向上のために、この内外のどちらに対しても常にアプローチをしていく必要がありますが、それぞれを独立して進めては一貫性のあるブランドを作り上げるのは大変困難です。

ここで、アウターとインナーの両方で効果を持つストラテジック・ビジョンの強みが活かされます。

強みの1つ目は、『アウトプットが誰に対してもアプローチすることが出来る作品である』ということです。
アウトプットを受け取りやすい“作品”という表現にすることで、データや資料よりも、心に残りやすく、共感を生み出すことができます。

2つ目は、『アウトプットを軸とした展示やインスタレーションを行なうことで、多くの人にリーチできる』ということです。
作品を披露するイベントを催すことができ、今まで届いていなかった人たちの目にも触れる機会を作ることができます。
近年、世界最大規模のデザインイベントであるミラノサローネが、有名企業のブランディングの大舞台になっているのは、ストラテジック・ビジョンを使い、リーチを広げている好例と言えるでしょう。

3つ目は、『アウトプットを製作する過程で起こる試行錯誤が、理解共感を醸成しインナーブランディングとして機能する』ということです。
どのような表現にするのかを決めるには、まずコンセプトの深い理解が必要であり、理解するために掘り下げていく必要があります。
これを研修やワークショップなどの体験型イベントとして実施することで、社内での理解共感の醸成が進みます。

どんな事例があるか

今までの説明だけでは、ピンとこない人もいると思いますので、
ここからは具体的な例を上げていきたいと思います。

MAZDA ブランディング戦略

マツダでは2012年から『魂動デザイン』と冠したブランディングを行なっており、美しい面構成のスタイリングや象徴的な五角形のグリルなど、全ての乗用車に対し美しいデザインを統一し、『美学のあるモノ造り』を印象付けています。

デザインを統一する上で重要なのが、デザインの原型となるオブジェです。
新しい車種の発表の際には、デザイナーやモデラーによって作成されたオブジェを展示しており、美学の象徴としてブランドイメージ訴求の柱となっています。

また、デザイナーやモデラー、エンジニアを匠と称し、美しさへのこだわりの強さを訴求すると共に、担当者を取り上げることで各職種のプレゼンス向上を図っています。

YAMAHA “pulse” -Milan Design Week 2019-

ヤマハは、"pulse" (パルス)をキーワードに、「ミラノデザインウィーク 2019」に展示を行いました。音楽の楽しさを探求しているヤマハだからこそ生み出せる、演奏できるアートピースを4つ製作しています。

まとめ

最後に上記の内容をまとめますと、

・ストラテジック・ビジョンとは、 
 考えをわかりやすく伝えるために、ストーリーやアートピースなどの
 考えを体現化した作品を生み出すブランディング手法である。

・ブランディングには、
 『アウターブランディング』と『インナーブランディング』があり、
 基本的にそれぞれに適した手法は異なる。

・ストラテジック・ビジョンは、アウター、インナーの両方で効果を持ち、
 『作品であることで誰に対してもアプローチすることが出来る』
 『展示やインスタレーションを行なうことで多くの人にリーチできる』
 『製作過程がそのまま、インナーブランディングに活用できる』
 という強みがある。

読みづらい箇所も多々あったと思いますが、ご一読いただき有難うございました。

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