チームを強くする「案件振り返り会」のススメ
デザインスタジオ・エルでは、公開した案件の振り返り会を全社的に開催しています。
案件スタート時からの要件をあらためて振り返ることで、それぞれのプロセスの点検ができます。うまくいったこと、いかなかったこと、今後チャレンジしていきたいことなどを全員で共有することで、再現性を高め、スキルと品質向上を図ります。問題点を放置せず、当事者意識が芽生え、メンバーに感謝する機会にもなります。振り返り会は、チームを強くするのに欠かせません。
振り返り会はメンバーからの積極的な提言からはじまり、様々なアイデアを取り入れながらブラッシュアップしてきました。このnoteではわたしたちの振り返り会の内容について書いてみたいと思います。
参加者
当初はプロジェクトに関わったメンバーのみでやっていましたが、「自分が担当していない案件での経験やノウハウも知りたい」という提案もあり、関係者だけじゃなくて全員参加で行うことにしました。現在、毎週水曜日の朝礼時に開催しています。
進め方
プロジェクト管理ブログに、関わったメンバーがそれぞれ自分が担当した項目に記入。担当ディレクターの進行のもと、各メンバーが発言していきます。質疑応答を含め、振り返り会全体で30~40分程度です。
振り返り会のおもな内容
<概要>
・クライアント情報(基本情報、連絡先など)
・プロジェクト概要(RFPなど)
・プロジェクト資料(提案書、見積書、サイトマップ、要件定義など)
・コンタクトレポート(ヒアリング内容など)
<振り返り>
・クライアントの課題・要望
・サイトの方針
・利用システム
・デザイン(着想、工夫した点、素材など)
・撮影やイラスト(段取り、進行、発注内容など)
・実装(選定システム、演出、使用プラグインなど)
・進行中の気づき
・KPT
・クライアントの反応
運用してみて感じた、振り返り会のメリットをまとめてみます。
①プロジェクト全体をドキュメント化できる
上記のような項目は、プロジェクト単位でまとまっていきます。ヒアリング時の内容、プレゼン資料、見積り、サイトマップ、要件定義といった各種資料が集約され、それが全社的に共有されます。
物理的な資料に加えて「あの案件どうやって提案したか」「どんな工夫があったか」「どんな課題があったか」などの全貌を、プロジェクト関係者だけでなく、誰もがアクセスして確認できる状態になります。公開後の運用時などでは、そもそもの目的・あるべき姿は何なのか立ち戻る場所となり、また、いずれリニューアルする際にも役立つでしょう。
②クリエイティブの思考プロセスを共有できる
デザイナーであれば、デザインできあがるまでの過程でどんな資料に触れたのか、表現のきっかけはどこにあったのかを振り返ったり、デザインができるまでのラフやモックアップなどの変遷を掲載します。クライアントからどんなフィードバックがあり、どう対応し、最終的にどんな成果物になったのか、その過程は興味深いトピックとなります。
開発陣であれば、フロントエンド・バックエンドでの実装にあたりどういった視点で導入したプログラムを採用したか、どんな工夫をしたか、どんなトライ&エラーがあったのかなどの詳細を記載します。カスタマイズしたソースなどの共有がされれば、別の機会での利活用も望めます。
③ブラッシュアップの変遷からクリエイティブを反復できる
ディレクターからデザイナーへのフィードバック内容も共有します。ブラッシュアップする変遷を残し、それぞれの過程でどんなフィードバックを受けたか、反復し定着させる機会にするのはもちろん、ほかのメンバーの学びの場となります。
④制作過程で出た問題点をスルーせずにすむ
Webサイトひとつ完結させるまでには膨大なプロセスがあります。案件によって条件や制約も違うため、少なからず問題点や上手くいかなかったことがでてくるはず。大事なのはその問題をしっかり課題に転換すること。そうしないと、別の案件で同じような問題を繰り返すことになりかねません。
どんなことでもオープンにし、なぜ問題がおきたか、どう解決したか、次回からどう生かすかを検証していきます。失敗談もオープンにできる土壌を作っておくことはとても大事なことです。
⑤他のメンバーとの相対的な関係性が理解できる
サイト制作においては、複数のメンバーで様々な連携をとっていくわけですが、メンバー間での関わりの深度はまちまちです。Aさんとは密に、Bさんとはときどき、Cさんとは間接的にしか関わっていない、などです。振り返り会の中でプロジェクトメンバーがそれぞれどんな役割を果たしていたのかをあらためて理解することで、自分の立ち位置をより俯瞰して捉えることができます。直接やりとりしなかったけど自分がやったことが実はこんな関わりがあった、といったことがキャッチできれば、次回はこの部分をカバーしてみようなど、主体性ある関係性の強化が期待できます。
⑥メンバーの仕事に対する姿勢を垣間見ることができる
Webサイト制作ではそれぞれ得意な職能が集まってチームを作ります。それぞれの取り組みを確認しあうことで、デザイナーであればディレクターの窓口対応や進行管理などの調整能力を、ディレクターはデザイナーや開発陣の試行錯誤やクリエイティビティを知る機会になります。異なる職能の仕事ぶりを知ることで、相互理解とチームワークが深まります。
⑦外部パートナーとのやりとりが円滑になる
外部パートナーさん(カメラマン、ライター、イラストレーター、システムエンジニアなど)と、どんな条件でどんな依頼をしたのか、どのように依頼したのかなどを共有しておけば、次回以降より円滑なやりとりができ、コミュニケーションコストを減らすことができます。たとえば、イラストレーターにどんな依頼をしたのか、そのやりとりをドキュメントに記録し、共有します。
(例)イラストのタッチについて
・精細な感じではなく、抜け・丸みを帯びたやわらかくやさしい感じ
・線画。デジタルな線よりも手描き風がよいです
・色はグレー80%ぐらい
・イラスト全体のシルエットが四角く見えないようにしたいです
(上、左、下それぞれに抜け感があって、直線・ボック スに感じない)
⑧品質向上につながる
社内の汎用的な情報・品質管理のルールなどをまとめたヘルプデスクを全員で運用しています。みんなにとって役立つだろう、という情報を集約しているので、振り返り会では有用な情報が集まりやすいので、ヘルプデスクが充実していきます。
⑨Keep, Probrem, Tryで次に生かす
KPT法は、振り返りフレームワークです。
・Keep(良かったこと・続けること)
・Probrem(悪かったこと・やめること)
・Try(次挑戦すること)
これをメンバー全員が記入します。反省点だけでなく、良かったことや今度挑戦したいことを言語化していくことで、振り返り会全体がポジティブな雰囲気に包まれます。振り返り会は決して「反省会」ではありません。振り返りを、いいことも悪いこともすべてひっくるめて「次にどう生かすか」が大事です。
次やるべきことが明確になり、全体のモチベーションが上がるのが実感できる瞬間です。
⑩コンテンツになる
振り返り会の内容は、そのままコンテンツにもなりえます。各メンバーから寄せられた制作過程がすでにまとまってるので、比較的スムーズにコンテンツ化することができます。このnoteでも「案件ができるまで」シリーズとしていくつか掲載しています。コンテンツがあることは、私たち制作会社にとっての財産です。
おわりに。振り返り会のたびに思うこと
「らしさをデザインする」を掲げる私たちにとって、その仕事を通してクライアントの「あるべき姿」をどう捉え、どのような成果物をつくり、どのように育てていくかを自分たちがちゃんと理解することが大事です。振り返り会はその一助となっています。
そして、毎回の振り返り会を開催するたびに思うことは、
・全力で案件に取り組んだ
・「超えるをつくる」ためにしっかり汗をかいた
・難しい課題に向き合い、解決した
・コミュニケーションをとって協力しあった
・見えないところでがんばった
といったような、感謝と労いの気持ちが芽生えることです。
目的を達成するためにプロジェクトに関わるメンバーはもちろん、関わっていないメンバーにも共有することで、チーム全体のバリューを高めていくことが大事だなとつくづく感じています。
振り返り会で得られることはとても大きいです。この記事を読んでくださり、やってみようかな、と思った方の参考になれば幸いです。
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デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をデザインするweb制作会社です。
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